腸の健康は、免疫機能や精神的健康、消化機能、さらには慢性疾患のリスクにも大きく関係しています。
腸内環境を整えるために、善玉菌(以下プロバイオティクス)やウコン(以下ターメリック)をサプリメントとして摂取する人が増えています。
では、プロバイオティクスとターメリックを同時に摂取すると、より効果が高まるのでしょうか?
本記事では、それぞれの効果や相互作用、摂取方法、安全性について各論文を参考にまとめていきます。
腸内フローラとプロバイオティクスの役割

私たちの腸には、数百兆もの微生物が生息しており、そのバランスが健康状態に影響を与えます。
腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、消化不良、免疫力の低下、炎症の増加などの問題が生じる可能性があります。
プロバイオティクスは、腸内の善玉菌を補充し、腸の健康を維持する働きを持つ生きた微生物です。
【プロバイオティクスの主な健康効果】
1. 消化機能の改善
• 善玉菌を増やし、腸内フローラのバランスを整えることで、便秘や下痢の予防、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の正常化に役立つ(Probiotics – Health Professionalより)
2. 免疫機能の向上
• 腸は免疫細胞の約70%が集中している器官であり、プロバイオティクスは免疫細胞の活性化や感染症の予防に貢献する(Role of Turmeric and Curcumin in Prevention and Treatment of Chronic Diseases: Lessons Learned from Clinical Trialsより)
3. 腸脳相関のサポート(精神的健康の向上)
• 腸と脳は密接に関連しており、腸内環境がメンタルヘルスにも影響を与える
• ある研究では、特定のプロバイオティクスがストレス、不安、うつ症状を軽減する可能性があると示唆されている
4. コレステロール値の低下
• 乳酸菌の一部は、胆汁酸の代謝を調整することで、コレステロール値の低下に寄与する可能性がある
5. 炎症性腸疾患(IBD)の予防と管理
• クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)の症状を軽減する可能性がある
代表的なプロバイオティクスの種類
プロバイオティクスにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる健康効果を持ちます。
• Lactobacillus(ラクトバチルス属):消化を助け、乳糖不耐症の症状を軽減
• Bifidobacterium(ビフィズス菌):免疫機能の向上、便秘改善
• Saccharomyces(サッカロマイセス属):抗菌・抗炎症作用
摂取量は「CFU(生菌数)」で表され、一般的には1〜50億CFU/回が推奨されています。(The influence of curcumin additives on the viability of probiotic bacteria, antibacterial activity against pathogenic microorganisms, and quality indicators of low-fat yogurtより)
ターメリックの特徴とクルクミンの作用
ターメリック(ウコン)は、Curcuma longa というショウガ科の植物から得られるスパイスです。(Role of Turmeric and Curcumin in Prevention and Treatment of Chronic Diseases: Lessons Learned from Clinical Trialsより)
特に、クルクミンという活性成分が、抗炎症作用や抗酸化作用を持つことで注目されています。
【ターメリックの主な健康効果】
1. 抗炎症作用
• クルクミンは、炎症を引き起こす物質(サイトカイン)を抑制し、関節炎や慢性疾患のリスクを軽減する可能性がある
2. 消化不良の改善
• 研究によると、1日500mgのターメリックを4回摂取すると、消化不良(胃もたれ、膨満感)の改善に効果があるとされている
3. アレルギーの軽減
• 季節性アレルギーやアレルギー性鼻炎の症状を和らげる可能性がある
4. 精神的健康のサポート
• 一部の研究では、クルクミンがセロトニンやドーパミンのレベルを調整し、うつ症状の緩和に役立つ可能性があると示されている
5. 関節の健康維持
• 変形性膝関節症(OA)の痛みを軽減する効果があるとする研究も存在する。
【ターメリックの摂取方法】
• スパイスとして料理に加える(カレー、スープ、炒め物など)
• ターメリックティーとして飲む
• カプセルや粉末のサプリメントを摂取する
FDAによると、1日最大8gまで安全とされています。 ただし、高用量の摂取は副作用を引き起こす可能性があります。
一緒に摂取するメリットと注意点
プロバイオティクスが腸内細菌のバランスを整え、ターメリックが腸の炎症を抑えるため、併用することで相乗効果が期待できます。
納豆や漬物といったプロバイオティクス食品に加え、粉末状のターメリックを摂取することで両方を手軽に体内に取り入れることが可能ですが、どちらも即効性はないため、継続的に摂取することが重要です。
プロバイオティクスとターメリックは一般的に安全とされており、多くの人にとって健康維持のための有益なサプリメントです。
しかし、摂取量や体質、服用している薬との相互作用によっては、副作用や健康リスクが生じる可能性があります。
特に、持病のある方や妊娠中の方は、慎重に摂取する必要があります。
【プロバイオティクスの安全性と注意点】
1. 副作用のリスク
プロバイオティクスは腸内細菌を増やすことで健康をサポートしますが、体質によっては消化器系のトラブルを引き起こすことがあります。
主な副作用
• 消化器系の不調:初めてプロバイオティクスを摂取した際、一時的にガス、腹部膨満感、下痢、便秘などの症状が出ることがあります。これは腸内フローラの変化によるものですが、数日〜数週間で落ち着くことが多いです。
• 感染症のリスク:健康な人には問題ありませんが、免疫力が低下している人(がん患者、HIV感染者、臓器移植後の人など)では、プロバイオティクスの細菌が血流に入り、感染症を引き起こす可能性があります。
2. 医薬品との相互作用
プロバイオティクスは特定の薬と相互作用する可能性があるため、注意が必要です。
• 抗生物質:抗生物質は腸内の細菌を殺すため、同時にプロバイオティクスの菌も影響を受ける可能性があります。
抗生物質を服用している場合は、プロバイオティクスを摂取するタイミングをずらす(数時間後に摂る)と良いでしょう。
• 免疫抑制剤:免疫系を抑制する薬(例:ステロイドや抗がん剤)を服用している人は、プロバイオティクスの摂取により感染症リスクが高まる可能性があるため、医師と相談することが重要です。
3. 妊娠中・授乳中の安全性
プロバイオティクスは一般的に妊娠中や授乳中でも安全とされていますが、免疫系が変化する時期であるため、新しいサプリメントを始める前に医師と相談するのが望ましいです。
【ターメリックの安全性と注意点】
1. 副作用のリスク
ターメリックはスパイスとして日常的に摂取されることが多く、適量であれば安全ですが、高用量のサプリメントを摂取すると副作用が発生することがあります。
主な副作用
• 消化器系の問題:高用量のターメリックは、胃痛、吐き気、膨満感、下痢、胃酸の逆流を引き起こす可能性があります。
• 肝機能への影響:一部の研究では、ターメリックの過剰摂取が肝機能に負担をかけ、肝炎を引き起こす可能性があることが示されています。
2. 医薬品との相互作用
ターメリックは薬と相互作用する可能性があるため、以下の薬を服用している方は注意が必要です。
• 血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)
• ワーファリン(Coumadin)、アスピリン、クロピドグレル(Plavix)などの血液を薄める薬を服用している場合、ターメリックを大量に摂取すると、出血やあざができやすくなる可能性があります。
• 血糖値を下げる薬
• インスリン、メトホルミン、セマグルチド(Ozempic)などの糖尿病薬を服用している場合、ターメリックが血糖値をさらに低下させ、低血糖(めまい、ふらつき、意識障害)のリスクを高める可能性があります。
• がん治療薬
• ターメリックの抗酸化作用が、一部の抗がん剤の効果を低下させる可能性があるため、がん治療中の方は摂取を控えるか、医師と相談してください。
• 肝臓に負担をかける薬
• ターメリックは肝機能に影響を与える可能性があるため、肝臓に負担をかける薬(アミオダロン、メトトレキサート、ブラックコホシュなど)との併用は避けるのが望ましいです。
3. 妊娠中・授乳中の安全性
ターメリックを食品として摂取するのは安全と考えられていますが、ターメリックサプリメントは妊娠中・授乳中の安全性が確認されていないため、摂取を避けるべきです。
【プロバイオティクスとターメリックを一緒に摂る際の注意点】
• 両者とも消化器系に影響を与えるため、一緒に摂取すると胃腸の不調を感じる場合があります。
→ その場合は、摂取するタイミングをずらす(例:朝はプロバイオティクス、夜はターメリック)などの工夫が必要です。
まとめ
・プロバイオティクスは腸内フローラを整え、ターメリックは腸内の炎症を抑える
・それぞれを併用することで腸の健康維持に役立つ
・即効性はないため、継続的な摂取が推奨される
・薬との相互作用があるため、持病のある方は医師と相談することが重要
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