コーヒーは世界中で愛される飲料の一つであり、多くの研究がその健康効果を明らかにしてきました。
適度なコーヒー摂取は、二型糖尿病や心血管疾患(CVD)のリスクを低下させ、寿命を延ばす可能性があることが報告されています。
しかし、1日3~5杯以上の多量摂取や、摂取時間が健康に及ぼす影響については、まだ議論の余地があります。
最近の研究では、コーヒーの摂取量だけでなく、「摂取時間」にも注目が集まっています。
特に、朝にコーヒーを飲む習慣が健康に与える影響について、新たな研究が進められています。
本記事では、アメリカ国立健康栄養調査(NHANES)のデータを用いて行われた研究を基に、コーヒー摂取のタイミングと健康リスクの関係を詳しく解説します。
参考研究)
・Coffee drinking timing and mortality in US adults(2025/01/08)
研究の背景
コーヒーに含まれるカフェインは、覚醒作用を持ち、集中力を高めることで知られていますが、同時に午後以降に摂取すると、体内時計(サーカディアンリズム)を乱すことが指摘されています。
このリズムは、睡眠・覚醒パターンだけでなく、代謝やホルモン分泌にも影響を及ぼします。
体内時計が乱れると、睡眠不足や高血圧のリスクが高まり、長期的には心血管疾患や寿命に影響を与えることが知られており、コーヒーの摂取タイミングは、単なる好き嫌いの問題ではなく、健康管理の観点からも重要です。
過去の研究でも、コーヒー摂取が糖尿病や心血管疾患のリスク低下に寄与することが示されてきましたが、摂取時間が健康に与える具体的な影響については十分に検討されていませんでした。
本研究は、この時間帯に関するコーヒー摂取のタイミングと健康効果を検討した初めての包括的な研究となります。
研究概要:NHANESを基にした分析
研究では、以下の2つのデータセットを使用しました。
1. NHANESデータ
• アメリカの全国規模で実施される健康栄養調査
• 1999年から2018年にわたり、40,725人の成人を対象に食事やコーヒー摂取データを収集
• 心血管疾患やがんの既往歴がある人、妊娠中の人、不適切なカロリー摂取を報告した人を除外
2. 女性・男性ライフスタイルバリデーション研究(WLVSおよびMLVS)
• コーヒー摂取パターンの検証を目的としたサブスタディ。
• 女性772人、男性691人が対象
2. 分析の焦点
• コーヒー摂取のタイミング:朝のみ、終日、未摂取に分類
• 健康リスク:全死因死亡リスクおよび心血管疾患死亡リスク
• 関連要因:年齢、性別、運動習慣、喫煙歴、高血圧などの健康指標を考慮
研究結果:朝のコーヒーが最適?
研究結果は以下のようにまとめられます。
1. コーヒー摂取タイミングのパターン
• 36%の参加者が朝にのみコーヒーを飲む習慣があると報告
• 16%が1日を通してコーヒーを摂取
• 残りの48%はコーヒーを飲まないと回答
2. 朝のコーヒー摂取者の健康効果
• コーヒーを飲まない人と比較して、朝にコーヒーを飲む人は全死因死亡リスクが16%低下
• 心血管疾患による死亡リスクについては31%低下
• 一日中コーヒーを飲む人では死亡リスクの低下は確認されず、コーヒーを飲まない人と同じ程度のリスクだった
3. 摂取量の影響
• 朝のコーヒー摂取者は、摂取量に関係なく死亡リスクの低下が見られたが、1日1杯以下の軽度摂取者では効果がやや弱い傾向があった
これらのことから、朝に2〜3杯のコーヒーが脂肪リスク低下に関係していると言えます。
考察
カフェインが睡眠を誘発するホルモン「メラトニン」の分泌を抑制することが、午後や夜間の摂取が体内時計を乱す原因と考えられています。
入眠できない(覚醒状態が続く)など体内時計が乱れることで、睡眠不足や高血圧のリスクが増加します。
よって午後にカフェイン入りのコーヒーを摂取するのは避けた方が良いとする一方、研究者たちは、コーヒーの抗炎症効果が朝に最も強く発揮される可能性を指摘しています。
血液中の炎症マーカーが朝にピークを迎えるため、朝のコーヒー摂取がその影響を最も効果的に抑えるのではないかと考えられます。
また、本研究意外の結果も鑑みると、多くても1日3~5杯を目安に摂取することが勧められています。
まとめ
・午前中にコーヒーを摂取することで、全死因および心血管疾患による死亡リスクを低下させる可能性がある
・午後以降の摂取は、睡眠や体内時計を乱し、健康への悪影響を引き起こす可能性がある
・適量を守り、朝の時間帯を中心にコーヒーを楽しむことが推奨される
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