科学

不妊症、腸への害、肺機能障害……マイクロプラスチックが引き起こす健康リスク

科学

マイクロプラスチックと人間の健康の関係が注目されるようになってから久しいこの頃。

 

時間が経ってから影響が現れるという特性上、その深刻さに気付くことも難しいという難点があります。

 

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者たちは、空気中や食品、水中など、あらゆる場所に存在するこれら微細な化学物質が、不妊症、大腸がん、肺機能の低下を引き起こす可能性があると指摘しています。

 

今回紹介する研究レビューは、2018年から2024年にかけて発表されたマイクロプラスチックに関する研究から、特に重要なデータを抽出し、これが動物および人間の健康に与えるリスクを評価したものです。

 

今回のテーマとしてまとめていきます。

 

参考記事)

Microplastics Suspected to Cause Fertility, Gut, And Lung Issues, Warns New Review(2025/01/03)

 

参考研究)

Effects of Microplastic Exposure on Human Digestive, Reproductive, and Respiratory Health: A Rapid Systematic Review(2024/12/18)

 

 

31件の研究分析とその手法

 

UCSFの研究チームが分析した31件の研究のうち、大部分は動物実験(主にマウス)が中心でした。

 

人間を対象とした研究はわずか3件のみであり、これらは2022年から2024年の間にトルコ、イラン、中国で実施されました。人間を対象にした3件の研究内容は以下の通りです。

 

・母体の羊水に含まれるマイクロプラスチックの測定

・胎盤中のマイクロプラスチックの存在量の評価

・鼻腔液中のマイクロプラスチックの調査

 

動物実験の多くは中国の研究機関で実施され、マウスを対象にしたものが中心でした。

 

科学者たちはこれまで、動物実験を基盤としながら人間に対する影響を推測してきましたが、今回のレビューは、既存の研究の質と強度を評価する初めての試みの一つです。

 

  

生殖器系への影響

レビューによると、マイクロプラスチックは精子の質や生殖能力に深刻な影響を与える可能性が高いことが分かりました。

 

この分野における証拠の質は「高い」と評価されており、以下の具体的な影響が確認されています。 

 

・精子の生存率の低下

・精子濃度の減少

・精子運動性の低下

・精子の形態異常の増加

 

特に、動物実験では、プラスチック曝露量が増えるにつれてこれらの影響が顕著に見られることが分かっています。

 

 

消化器系への影響

人間を対象にした研究では消化器系の影響についてのデータが不足しているものの、動物実験では以下の結果が得られました。

 

・大腸の構造変化

・粘膜表面積の著しい減少

・慢性炎症の誘発

 

これらの変化は、動物が曝露されたプラスチックの量に比例して発生しているとされています。

 

 

呼吸器系への影響

マイクロプラスチックは、肺の損傷、呼吸機能の低下、酸化ストレスといった呼吸器系の問題にも関与している可能性があります。

 

この分野の証拠の質は「中程度」と評価されていますが、以下のような具体的な影響が動物実験で確認されています。

  

・肺組織の損傷と線維化

・酸化ストレスの増加

・慢性肺炎の発生リスクの増大

 

特に酸化ストレスは、肺の老化や他の呼吸器疾患を引き起こす要因として重要視されています。

 

 

マイクロプラスチックの将来的なリスク

現在、マイクロプラスチックの破片は胎盤、糞便、肺組織、母乳、脳組織、血液といった人間の体内の様々な部位で検出されています。

 

しかし、その長期的な影響については、依然として未知の部分が多いです。

 

UCSFの研究者たちは、「マイクロプラスチックは全身に影響を及ぼす可能性があり、特にプラスチック生産が今後さらに増加することを考えると、早急な対策が必要である。」と述べています。

 

プラスチックの生産量は2060年までに現在の3倍に達すると予測されていますが、それに伴う健康リスクを解明する研究は追いついていません。

 

また、研究者たちは、「証拠が不完全であっても行動を起こすべきである。マイクロプラスチックへの人間の曝露を防ぐための規制と対策を講じるべき時だ。」 と警鐘を鳴らしています。

 

 

まとめ

・マイクロプラスチックは、生殖器系、消化器系、呼吸器系への深刻な影響を及ぼす可能性がある

・動物実験から得られたデータは一貫しており、人間への影響を示唆しているが、さらなる研究が必要

・緊急性を高く規制と対策を講じ、人体への曝露を減少させることが重要である

 

プラスチック製品の普及は生活を便利にしましたが、その裏側にはリスクが隠れているということですね。

 

余計なお世話に感じるかもしれませんが、知っているのと知らずに生活しているのでは大違いです。

 

無意識に、コンビニ弁当をそのまま電子レンジで温めることを避けたり、容器の素材に気を付けたりと、生活の中での違和感を避けるようになるでしょう。

 

現在PFOSが世間で騒がれているように、マイクロプラスチックに注目が集まるのも時間の問題かと思われます。

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