さて、今回からナショジオムックを参考にした大麻についての記事を追加していこうと思います。
始めは大麻の歴史からです。
古代の大麻
大麻にはおよそ6000年以上も前から、人間とともに生きてきた歴史があります。
紀元前4000年頃、中国で見つかった織物には大麻を素材としたものが発見されたり、大麻の種子を食料源とした歴史も確認されています。
現在のルーマニアに当たる地域では、約5000年前の喫煙道具と炭化した大麻が発見されていて、人類は大麻の向精神作用についても早い内から理解していたことが分かります。
古代ギリシャの歴史家ヘロドトスは、自著”歴史”においてスキタイ人が大麻を焦がし陶酔するさまを記しています。
紀元後200年頃には、中国の華佗が麻酔を発明します。
華佗が発明した麻酔薬”麻沸散”は、アルコールと大麻を混ぜてつくられたものでした。
この頃になると大麻はアジアやヨーロッパ各地に知れ渡り、重要な作物として認知されるようになりました。
中世の大麻
1545年、大航海時代を経て大麻はヨーロッパからアメリカ大陸へと持ち込まれます。
それまでアメリカ大陸では、インディアンヘンプという種類の大麻が自生していました。
このインディアンヘンプはテトラヒドロカンナビノール(向精神作用のある成分)を含まないものでした。
スペイン人などのアメリカ入植者たちは、インディアンヘンプの代わりに、自分たちが使っている大麻を新大陸の各地で栽培していきました。
17世紀には大麻の品種は100を越え、用途も様々に増えていきます。
1619年イギリス王ジェームズ1世は、農家に輸出用の大麻を栽培するように義務付けました。
1798年ナポレオンがエジプトを征服すると、エジプト人の多くがアルコールの代替品として大麻入りの液体を飲んだりと、常に陶酔している様子が記録されています。
これを見たナポレオンは兵士に悪影響を与えることを危惧し、あらゆる形態の大麻を禁止したそうです。
近世の大麻
17世紀~19世紀にかけてヘンプを盛んに栽培していたアメリカ。
19世紀になると、インドで治療に使われていた大麻の研究論文が発表されたことで、ようやく医療用の大麻の使用や販売が始まります。
同時に嗜好品としも大麻が広がり、1883年にはハーパーズマンスリー誌が大麻の喫煙所を紹介するなど、今の日本でいうタバコやアルコールのように生活に入り込んでいました。
近代の大麻
20世紀に入ると大麻に対する禁止運動が始まります。
1906年にアメリカの食品医薬品安全法が可決されると、大麻は中毒成分に指定され製品への表示が義務付けられました。
1919年には、常習性物質の乱用を防ぐ目的から”禁酒法”が制定され、同時にコカインやアヘンの使用も厳しく処罰されることになりました。
世界的な薬物規制の動きによって、1969年には”規制物質法”が定められ、アメリカでは遂に大麻の使用が禁止されることになりました。
その後、大麻の薬効が見直されて来たこともあり、2018年にはアメリカの大半の州で医療目的でのみ大麻の使用が許可されています。
終わりに
これだけ人と共に生き、世界を動かした植物は少ないでしょう。
自分が知る限りでは、人を働かせ種を繁栄させた”麦”と国ごと中毒にさせた”阿片”くらいかなと思います。
480種類の化合物の塊である大麻の歴史もまた、人の歴史に負けず劣らず面白いものです。
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