科学

【研究】安価で手に入るある甘味料が高齢者の認知機能を高める可能性(キングス・カレッジロンドン)

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オリゴ糖といえば、腸内細菌のエサとなることで腸内環境を整えてくれる糖として有名です。

 

腸内の環境を整えることは、体の調子を良くすることに直結することも知られており、肌荒れの改善から精神的な安定など様々な点でメリットがあるとされています。

 

今回紹介するのは、そんな腸内環境について、双子を用いて比較した研究です。

 

どうやら腸は、脳の認知機能についても影響を与えるようです。

 

参考記事)

Cheap Daily Supplement Seems to Boost Brain Function in Older Adults(2024/03/04)

 

参考研究)

Effect of gut microbiome modulation on muscle function and cognition: the PROMOTe randomised controlled trial(2024/02/29)

 

 

腸内環境とオリゴ糖

 

キングス・カレッジロンドンの研究者は、60歳以上の36双生児(72人)を対象に、プレバイオティクスサプリメントを摂取した後、認知機能のどのように影響したかを評価する旨の実験を行いました。

 

※プレバイオティクス(prebiotics)

オリゴ糖や食物繊維など、食べても胃や小腸で分解・吸収されずに大腸に到達し、大腸に生息する微生物の餌になる食品成分

 

その結果、プレバイオティクスサプリメントを摂取した被験者は、記憶テストのスコアを向上させることができることが示唆されました。

 

実験(二重盲検試験)では、プロテインパウダーを12週間にわたり毎日摂取してもらい、双子の片方には“イヌリンとフルクトオリゴ糖(プレバイオティクス)”を混ぜたものを、もう片方には“マルトデキストリン(比較対象用)”を混ぜたものを用意しました。

 

(イヌリンやフルクトオリゴ糖は、スーパーなど多くのお店で手に入れることができる一般的な甘味料です。)

 

イヌリンまたはフルクトオリゴ糖を服用した被験者は、3ヶ月後の認知テストでより高い得点を獲得しました。

 

これは、プレバイオティクスによって腸内細菌叢(そう)の変化を誘発することが、認知行動を変える可能性があることを示唆しています。

 

マウスによる先行研究では、ビフィドバクテリウムがマウスの腸と脳の接続をコントロールすることによって認知障害を緩和させることが示唆されています。

 

ヒトでのイヌリンやフルクトオリゴ糖のサプリメントが結腸の微生物叢を「供給」し、「良い」細菌が繁栄することを可能にすることを示唆しています。

 

キングス・カレッジ・ロンドンの老人医学研究者であるメアリー・ニ・ロクレーン氏は、「わずか12週間でこれらの変化が見られたことは驚きである。この研究は、高齢者の脳の健康や記憶力の強化に貢献する可能性がある」と研究についての見解を述べています。

 

腸と脳の関係を解き明かすことは、より健康に生きるための新たな道筋を示す可能性があります。

 

今後は、より大きなグループで同様の結果が見られるかを確認する必要があります。

 

また、現在の試験に参加した双子はほとんどが女性であったことなどから、性差についてもより深い研究が必要であることし,今後の研究に期待が持たれています。

  

この研究は、Nature Communications.にて確認することができます。

 

 

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