前回記事
前回記事では、DAOとは何かについてまとめていきました。
DAOとは、ブロックチェーン上で実装されているルールを共有し合う組織であることに触れ、既存の会社組織とは違う形態であることが分かりました。
今回はDAOのエコシステム(DAOが生み出すサービスたち)についての記事です。
DAOオペレーティングシステムやDAOという組織形態を使って、どのようなことが可能なのかについてまとめていきます。
ここでは、
①DAO Operating System
②Investment DAO
③Collector DAO
④Social DAO
⑤Media DAO
の5つを紹介します。
①DAO Operating Systemとは
DAO OSは、DAOの作成、運営を行うためのツールや問題解決の提案をしてくれるカテゴリーです。
スマートコントラクトの発行や、ブロックチェーン上に資産管理、投票など、DAOの基本な機能を実装することができます。
主なDAOOSとしては、ARAGONやDAOstackが挙げられます。
・ARAGON
ARAGOは、ブロックチェーン上でDAOを作成、運用するためのオペレーティングシステムです。
ARAGONが提供する“ANTトークン”を保有することで提案、投票ができます。
ANTトークン保有者は、DAOの提案に対して異議を唱えることも可能です。
その際、提案の可否を判断を下するために陪審員制度を導入しています。
陪審員は、ANTトークンを交換して得られるANJトークンの保有量によって決定されます。
・DAOstack
DAOstackは、分散管理のためのプラットフォームです。
DAOのワードプレスとも呼ばれており、DAOを作成、管理するための標準化された規格が備わっています。
“MetaMask(メタマスク)”や“WalletConnect”などの、自前の暗号資産ウォレットを接続して、新規のDAOを作成することができます。
資産の管理、資金の配分に関する決定をする不動産投資団体や、食べログのようなキュレーションサイトなどをDAO化したものなど幅広く作成可能です。
②Investment DAOとは
Investment DAOは、将来有望なDAOや初期段階の暗号資産プロジェクトに対して投資をしていくためのDAOです。
Investment DAOに参加するには、あらかじめガバナンストークンを購入しておく必要があります。
DAOに参加すると、DISCORDやテレグラムなどのコミュニティへの参加できるようになり、投資先へのアクセスや管理が可能になります。
主なInvestment DAOとしては、Bit DAOやTheLAOなどがあります。
・Bit DAO
Bit DAOは暗号資産取引所のBybitが支援しているDAOです。
ガバナンストークンであるBITトークンを保有することで、DAOへの参加、投資ができます。
トークン保有者は、
・プロジェクトへの資金調達・支援・助成金分配
・新規プロジェクトへのトークンスワップ
・資金管理、プロトコルアップデート
のような意思決定に対して投票を行うことができます。
・The LAO
The LAOは資本のプール、プロジェクトへの投資、投資先からの収益の共有などを目的としたDAOです。
The LAOのメンバーになるためには、LAOユニットというトークンが必要になり。LAOの収益はこのトークンの保有量によって決められます。
DAOへの参加自体はトークンの保有で簡単にできますが、認定投資家になるには、資産や収入の証明や、投資顧問や公認会計士などの推薦が必要だったりと、それなりのハードルがあります。
また、投資後においてThe LAOの運営に対して不満がある場合は、rage quitting(怒って辞める)という、投資を撤回する権利が与えられているのも特徴的です。
③Collector DAOとは
Collector DAOは、NFTの購入、保有を目的としたDAOです。
有名なものでは、ドージコインのモデルとなった柴犬かぼすちゃんのNFTや、エドワードスノーデンを描いたアートワーク“Stay Free”などが有名です。
柴犬かぼすちゃんのNFTを所有しているPleaserDAOでは、NFTを169万ピースに分割し、アクセス権としています。
DAOをベースとして、一つのアート作品を分割して共同所有できるというのも、Web3ならではのアイデアですね。
④Social DAOとは
Social DAOは、オンラインコミュニティ上で同じ考えを持つ人たちを集めることを目的にしたDAOです。
コミュニティはトークン所持によって組織化され、トークンの入手には申し込みが必要だったりとハードルがあるものもあります。
有名なものではFWB(Friends with Benefits)やBAYC(Bored Ape Yacht Club)というDAOが挙げられます。
・FWB
FWBは有名なアーティストやクリエイター、企業の取締役などとの繋がりを持つきっかけとして機能しています。
FWBへ入るためには“FWBトークン”が必要になります。
コミュニティに入るための参加申請をし、それが通った後に必要枚数分のトークンを購入して参加します。
・BAYC
BAYCは、以前NFTとメタバースでも紹介した、猿をモチーフとしたNFTのことです。
このNFTを所有することで、DISCORDなど専用のコミュニティ、イベント、その他の商品企画などに参加することもできます。
これらのブロックチェーン上での保有の証明ができることで、限定SNSや企画、イベントへの参加などの特典が付与されるのも、ソーシャルDAOの特徴です。
⑤Media DAOとは
Media DAOは、これまでメディアが行ってきた記事執筆などの情報公開作業を、分散化して公開することを目的としたDAOです。
消費者がメディアに参加することを奨励し、メディアの執筆者と共同でコンテンツを作成することもできます。
特定の主体者がいない方が、公開しやすい記事を書くのに適しており、消費者も参加しやすいコミュニティを作ることができます。
メディアDAOの例としては、BanklessDAOやGCR(Global Coin Research)などがあります。
・BanklessDAO
Bankless DAOは、仮想通貨に関連した情報を伝えてくれるDAOです。
自前のギルドやプロジェクトを通して、 ブロックチェーンやDiFeなどWeb3について学ぶ場を提供してくれます。
参加にはBANKトークンが必要ですが、Uniswapなどでイーサリアムトークン(ETH)などと交換することによって入手が可能です。
・GCR
Global Coin Researchは、Web3における投資家や研究者によるDAOです。
メンバーが執筆したWeb3や投資に関連する記事を閲覧することができます。
GCRトークンを所持することでDAOに参加することができ、所持するトークンの量によって、Tier=1パイオニア、Tier2=ゴールド、Tier3=ゴールドPROの3つのレベルに分けられます。
レベルが上がると、専用の投資スレッドへのアクセス権やディスカッションの機会を与えられます。
まとめ
・DAO Operating System=DAOの作成や運営
・Investment DAO=暗号資産プロジェクトや有望なDAOへ投資
・Collector DAO=NFTや暗号資産の保有を効率化
・Social DAO=同じ考えを持つ者たちを繋ぐ
・Media DAO=集権的ではない情報公開
ブロックチェーン技術によって既存のサービスが分散化されていることで、様々なコミュニやサービスがDAO化できることが分かります。
多くの場合、トークンの保有によって権限が決められ、運営方針や特典が付与されることが多いようです。
自分もトークンの保有を証明することで、特定のトークンやNFTがエアドロップされるDAOを利用していますが、メタマスクなどのウォレットさえ接続すれば、トークンを自由に出し引きできるのがとても便利に感じています。
一方、詐欺サイトウォレットを接続してしまった、聞かれることのないバックアップフレーズを公開してしまったなど、個人が管理する上で起こるミスに十分注意する必要もあります。
法的な規制や補償がない分自由ですが、自分で管理していかなければいけないという表裏一体の怖さがあることも忘れてはいけませんね。
コメント