酸素
酸素は空気中の約21%を占める元素です。
約78%を占める窒素と合わせると、組成する空気のほとんどを埋めてしまいます。
その他の1%はアルゴンや二酸化炭素、ネオンやヘリウムなどが微量に存在します。
酸素の発見者はイギリス人科学者のジョセフ・プリーストリー。
実際には彼の発見より前、スウェーデン人科学者のカール・ウィルヘルム・シェーレがその存在を発見していました。
しかし、酸素の発見をスウェーデン語のみでまとめていたため、世界的に注目されるまで時間がかかってしまい、結果プリーストリーの発見として認知されました。
現在では酸素の発見はこのシェーレとプリーストリーの両人の功績とされています。
特徴
酸素には物質を燃焼させる働きがあり、体内では食物を熱エネルギーに変換するなど生命活動に欠かせない元素です。
また、体内に取り入れた酸素の一部が活性酸素に変化し細胞を酸化させることで、老化や生活習慣病の原因になると言われています。
酸素の沸点は-182℃であり、空気中の酸素がその温度以下まで冷やされると液体になります。
液体窒素が-195℃なので、酸素の入った袋を液体窒素に付けることで、酸素を液体にして取りだすことができます。
気体では無色の酸素ですが、液体になると仄かに青い色をしています。
液体酸素になると気体の状態より濃度が高い分、燃焼の激しさも増します。
鉄線でさえ数秒の内に燃え尽きるほどの燃焼作用が見られます。
その反応の強さ故、液体燃料としてロケットの推進剤などにも使われています。
また液体酸素には常磁性があり、磁石にくっつくという面白い性質もあります。
“猛毒の酸素”と生物の進化
酸素は元々地球上にあったわけではなく、光合成を行う細菌や藻類(シアノバクテリアなど)の生物が現れたことで、二酸化炭素と水から作り出されました。
その過程で、それまで生態系を支えていた二酸化炭素が激減。
海中に酸素が放出されると、ほとんどの生物が死滅してしまいした。
その当時、酸素は猛毒だったのです。
多くの生物が死んでいく一方で、海底や地中に潜って身を守ろうとした生物もいます。
生き残った生物の一部には、長い年月をかけて酸素をエネルギーとして活用する生物が現れました。
“好気性細菌”の誕生です。
酸素から膨大なエネルギーを得ることに成功した好気性細菌は、酸素を必要としない嫌気性細菌の勢力圏を奪っていきます。
嫌気性細菌は海底の奥深くに逃れ、核を持たない生物(原核生物)へ進化するものや、仲間同士で融合しDNAを膜で覆った生物(真核生物)に進化するものもいました。
更に時が経つと、嫌気性細菌である真核生物と好気性細菌との間で共生するものも現れました。
細胞の小器官ミトコンドリアの誕生です。
ミトコンドリアは現在、多くの生物の細胞内に存在し、酸素をエネルギーに換える役割を担っています。
つまり酸素は生物の進化を決定付ける大きな存在だったのです。
ちなみに海底に逃れた嫌気性細菌たちは、海底のメタンなどをエネルギーとし、昔ながらの性質を残した古細菌として進化し、現存しているものもいます。
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