心理学歴史

【歴史を変えた心理学④】フロイトと精神分析

心理学

【前回記事】

 

この記事では著書“図鑑心理学”を参考に、歴史に影響を与えた心理学についてまとめていきます。

 

心理学が生まれる以前、心や精神とはどのようなものだったのかに始まり、近代の心理学までをテーマとして、本書から気になった内容を取り上げていきます。

  

今回のテーマは「フロイトと精神分析」です。

  

   

 

フロイトと精神分析

ジークムント・フロイト(1856~1939年)

  

今や精神分析は、自己を表現するためのツールのみならず、心の中に抱いている希望や恐怖などに対して医学的なアプローチを行う臨床心理学の基礎となっています。

 

オーストリアの医師でだったジークムント・フロイトは、この分野の開拓者としてよく知られています。

 

彼が残した最大の功績は、“無意識”という心の奥深くに眠る心理的な欲求世に知らしめたことです。

 

フロイトは、医師としての訓練を受けた後、神経学者として仕事に就きました。

 

彼の当初の研究テーマは、コカインが患者への精神刺激薬として使えるかどうかというものでした。

 

コカの葉から抽出された成分が合法だった当時、気分の高揚や陶酔などが患者の精神にどのように影響を与えるかを分析していました。

 

フロイトは1885年、パリのピティエ=サルペトリエール病院でジャン=マルタン・シャルコーのもとで働き始めました。

 

ジャン=マルタン・シャルコー(1825~1893年)

 

現代神経学の創始者とも言われるシャルコーは当時、催眠医療やヒステリーの研究の第一人者でした。

 

フランス一とも言われたサルペトリエール病院にて、膨大な臨床データを捌いていました。

 

ここで精神疾患に対する知見を広めたフロイトは、ウィーンに戻って行った講義の中で、精神疾患はまさしく精神的な影響によるものであり、脳の物理的な性質に由来するものではないこと主張しました。

 

そして、精神疾患に対するアプローチとして、患者に催眠をかけることを学んだと述べています。

 

その後、フロイトは個人医院を開設し、患者の診察を行いました。

 

彼が用いた手法は、催眠状態にある患者に対して自らの感情を語らせ、励ますことでした。

 

これは、催眠は抑圧を取り除くという考えのもとに、友人であるヨーゼフ・ブロイアーが開発したものです

 

ヨーゼフ・ブロイアー(1842~1925年)

 

ブロイアーが、アンナと呼ばれる女性患者に対して同様の治療を行ったところ、症状が著しく改善したことが記録されています。

 

彼はこの手法を“トーキングキュア”と呼びました。

 

 

フロイトと無意識

フロイトは多くの患者と接する中で、うつ病や不安、妄想といった精神疾患は、欲望や記憶から生じるのではないかと考えました。

  

彼はこの考えに対して、性欲に注目して分析しています。

 

夫の機能不全によって妻が欲求不満を満たせない場合、そのフラストレーションがストレスとなり、自分が認識しないうちに精神に影響を与えているというものです。

 

そのような欲望や記憶は、あまりにも厄介なものなので、 自身では認めようとせず、無意識のなかに閉じ込められていきます

 

しかし、 隠しておくにはその力が強すぎて、意に反するかたちで無意識からあふれ出し、心の病気になるのです。

 

そこでフロイトは、患者との会話による治療にさらに工夫を加え、隠された中から病的な思考を取り出すようにしました。

 

きちんと患者と向き合えば、問題が生じなくなると考えたのです。

 

フロイトの主要な理論体系では自由連想という手法が用いられます。

 

自由連想は、ソファーやベッドなどで患者がリラックスした状態から、頭に思い浮かんだ単語やそれに関連する単語をどんどん連想して言葉にしていく手法です。

 

患者が言語的手がかりや視覚的手がかりに反応し、思わず口にした言葉の中から、患者の心の奥にある感情を読み取っていくというものです

 

「イド(エス)」と「自我」と「超自我」

フロイトの理論では、人間には「イド(エス)」と「自我」と「超自我」という3つの心の領域が存在するとしています。

 

・イド(id)=エス(es)

イド(id)は、「~がしたい」「~がほしい」といったさまざま欲求が無秩序に存在する無意識(潜在意識)の領域です。

 

私たちは誰しも、潜在意識の中に潜む暗い欲望を抑圧しています。

 

承認欲求や征服欲求、自由でありたいといったことがここに当たります。

 

そうした欲望をコントロールするために、「自我(ego)」をつくり上げられます。

 

・自我(ego)

自我は自分自身であることの感覚で、アイデンティティとも訳せる領域です。

 

心の中心的な存在で、自分をコントロールし、社会に適応していくためにバランスをとっていく機能があります。

 

・超自我(superego)

超自我(superego)は、ことあるごとに自我を抑え、「〇〇してはいけない」、「〇〇するべきだ」という、強い倫理観によって行動をコントロールする領域です。

 

幼少期のしつけや親との関係から生み出されるとされ、幼少期の厳しい教育を受けると、イドや自我をより強く見張る超自我が形成されるとされています。

 

フロイトによると、この超自我精神疾患の主要な原因としています。 

  

幼少期のトラウマが、大人になってから精神に与える影響を説明するのもこの超自我の分野でしょう。

  

例えば、小さい頃に行われた発表で失敗した経験や恥ずかしい経験を持っている人は、無意識に人前での発表を避けるようになり、逆に、発表に成功した経験がある子は、大人になってからもプレゼンに積極的になったりといった具合です。

  

このようにフロイトは、人間は意識よりも無意識によって操られていると主張していったのです。

  

当時の彼の考えを完全に表現しているかは分かりませんが、現在でもビジネスの場では、マーケティングを始めとした行動心理学などに応用される考え方でもあります。

  

もし、自分が恐怖するものやどうしても合わない仕事……、やらないと落ち着かない習慣などがある人は、フロイトの無意識に視点を当ててみるとその原因に気づけるかもしれません。

 

場合によっては、苦手なことも克服できるかも……。

 

そんな精神分析とフロイトについてのまとめでした。

 

 

まとめ

・フロイトは、「うつ病や不安、妄想といった精神疾患は、欲望や記憶から生じるのではないか」と考えた

・情緒の変化は、性的な欲求を通して様々に現れるとした

・また彼は、「イド」、「自我」、「超自我」といった概念を使って精神医学を発展させていった

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