怒りを感じたとき、あなたはどのように対象しますか?
多くの人は怒を何かで発散することを選びます。
それは、時に言葉に、時に暴力となるかもしれませんが、衝動的な怒りをどう処理すれば良いかについては議論が分かれています。
「怒りを溜め込むのはよくない」「感情を吐き出せば楽になる」という考えもありますが、一方、アンガーマネジメントに代表されるように、「その場の怒りを一旦抑えて冷静になる」ことが推奨されることもあります。
オハイオ州立大学の研究チームは、この課題について大規模なメタ分析を行いました。
その結果、怒りを発散する行動は、必ずしも怒りの解消には役立たないことが判明しました。
それどころか、逆効果になる可能性があるというのです。
今回のテーマとしてまとめていきます。
参考記事)
・Venting Doesn’t Reduce Anger, But Something Else Does, Study Shows(2024/11/21)
参考研究)
154件の研究から得られた結
研究では、154件の研究結果を分析し、合計10,189人の参加者のデータが検討されました。
その結果、怒りの発散、特に激しい運動や感情的な爆発が怒りを和らげる効果はほとんどなく、場合によっては怒りをさらに悪化させることが分かりました。
研究の著者であるブラッド・ブッシュマン氏は、次のように述べています。
「怒りを感じたら『蒸気を放出する』ように発散すればいいというのは完全な神話である。それどころか、怒りを表現することでさらに感情が高ぶる可能性がある。」
なぜ「怒りの発散」が効果的ではないのか?
怒りを感じたときに心身が緊張状態(覚醒状態)に入るのは自然なことです。
この状態を減少させることが、怒りの制御において重要です。
しかし、怒りをぶちまける行為は、この覚醒状態を高める傾向があります。
怒りを感じたとき、多くの人は物を壊す衝動に駆られたり、目の前の相手に暴言をかけたり、ジムで激しい運動をしたりして発散しようとするでしょう。
しかし、こうした方法は怒りを増幅させる可能性が高いと研究者たちは指摘しているのです。
欧米で人気のレイジルーム(モノを壊す体験ができるスポーツ施設)のような場所では、参加者が物を壊すことで短期的にはスッキリするかもしれませんが、怒りそのものを解決するわけではなく、さらなる攻撃性を引き起こすリスクがあると言います。
怒りの対処に効果的な「冷静さを保つ方法」
研究は、「覚醒状態を低下させる活動」が怒りの抑制に有効であることを示しています。
つまり、心と体を落ち着かせる方法が、怒りを健康的に処理する鍵となるのです。
以下のような活動が効果的だとされています。
1. 呼吸を整える
ヨガのようなゆっくりとした動きに集中したり、呼吸を整えるたりすることは、心身を落ち着かせる効果が高いとされています。
呼吸に意識を向けることで、怒りによる覚醒状態を和らげることができます。
また、深呼吸は覚醒を和らげる簡単かつ効果的な方法です。
漸進的筋弛緩法(体の特定の部位を緊張させた後に緩める方法)も、リラックス状態を誘導し、怒りを軽減する効果があります。
2. 瞑想とマインドフルネス
瞑想やマインドフルネスは、怒りを引き起こすトリガーや思考を冷静に観察する手法です。
これにより、感情をより健康的に処理する能力が養われます。
3. 一時的な休憩
特にストレスフルな状況では、その場を離れて一時的に休むことも有効です。
怒りを感じた時に、10秒間数を数えるだけでも怒りを落ち着かせる助けになります。
怒りを科学的に理解する:二要因理論
この研究の背景には、「二要因理論」という心理学的フレームワークがあります。
これは、感情が生理的要素と認知的要素の組み合わせで形成されるという考え方です。
例えば、怒りを感じた際、心拍数の上昇(生理的要素)と、「自分が正当な理由で怒っている」という思考(認知的要素)が結びついています。
従来の研究では、主に認知的要素、つまり「思考の変化」が怒りのコントロールに与える影響が注目されてきました。
しかし、この研究は生理的要素、つまり身体的な覚醒状態を低下させる重要性を明確にしました。
誰でも簡単にできる怒りの対処法
怒りに対処するには、必ずしも専門的なセラピーを受ける必要はありません。現代では、多くのリソースが手軽に利用可能です。
例)
・スマホアプリを使った瞑想やマインドフルネスのガイド
・YouTube動画で学ぶ呼吸法やリラクゼーションテクニック
・自分で実践できるヨガやストレッチ
……
これらは全て、怒りを管理し、日常生活の中でストレスを軽減する手助けとなります。
まとめ
・怒りの発散は逆効果になる場合がある
・ヨガや深呼吸、瞑想などの冷静さを保つ活動が有効
・リラック法を教えてくれる動画などを利用することで、専門家に頼らず自分で怒りをコントロールできる方法がある
また記事では、「怒りを感じたとき、ただ発散するのではなく、自分に合った冷静さを保つ方法を選ぶことが感情管理にとって重要」としています。
怒りに任せた行動ではなく一度冷静になって落ち着くことが、結果的に自分のストレス緩和に役立ってくれるのでしょう。
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