消費量が多く、国民の生活上重要性が高い野菜として位置づけられるものは「指定野菜」と呼ばれています。
安定供給が望まれる品目であり、もし価格が下落したとしても国からの補助によって農家の生産がサポートされる仕組みとなっています。
2026年度から指定野菜の仲間入りを果たすブロッコリー。
ビタミンやミネラルが豊富でファイトケミカルをはじめとした抗酸化物質によってアンチエイジングにも効果的とされる野菜です。
そんなブロッコリーには抗がん作用のある物質が含まれるとされ、かねてから研究の対象にされてきました。
研究の中で、どうやらがんだけでなく他の生活習慣病の予防などにも関係する可能性が示唆されてきたようです。
今回のテーマとしてまとめていきます。
参考記事)
・Broccoli’s Anti-Cancer Compound Could Have a Whole Other Health Benefit(2024/03/12)
参考研究)
ブロッコリーの抗がん化合物による健康効果
オーストラリアのシドニー大学の研究チームは、植物に一般的に見られる23種類の化合物について一連の試験を実施し、それらの化合物と血小板の結合に関する性質を調べました。
ブロッコリー、カリフラワー、ブロッコリースプラウトなどのアブラナ科の野菜に多く含まれる“スルフォラファン”という化学物質が、血液の抗凝固剤としての可能性が示唆されました。
スルフォラファンの影響を分子レベルで分析したところ、PDIA6と呼ばれるタンパク質の活性をサポートすることにより、血小板の凝集を遅らせ、血栓の形成を妨げることができることが明らかになりました。
血小板は傷を塞いで出血を止めるという重要な役割を果たしますが、特定の状況下では血液の流れを遮断することで血栓を形成し、それによって脳卒中や心筋梗塞などの病気を引き起こすこともあります。
特に脳や心臓などの生命に不可欠な組織では、血液が行き渡らないことで酸素が遮断され、回復不能な損傷を受ける危険があります。
血栓を除去する際に現在よく使用される組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)と呼ばれる薬は、脳の損傷を防ぐ効果は約20%に過ぎないとされています。
マウスを使った実験では、スルフォラファンとをtPAと組み合わせると、成功率が最大60%に上昇する可能性があることを研究者らは発見しました。
つまり、スルフォラファンは、脳卒中を起こした緊急を要する患者に施される治療にも使用できる可能性があることが示されたのです。
これを受け米国大学の生物医学者Xuyu Liu氏は、「ブロッコリーに含まれている化合物は、脳卒中後の血栓を取り除く薬の効果を改善するのに効果的であるだけでなく、脳卒中のリスクが高い患者の予防薬としても使用できる可能性がある」と述べています。
また、脳卒中治療で試験される抗凝血剤によく見られる副作用(出血)をまったく引き起こさないことも注目すべき点であると驚きを見せています。
この研究はまだ初期段階にあり、人を対象としたテストはまだ行われていません。
ブロッコリーに特化した食事だけで脳卒中リスクを軽減するのに十分かどうかはまだわかりませんが、食事の中にブロッコリーを追加することで、様々な病気の予防につながることは明白でしょう。
ちなみに、スーパーで買える食材の中でスルフォラファンが最も多いとされるのは、ブロッコリーよりも“ブロッコリースプラウト(芽)”です。
見かけた際は手に取ってみてはいかがでしょうか?
この研究の詳細は、ACS Central Scienceにて確認することができます。
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