の続き…。
今回は今までの神とは一風変わった神の紹介です。
見た目も行動も異質なる彼らをご覧あれ。
アメミト(Ammut)
アメミトに裁かれることは、我々の歴史でいうところの地獄に落ちることと同じです。
下半身がカバ、上半身がライオン、頭がワニという姿の神アメミトは、人々を恐怖にと戒めを植え付けた女神です。
有名な登場シーンは死者の書における“心臓計量の儀”の場面です。
心臓計量の儀は“法の女神マアトの羽”と“死者の心臓”を天秤で測る儀式です。
心臓を天秤にかけられた死者は、神々から生前の行いについての問いを投げかけられます。
問いかけに正しく答えられていた(生前正しい行いをしていた)場合は、心臓はマアトの羽と同じ重さになり、死者は楽園へ導かれます。
もし、正しく答えられなかった(生前の行いが悪かった)場合は、アメミトが死者の心臓を喰らってしまいます。
こうなった死者には本当の死が訪れます。
二度目の死楽園へ行くどころか、永遠の闇に落ちていくのです。
ベス(Bes)
その姿はまるで猿や老人の顔をした小人のようです。
がっしりした体形に少しビールっ腹が特徴の神がベスです。
ベスは他の神のように固有の神殿を持たないという珍しい神であり、見開かれた目や突き出た舌、モノによっては陰茎が勃起した姿が残されています。
異質な見た目とは裏腹に、身分を問わず助けるクセがあります。
人々を助けるためにナイフを手に取りタンバリンを叩きながら蛇を食らう話があります。
果たしてタンバリンを叩く必要があったかは謎であるが、民衆からの信仰は篤かったようです。
ベンヌ(Benu)
エジプト神の中では珍しい、全身が鳥の姿で描かれる神がベンヌです。
太陽神ラー、トト神、ホルス神のように鳥は神聖の象徴であるが、鳥の姿で表されるベンヌはそれらの始祖であるとも言われています。(ベンヌの卵から太陽が生まれた話もあるほどである。)
ベンヌの特徴は、500年生きると自らを業火で焼き、新たなベンヌとして生まれ変わるというところです。
どこかの不死鳥と生態で同じですが、歴史的にみるとコチラが先です。
大きな違いといえばベンヌは自らを焼き払った後、生まれ変わる前の身体をミイラにしてラーの神殿へ送り届ける手間があることです。
立つ鳥跡を濁さずですね。
セルケトSerket)
砂漠地帯の人間にとってサソリは極めて危険な生物です。
頭にサソリを乗せた女神がセルケトは、毒をもつサソリを形容した神である反面、名前には“呼吸させるもの”という意味もあり、医療やまじないの神として信仰されていました。
古くから存在した神であるためヘリオポリス九柱とのかかわりも強いです。
セルケトが生んだサソリは、豊穣の神イシスとそのお腹の子を守る力があります。
更には太陽神ラーの船に同席し、蛇神アポピスからラーを守る役割を担っています。
そんなセルケトの頭のサソリ、実はサソリではなくタイコウチだったのは内緒です…。
メジェド(Mrdjed)
名前と姿が世間で最も一致しているのはこの神ではないでしょうか?
神官が崇拝していることが分かるが、その多くが謎に包まれています。
オシリスの家に住み、目から光を放ち敵を打ち倒すらしいです。
実のところメジェドが名前なのかも確定していません。
自分の一番好きなメジェドのシーンはこれです。
ホルスの目とウジャトの目を開眼し、帯を巻いて本気モードのメジェド。
“マアトの羽を乗せたケベフセヌエフらしき神”が二度見するほどやる気に満ちています。
アテン(Aten)
異形オブ異形にして、一時期エジプト覇権を握った神です。
太陽が最も強く輝いている状態を神格化した姿とされています。
アメンホテプ4世がエジプトで初の宗教改革を行う際、白羽の矢が立ったのがこのアテンでです。
アメンホテプ4世は、当時様々な神の信仰がある中、“アメン”を信仰していた神官の力の強まりを危惧し、新たな神を信仰させるよう民に命じました。
そこで、エジプトで初の“唯一神(アテン)”を崇拝させることにしました。
しかし、エジプトの民は一神教に慣れていませんでした。
アメンホテプ4世がこの世を去るとかつての神々への信仰が深まり、アメン信仰は冷え込んでいったのです。
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