炭酸飲料やエナジードリンクといった砂糖入り飲料(SSBs: Sugar-Sweetened Beverages)は、私たちの脳の快楽中枢を刺激するために作られた嗜好性の高い製品です。
これらの飲料は、一口目の甘い満足感を提供する一方で、栄養価がほとんどなく、健康への深刻なリスクを伴っています。
砂糖入り飲料を常飲すると、虫歯、肥満、2型糖尿病、そして心臓病のリスクが大幅に高まることが研究で示されています。
タフツ大学(Tufts University)の研究者たちが発表した最新の研究によると、毎年世界中で約120万件の心血管疾患の新規症例と、220万件の2型糖尿病の新規症例が、砂糖入り飲料の摂取に起因していると推定されています。
参考記事)
・Scientists Quantified The Harm of Sugary Drinks, And It’s Devastating(2025/01/18)
参考研究)
・Burdens of type 2 diabetes and cardiovascular disease attributable to sugar-sweetened beverages in 184 countries(2025/01/06)
砂糖入り飲料の消費がもたらす深刻な問題
一部の先進国では砂糖入り飲料の消費が減少傾向にあるものの、発展途上国ではいまだに公衆衛生上の大きな課題となっています。
研究のシニア著者であり、公衆衛生科学者でもあるDariush Mozaffarianは次のように述べています。
「砂糖入り飲料は低・中所得国で大量に販売・宣伝されている。これらの地域では、こうした有害な飲料を消費するだけでなく、長期的な健康被害に対処する能力が十分でないことが多い。」
特にメキシコでは、2型糖尿病の新規症例の約3分の1が砂糖入り飲料に起因しており、コロンビアでは約半数に達します。
また、南アフリカでは糖尿病の新規症例の28%、心臓病の15%が砂糖入り飲料によるものとされています。このように、地域によっては非常に深刻な影響が確認されています。
研究の詳細と砂糖入り飲料の定義
今回の研究では、砂糖入り飲料(SSBs)を”1杯(約240ml)あたり50Kcal以上の砂糖を含む飲料“と定義しています。
このカテゴリーには以下のような飲料が含まれます。
• 市販または自家製の炭酸飲料
• エナジードリンク
• フルーツドリンク
• レモネード
など
一方で、甘味を加えた牛乳や100%果汁・野菜ジュース、カロリーゼロの人工甘味料入り飲料は除外されています。
ただし、これらの飲料も過剰摂取することによる健康リスクも指摘されていることにも注意が必要です。
研究チームは、世界の118カ国から約290万人を対象とした450件の調査データを使用し、各国における砂糖入り飲料の消費量を分析しました。
そして、これを心血管疾患や代謝性疾患のデータと組み合わせることで、砂糖入り飲料がもたらす健康被害の規模を明らかにしました。
砂糖入り飲料の健康への影響
研究結果から、砂糖入り飲料が毎年約80,000人の糖尿病関連死と、258,000人の心血管疾患関連死に関係していることが分かりました。
これらの数字は、砂糖入り飲料の消費がもたらす健康リスクの大きさを物語っています。
砂糖入り飲料は体内で非常に速く消化されるため、血糖値を急上昇させる一方で、ほとんど栄養を提供しません。
その結果、過剰な摂取は以下の問題を引き起こします。
• 体重増加
• インスリン抵抗性の増加
• 二型糖尿病や心血管疾患を含む代謝性疾患のリスク増加
さらに、研究者たちは砂糖入り飲料の影響を受けやすい地域を特定し、ラテンアメリカやアフリカといった地域では特にリスクが高いと指摘しています。
Dariush Mozaffarian氏は「ラテンアメリカやアフリカでは消費量が非常に高く、健康への影響が深刻である。これを放置すればさらなる被害が広がるだろう。」と述べています。
消費削減への緊急性
タフツ大学の栄養学者Laura Lara-Castorは、砂糖入り飲料の消費を減らすための緊急対策を提唱すると同時に、次のように述べています。
「糖尿病や心臓病によるさらなる命の短縮を防ぐため、砂糖入り飲料の消費を抑える緊急かつ科学的根拠に基づいた対策が必要。」
公共政策として、以下のような取り組みが推奨されています。
• 砂糖入り飲料に対する課税(砂糖税の導入)
• 健康教育キャンペーンの強化
• 代替となる健康的な飲料の普及促進
これらの取り組みによって、砂糖入り飲料の消費を減らし、長期的な健康被害を防ぐことが期待されています。
まとめ
・砂糖入り飲料は毎年数百万件の心血管疾患や糖尿病の原因となり、世界的な健康問題となっている
・発展途上国では消費量が高く、特に深刻な被害が確認されている
・緊急かつ科学的根拠に基づいた介入が必要であり、砂糖税や教育キャンペーンがその有効な手段となる
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