科学

アメリカ人若年層女性の乳がんが増加、原因は不明

科学

近年、40歳未満のアメリカ人女性における乳がんの発症率が急激に増加しており、その要因は依然として解明されていません。(Selective inhibition of CDK9 in triple negative breast cancerより

  

米国全体の乳がん症例は年間平均0.56%増加していますが、40歳未満の女性では、その増加率が毎年3%以上に達しており、より深刻な問題となっています。

 

コロンビア大学の研究者らによる新たな調査では、この増加が米国全土で均一に起こっているわけではなく、地域ごとに異なる傾向があることが明らかになりました。

 

この研究結果は、将来的に乳がんの発症リスクの高い地域や要因を特定し、予防策や対策を講じるための重要な手がかりになる可能性があります。

  

今回のテーマとして以下の記事と研究を基にまとめていきます。

  

参考記事)

Breast Cancer Is Rising in Young American Women, And We Don’t Know Why(2025/02/24)

 

参考研究)

Geographic differences in early-onset breast cancer incidence trends in the USA, 2001–2020, is it time for a geographic risk score?(2025/02/12)

 

 

地域ごとに異なる乳がんの発症率 

本研究では、2001年から2020年までの全50州の公衆衛生データが詳細に分析されました。

  

その結果、一部の州では乳がんの発症率が増加している一方で、他の州では発症率が安定しているか、むしろ減少していることが分かりました。

 

Geographic differences in early-onset breast cancer incidence trends in the USA, 2001–2020, is it time for a geographic risk score?より

 

研究の筆頭著者である疫学者のRebecca Kehm氏は、「米国の40歳未満の女性における乳がんの発症率は上昇しているが、地域ごとにどのような違いがあるのかは明らかになっていなかった」と指摘しています。

さらに、「この研究により、地域ごとに異なる環境要因が乳がんリスクにどのように影響を及ぼしているのかをより正確に把握できるようになった」とも述べています。

 

具体的には、乳がんの発症率が最も高い州はメリーランド州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ハワイ州、コネチカット州であることが判明しました。

 

一方で、南部地域では発症率の増加は見られませんでした

 

このような地域差が生じる理由はまだ完全には解明されていませんが、食生活、環境要因、医療へのアクセス、社会経済的な要因などが関与している可能性があります。

 

 

乳がんリスクが高い女性の特徴 

 

今回の研究では、どのグループの女性が乳がんの発症リスクが高いのかについても分析されました。その結果、次のような傾向が明らかになりました。

 

• 非ヒスパニック系黒人女性の乳がん発症率が最も高い

• 非ヒスパニック系白人女性だけが、全地域で統計的に有意な増加を示した

  

なぜこれらのグループで乳がんの発症率が高いのかについては、まだ明確な答えは得られていません。

  

しかし、過去の研究では、乳がんリスクは運動習慣、ホルモン避妊薬の使用、遺伝的要因などと関連していることが分かっています。(Exercise may blunt a woman’s risk of lung and breast cancer: studiesより

    

Kehm氏は、「現在見られる乳がんの増加は、遺伝的要因だけでは説明できない。遺伝子の変化は長い時間をかけて起こるものであり、数十年という短期間で急増するものではないからだ」と述べています。

  

さらに、「また、40歳未満の女性は通常のマンモグラフィー検診の対象ではないため、検診方法の変化が発症率の増加を招いた可能性も低い」と指摘しました。

 

これらのことから、乳がんの増加には環境的要因やライフスタイルの変化が影響している可能性が高いと考えられます。

 

 

若年層におけるがん全般の増加

乳がんに限らず、近年、若年層におけるがんの発症率が全体的に増加していることが分かっています。(Global trends in incidence, death, burden and risk factors of early-onset cancer from 1990 to 2019より

 

例えば、1990年には14歳から49歳の若年層におけるがんの年間症例数は182万件でしたが、2019年には326万件に増加しています。この傾向は乳がんだけでなく、他のがん種にも当てはまるものです。

  

また、がんによる死亡率も上昇しており、この傾向を食い止めるためには、地域ごとのリスクの違いを明確にし、それに応じた個別化された検診、予防策、治療法を提供することが必要です。

  

  

さらなる研究の必要性 

疫学者のMary Beth Terry氏は、「早期発症型の乳がんが増加している原因はまだ完全には解明されていない。しかし、人口ごとの発症率の違いを分析することで、今後の研究のための重要な手がかりが得られるだろう」と述べています。

 

続けて、「特に、検診対象外の若年女性における乳がんの増加について理解を深めることで、将来的な予防策の開発につなげることができる」とも指摘しました。
  

この増加の原因はまだ完全には解明されておらず、今後さらなる研究が求められています。

地域ごとの違いを詳細に分析することで、リスクの高いグループを特定し、個別化された予防策や治療法を開発することが重要です。

 

 

まとめ

・40歳未満のアメリカ人女性の乳がんが毎年3%以上増加している

・乳がんの発症率が最も高い州はメリーランド州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ハワイ州、コネチカット州であり、南部地域では増加が見られない

・非ヒスパニック系黒人女性の発症率が最も高く、白人女性の増加率が特に顕著である

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