哲学

【帝王学②】風林火山陰雷

哲学

【前回記事】

 

この記事では、元谷拓氏が著した“誰も知らない帝王学”を参考に、知っておくと人生で役立つ考え方をまとめていきます。

 

帝王学とは、伝統ある家系や家柄など特別が立場にある人が、その立場に相応しい能力を養うものの総称です。

 

正確には帝王学という学問があるわけではありませんが、貞観政要や孫氏の兵法などの古典はもちろん、偉人の伝記や作法書など諸々を含めて帝王学とされています。

 

本書からも、世界の様々な歴史から得られた人格者として生きるヒントが諸所に見受けられます。

 

記事を通し、そんな特別な人格教育の一端を知っていただけたらと思います。

 

今回のテーマは“風林火山陰雷”です。

 

  

  

風林火山陰雷

【孫子・軍争編より】

諸侯の謀を知らざる者は、予め交わること能わず。

 
山林・険阻・沮沢の形を知らざる者は、軍を行ること能(あた)わず。

 
郷導(きょうどう)を用いざる者は、地の利を得ること能わず。

 
故に兵は詐(さ)を以て立ち、利を動き、分合を以て変を為す者なり。

 

故に其(そ)の疾きこと風の如ごとく、

 

其の徐(しず)かなること林の如く、

 

侵掠(しんりゃく)すること火の如く、

 

動かざること山の如し、

 

知り難きこと陰(かげ)の如く、

 

動くこと雷霆(らいてい)の如し、

 

嚮(むか)うところを指すに衆を分かち、地を廓(ひろ)めて利を分かち、権を懸けて而(しこう)して動く。 

 

迂直の計を先知する者は勝つ。

 
此れ軍争の法なり。

 

【解釈】

各国の動向を知っていなければ、国家間の外交を成功させることはできない。

 

諸国の山や川、(守りの)険しい場所、沼沢などの地形を知らねば、軍を追撃させることもできない。

 

また、地勢に詳しい道案内がいなければ地の利を得ることもできない。

 

故に、兵(戦争)は敵を欺き、裏をかき、利を活かし優位に立ち回り、(敵に意図を悟られないよう)分散と集中を繰り返しながら臨機応変に進めるのだ。

 

従って、敵を攻める際は風のように疾く動いたかと思えば、林のように静かに身を潜め、

 

侵攻する際は火が燃え盛るように制圧し、その後は山のように動かず構え、

  

陰のよう潜み思惑を悟られることなく、動く時は雷のように一瞬で事を為す。

  

(敵には)偽の目的地を示し、目標を悟られないように部隊を分け、占領地を広げる時にはその領地を分守させ、利害を考えながら策を巡らせるのだ。

  

相手に先んじて迂直の計(遠回りに見えて実は近道である方法)を成した者が勝利する。

  

これこそが軍を戦わせるための原則である。

 

 

静と動の使い分け

武田信玄(1521〜1573年)

 

風林火山の考え方についての話です。

 

風林火山には続きとして陰と雷があり、これを省略して伝えられることがほとんどです。

 

節によって風林火山陰雷とも風林火とも言われています。

 

この一連の節の読み取り方に答えがあるわけではありませんが、自分がしっくりきたのは、“静と動の使い分けが大切”ということです。

   

何か相手と戦うときは、攻めるとなれば躊躇することなく全力で攻め、相手が対処する前にこちらは引き、意図を悟られないようにする。

 

この風林火山陰雷を見てみると、それぞれの句が静と動で補完し合っています。(諸説あり)

 

戦い以外に置き換えてみると、何か行動を起こす際には、目標に向かって実際に行動してみることと、行動した後に俯瞰した視点から分析することが大切といも言えます。

 

逆に、これを怠り中途半端に行動してしまった場合を考えてみると、

自分のアイデアを真似されて先を越されたり、

結果が出る前に止めてしまったり、

失敗から学ばず次も同じ失敗をしたり、

失敗を恐れて行動しなくなってしまったり、

……なんてことも考えられますね。

 

やる時はしっかりやる、休むときもしっかり休んで次に行動するための準備をする。

 

そんな行動の本質を捉えた帝王学です。

 

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