バナジウムは耐腐食性、耐摩耗性に優れた柔らかい金属です。
バナジウムのおよそ8割は製鋼添加剤として使われています。
鋼にバナジウムを約0.1%ほど添加すると、炭素と結合してより細かい金属構造をとる特徴があります。
靭性を失わず強度を上げることから、ベアリングやバネ、ドリルの刃など多くの鉄鋼に使われます。
ロストテクノロジーと言われるダマスカス鋼製のナイフにも、バナジウムが含まれていることが分かっています。
バナジウムの歴史
18世紀、メキシコのシマパン鉱山にて褐鉛鉱が採掘されたことがバナジウム発見の始まりと言われています。
メキシコの鉱物学者アンドレス・マヌエル・デル・リオは、この鉱物に含まれる未知の化合物をエリスロニウムと名付け世に発表しようとしました。
しかし発表を目前にフランスの研究機関によって、「ただのクロム化合物の一種ではないか?」との指摘を受け、デル・リオは発表を撤回します。
そこからおよそ30年後、ニルス・ガブリエル・セフストレームが軟鉄中から新元素を発見したと発表します。
その元素は化合の条件によって色鮮やかで様々な様相を見せることから、スカンジナビア神話の女神バナジスに因んだ名がつけられました。
それが今回紹介しているバナジウムです。
翌年、バナジウムは30年前にデル・リオが発見したエリスロニウムと同じ物であることが確認されました。
このことからバナジウムの発見者はA・M・デル・リオとして知られるようになっています。
人体としてのバナジウム
バナジウムは人間の必須元素のひとつとされています。
成人男性の体内に0.11mg程度と微量に存在しますが、その働きについては未だ不明な点が多いです。
動物実験の結果によると、インスリン同様に血糖値を下げる働きが見られ、糖尿病の予防、改善に効果があると期待されています。
その他動物実験の結果によって、体内の老廃物や毒素の排出、脂質の代謝に関係するることが分かっています。
バナジウムの摂取量が多すぎると、脱水、体重減少、成長不良、下痢、呼吸困難、心不全、腎臓障害の症状が見られます。
逆にバナジウムの摂取量が不足は、成長不良、生殖機能低下、脱毛などの原因となるとされています。
バナジウムが多い食品の代表例として、
・昆布、ワカメ、海苔などの海藻類
・アサリ、エビ、カニ、イワシ、サバなどの魚介類
・パセリ、きゅうり、トマト、マッシュルームなどの野菜類
・その他、卵、豚肉、牛乳、そば、大豆…
などなどたくさんあります。
余程の偏食でない限りバナジウム不足に陥ることはなさそうですね。
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