クリスタル・スカルやネブラ・ディスクなど、解明済みのものも含めて数あるオーパーツが存在する中、一際人気の高いアイテムと言えばアンティキティラデバイスではないでしょうか?

紀元前100年ごろの古代ギリシャで作られたとされ、天体の運行や日食・月食を予測するための高精度な装置と考えられてきました。
「世界最古のアナログコンピュータ」としても名高いこのオーパーツですが、最新の研究によって、その評価が覆される可能性が浮上しています。
アルゼンチンにあるマル・デル・プラタ国立大学(National University of Mar del Plata)の研究者たちが発表した論文によれば、アンティキティラデバイスは実際には「複雑な装飾品」あるいは「おもちゃ」のような存在だった可能性があるというのです。
研究の内容を以下にまとめます。
参考研究)
・The Impact of Triangular-Toothed Gears on the Functionality of the Antikythera Mechanism(2025/04/01)
歯車の構造から見えてきた「機能しない」証拠
この研究では、研究者たちが装置内部の歯車の配置や歯の間隔、そしてその製造時に生じた可能性のある誤差を詳細に分析しました。
その結果、以下のような驚くべき事実が明らかになりました。
「歯車の構造的な欠陥により、装置は本来の目的通りには機能しなかった可能性がある」と研究者は述べています。
この分析は、カーディフ大学の天体物理学者Mike Edmunds氏による過去の研究を基礎としています。(An Initial Assessment of the Accuracy of the Gear Trains in the Antikythera Mechanismより)
Edmunds氏は、装置の歯車の形状や、製造上の誤差がどれほど性能に影響を及ぼすかを調査していましたが、今回の研究ではその評価をさらに進め、「誤差の累積が許容限界を超えていた」との結論に至っています。
歯車の運動モデルが示した「現実のギアは空回りしていた」可能性
研究チームは、アンティキティラデバイスが実際に動作していたと仮定したコンピュータシミュレーションを行い、歯車の噛み合わせや回転の流れを詳細に再現しました。

その中で明らかになったのは、ギアの間で頻繁に発生する噛み合い不良や空回り、脱輪などの現象でした。
これにより、単なる精度不足という問題を超え、「そもそもまともに動作しなかった可能性」が浮かび上がったのです。研究者らは次のように述べています。
「モデルでは、歯車のランダムかつ系統的な配置ミスにより、多くの場面でギアの詰まりや外れが発生した」
従来、歯車に見える部分は多少の誤差を含みつつも、天体運行を計算する実用装置であったと広く信じられていました。
一方、シミュレーションの結果はこれまでの見解に異を唱えるものとなる形となりました。
研究は、「装置自体が物理的に機能しない構造だった」という根本的な疑念を提起しています。
過去の測定値に過信は禁物
アンティキティラデバイスは1901年にギリシャ沖の海底で発見されましたが、発見されたのは全体のごく一部に過ぎません。
長年にわたり水中にあったことから、破損や腐食が激しく、現存するのはわずかな破片だけです。
そのため、研究の多くは残された部品を基にした推測とモデリングに頼っています。
今回の研究ではこの点についても言及されており、「残された断片から得られた寸法や構造が、必ずしも当時の完全な状態を正確に反映しているとは限らない」と研究者は警鐘を鳴らしています。
つまり、アンティキティラデバイスが天文計算機として本当に機能していたのかどうかを判断するには、さらなる検証が不可欠であるということです。
「天才の結晶」か「美術工芸品」
この研究はまだ査読を経ておらず、学術誌には正式に掲載されていませんが、プレプリントサーバー(査読前の論文を投稿し、一般に公開するプラットホーム)arXivにて公開されています。
今後、学術界での検証が進む中で、この仮説がどのような評価を受けるのかが注目されます。
アンティキティラデバイスは長らく、人類が持ち得た技術の粋として称賛されてきました。
しかし今回の研究によって、本当に機能していたのか、それとも装飾的な意図で作られたのかという根本的な問いが再浮上しています。
今後の研究によって、その真の目的や製造背景に関する新たな視点が得られる可能性もあります。
あるいは、古代ギリシャの技術的限界や文化的背景を再考する契機となるかもしれません。
まとめ
・アンティキティラデバイスは、構造的誤差により本来の機能を果たせなかった可能性がある
・歯車の配置や噛み合わせの問題により、シミュレーションでは頻繁にギアの不具合が発生
・研究チームは、残された断片の分析結果に過信せず、さらなる調査と技術開発の必要性と強調
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