の続き…。
【前回のまとめ】
・すべての言語は記号の体系である
・シニフィアンは文字や音声、シニフィエはイメージや概念と定義づける
・言語は世界に区切りをつけることができる
前編ではソシュールが考える言語について書きました。
後編では、彼の考え方が言語学にどのような影響を与えるようになったのかまでをまとめていきます。
言語は世界を区切り、物事を認識させる
言語が世界を規定している。
ソシュールは“存在が世界を規定しているのではなく、言語が世界を規定しているのだ”と考えました。
これを三段論法(A=B、B=CならばA=C)で表現すると以下のようになります。
●言語という記号はシニフィアン(文字とその音声)とシニフィエ(概念やイメージ)で成立している
●しかしシニフィアンとシニフィエの間に本質的な関係はない
●よって人間は言語という記号に逐一名前を付けるだけではなく、言語で世界を区切ることで物事を認識している
ソシュールはどのように世界を区切るかが大切であることに気づき、区切り方によって世界は変わると考えたのです。
マグロとカツオ
マグロとカツオは両方とも回遊魚と呼ばれる種類です。
日本語ではマグロとカツオを区別して呼びますが、英語では両方ともツナと統一して呼ぶのは何をもって区別したのでしょうか。
日本語では魚の大きさを認識し、言語で区切ったのかもしれません。
英語では回遊魚という共通性を認識し、言語で一括りにしたのかもしれません。
いずれにせよ呼び方によって認識に差があることは間違いありません。
ソシュールは言語という記号を用いてそれぞれの世界像を作っていることに気づいたのです。
言葉の発達
ソシュール以前の歴史言語学では、言語はコミュニケーションの必要性から発達したと考えられてきました。
しかし、コミュニケーションが目的なら、他の動物のように鳴き声や「あー」「いー」などの簡単な言語で十分です。
気持ちを伝えるなら、相手に微笑みかけたり自分のものをプレゼントすれば好意は通じるはずです。
ソシュールの“言語という記号を使い、世界に区切りをつけることで世界を認識してる”という考え方は、近代言語学において多大な影響を与え、“言語は思考のツールとして発達した”という考えの根幹を担っています。
以上、ソシュールの言語哲学でした。
言語はただのコミュニケーションツールではなく、世界を認識する手段だったのですね。
普段何気なく使う言語が色づく面白い考え方でしたね。
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