前回の論文要約記事では、夜型遺伝子とリズム感の関係についてまとめていきました。
夜型人間はリズム感が高いことが多く、リズム感が高い人は脳の処理速度も身体的な優位性を持つ可能性があると結論づけられています。
今回はそんなリズム感に関係した論文の要約です。
参考にした2022年10月にPNASに発表された論文「How musical rhythm training improves short-term memory for faces(音楽リズムトレーニングと顔認知の短期記憶能力の改善)」です。
論文まとめ
米カリフォルニア大学の研究チームは、60~79歳の音楽家などではない人を対象に、2種類のゲームのどちらかを8週間プレイしてもらいました。(1日20分、週5日)
一つ目のゲームは、視覚情報から得られるサインを音楽に合わせてボタンをタップするRhythmicityというリズムゲームです。
二つ目のゲームは、単純な単語検索ゲームです。
8週間のプレイの後、脳波を測定しながら顔の認知テストを実施しました。
その結果、リズムゲームをプレイしたグループのみ顔の記憶力の改善がみられ、顔の符号化と維持の際に脳の上頭頂領域の活動が増加することが示されました。
この研究から
これまでの研究から、楽器を演奏することは、感覚的知覚、選択的注意、短期記憶など、多くの認知能力に関係することが明らかになっています。
また演奏やリズムゲームなど音楽のプレイヤーとして関わることで、音楽以外の能力を伸ばす可能性も示唆されています。
しかしどのような神経メカニズムを経てこれらの効果が作用するのかはいまだ解明には至っていません。
今回の研究で、音楽リズム トレーニングが非音楽タスクのパフォーマンスに役立つという重要な証拠が得られました。
リズムトレーニングが右上頭頂小葉内の活動を活発にし、顔の認識、記憶を改善する可能性があることを示しています。
これらの結果は、高齢になったとしてもトレーニング次第で脳の認知機能を維持、向上させることが可能であることを明らかにしています。
まとめ
・リズムゲームは高齢者においても短期記憶(記憶力)の向上に役立つ
・音楽と脳の活性化について、より強い証拠が積み重なっている
・音楽による脳の活性化は音楽以外でも役に立つ可能性が高い
かつてはゲーム脳と言われ一部の人たちから拒否の対象になっていた(いる)ゲームですが、使い方次第では人に多くの利益をもたらすことが分かっています。
今回はリズムゲームを研究の対象としていますが、レースゲームやアクションゲームなどでも認知機能や判断能力の改善、向上が見られることも示唆されています。
音楽やゲームを通して頭を動かすことは、脳にとって良い影響があるようですね。
しかし、まだまだ解明されていない音と脳の関係が多くあることもあり、まだまだ研究には伸びしろがありそうです。
自分的には数ある楽器の中でもドラムは脳に良い刺激があると思っています。
両手、両足を使う全身運動な上に、楽曲を聞き取って覚えたり、感覚的に叩いて「あ、これか!」という体験もできます。
週に1、2回数十分でもかなり脳のトレーニングになりますし、認知症などの予防にもなるのではないかと確信めいた願望を密かに胸に秘めています。
科学的に効果が証明されるのもあり、今後も楽器とは長い付き合いになりそうです。
ちなみに今回研究で使用したリズムゲームは、アメリカのロックバンド元グレイトフル・デッドのドラマー、ミッキー・ハート氏と共同開発されたそうです。
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