前回記事
この記事では著書「身の回りのありとあらゆるものを化学式で書いてみた」から、興味深かった内容や身の回りの物質の性質を紹介していきます。
今回取り上げるテーマは“お米”です。
前回記事では砂糖の構造について化学式を使いながら迫っていきました。
料理などによく使われるスクロース(砂糖)はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合したものであり、体内でそれぞれ分解されて効果を発揮することが分かりました。
またジュースなどからフルクトースを多く摂取することは、エイジングケアの点でも良くないことも触れました。
今回はそんなグルコースと関係の深い”お米”についてまとめていきます。
日本人とお米
お米ほど日本人に浸透している食べものはないと思います。
炊きあがったお米の香りは食欲を掻き立てるとともに、まるでDNAに刻まれているかのように“ものを食べることができる安心感”を得ることができます。
きっと毎日食べている人もいるのではないかと思います。
2022年8月にNature Communicationsに掲載された研究では、日本人の腸内の解析によって肥満・糖尿病を改善する可能性がある腸内細菌が発見されました。
その腸内細菌の一種であるブラウディア菌の餌となるのがグルコシルセラミドであり、お米やパイナップルなどに比較的多く含まれているのだそうです。
グルコシルセラミドは肌の水分保持や紫外線などの外的な要因から肌を守るバリア機能など重要な役割を果たしています。
はてさて前置きが長くなりましたが、ここからはそんなお米を化学の目で見ていきます。
お米=でんぷん=(C6H10O5)n
お米の主な成分はデンプンです。
化学式ではデンプンを(C6H10O5)nと表すことができます。
括弧の隣についているnは繰り返し結びついているということを表しています。
(C6H10O5)nは前回記事の主役だったグルコースC6H12O6がつながってできたものです。
前回とは違い、各部分から出ている水酸基(OH)は省略せずに描いています。
このグルコースを繋げてみると以下の図のようになります。
グルコースとフルクトースがくっついた時のように、水H2Oが離脱することでくっついています
その結果C6H12O6だったものがC6H10O5となってつながっています。
これが連鎖的に200~300こつながったものがデンプンになります。
このようにある分子が繰り返し結びついているものは高分子と呼ばれています。
またデンプンを簡単な模式図で表すとこのようになります。
次からこの模式図を使ってデンプンの化学に一歩踏み込んでいきます。
うるち米ともち米
普段食卓に並ぶのはもち米よりもうるち米の方だと思います。
このふたつのお米も全く同じデンプンの化学式(C6H10O5)nです。
同じ化学式なのになぜ食感や味に違いがでるのでしょう。
その秘密はくっつき方の違いにあります。
デンプンはC6H10O5がくっつき、一定の間隔で回転しています。
そしてデンプンにはアミロースとアミロペクチンという2種類の高分子に分類できます。
上記の図はアミロースです。
アミロペクチンとはどのような分子なのでしょうか?
アミロースが直線的な形でつながっているのに対して、アミロペクチンはグルコースが途中で枝分かれしてくっついた状態でつながっています。
グルコースがいつもと異なる位置の水酸基でくっつくことで変異するのですね。
うるち米のデンプンにはアミロースが約20~25%含まれ、アミロペクチンが約75~80%含まれています。
一方、もち米のデンプンはアミロペクチンが占める割合がほぼ100%です。
もとをたどると同じ分子なのに、ちょっと形が違っただけで、ちょっと割合が変わっただけで食感がまるで変ってくるのですね。
まとめ
いかがでしたしょうかお米の化学。
繰り返し整列して輪っかになる姿が面白いですね。
およそ3,000年前から日本で始まった稲作は、長い年月をかけて病気にも強く、よりたくさん実るように栽培の仕方も稲自体も改良されていきました。
日本のように稲作に適した気候で生活する民族は、比較的穏やかな性格を持っていると言います。
稲作は太陽の光と河川などの水が主な成長源であるため、普通の水田であれば連作障害なども起こらずに毎年安定した成果が得られます。
そうでない気候の民族の場合は、土地が痩せると他の土地を探さなければならないため、争いになる事が多かったそうです。
もし日本に稲作が伝わって来なかったら、もっと違う性分の自分がいたかもしれませんね。
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