【前回記事】
この記事は、著書“心理学をつくった実験30”を参考に、”パヴロフの犬”や”ミルグラム服従実験”など心理学の基礎となった実験について紹介します。
「あの心理学はこういった実験がもとになっているんだ!」という面白さや、実験を通して新たな知見を見つけてもらえるようまとめていこうと思います。
今回のテーマは、前回のソーンダイクの問題箱に並び、心理学の基本で学ぶことになる“パヴロフの犬”です。
パヴロフの条件づけ(パヴロフの犬)
【本書より引用(要約)】
条件反射とも言われている“条件づけ”という言葉。
何かに反応して体が反射してしまうこと、と私たちはその言葉の意味を体感的に理解しています。
では、反射とはそもそも一体何なのでしょう。
反射とは、医学や生物学、心理学の分野において、“外からの特定の刺激に対してほとんど意識せずに起こる反応”を指します。
身近な例えでは、足の膝をハンマーで叩くと足が動く(膝蓋腱反射)反応が分かりやすいでしょう。
そんな条件反射の実験として有名なものに“パヴロフの条件づけ(パヴロフの犬)”というものがあります。
ロシア(ソビエト連邦時代)の生理学者イワン・パヴロフが行った、動物を使った条件反射についての実験です。
イワン・ペトローヴィチ・パヴロフ(1849〜1936年)
パヴロフは心理学者ではありませんでしたが、彼の一番の関心事は条件反射と脳の関係でした。
犬の口に食べ物を入れると、唾液腺から口腔内に唾液が出てきます。
これは、物質が口腔内の粘膜に触れたときに反応する無意識な反射です。
パヴロフは、「同じ物質を犬から離れたところに置いておいて、犬に眼と鼻だけで作用するような場合でも同じ分泌反応引き起こす。
それだけでなく、犬の前に同じ物質が入っていた容器が置かれている場合でも、同様の反応が起こる。
さらに言うと、その容器を運ぶ人間の姿を見ただけで、あるいは他の部屋からその人の足音が聞こえただけでも反応する」ことを知りました。
この反応を基にパブロフは、犬の頬に管を差し込み、唾液腺の量などを測る装置を作り、数百頭の犬を対象として実験を行います。
①はじめに、犬に餌を与えて反応を観察する → 唾液が出る
②メトロノームを鳴らして反応を観察する → 唾液は出ない
③メトロノームを鳴らしながら餌を目の前に出して反応を見る → 唾液が出る
④「メトロノームと同時に餌を出す」をしばらく繰り返す
⑤メトロノームを鳴らして反応を観察する → 唾液が出る
この実験では実験対象となった犬は、餌を与えなくてもメトロノームを鳴らすだけで唾液が出るように“条件づけ”されることが分かりました。
ちなみにメトロノーム音でなくとも、ベルなどの音や何らかの光など、動物が「おや?」と思う程度の刺激であれば条件づけは可能としています。
パヴロフはこういった実験を通し、条件反射と脳の関係を明らかにすることへの関心を強めていきました。
上記のような実験の他に、動物の脳の一部を破壊したり切除することで、様々な反射が消失したり亢進することなども記録され、後の心理学や生理学、医学にも影響を与えていくことになります。
条件づけと行動
何かをきっかけに反射的に脳が行動してしまう……。
パヴロフの犬は、そういった古典的条件づけの分かりやすい例えとして現在でも用いられています。
こういった単純な条件づけですが、私たちの生活においても活用することが可能です。
例えば、リラックスしているときに好きな芳香剤の香りをかぐ習慣があると、外で同じ香りにであった時にもリラックスすることができます。
眠る時間にベッドに入ってスマホをいじっていると脳が覚醒して、ベッド=脳が覚醒する場所という条件づけがされてしまいます。
明日が早いのにいざ寝ようとすると逆に眠れず、結局スマホをいじって夜更かし……、なんてことに。
逆に、眠くなるまでは本を読んだりしてリラックスして過ごし、眠気を感じた時に布団に入ることを習慣にすると、布団に入っただけで眠くなるような条件付けがされます。
脳は単純ですが、その分悪い条件付も受け入れてしまうということですね。
この研究は後に、ネズミがレバーを引くと餌が出る装置で学習させる“オペラント条件づけ”など派生していくことになります。
後々、心理学を学ぶ中で出会うことになるでしょう。
その時にこのパヴロフを思い出してみると、より理解が深まるはずです。
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