遂に到来した花粉症の季節。
自分は今まで大丈夫な方でしたが、今年は花粉症の症状が強く現れています。
そんな症状に苦しんでいる中ですが、気付いたことが一つあります。
それは、運動をした直後は症状が楽になるということです。
スクワットをゆっくり10回程度行っただけでも効果が現れ、とても驚きました。
このメカニズムについての研究がないか調べてみたところ、花粉症の症状のひとつであるアレルギー性鼻炎と運動に関する研究が参考になりそうだったので、まとめさせていただきます。
参考研究)
・Exercising with allergies: jog on, pollen
運動とアレルギー性鼻炎の改善
この研究は、13人のアレルギー性鼻炎患者(ARグループ)と14人の健康な被験者(Cグループ)が2種類のランニングエクササイズを行い、その前後のアレルギー性鼻炎の症状やサイトカインの分泌など生理学的変化を比較したものです。
その結果、激しい運動または中強度の運動のあとは、アレルギー性鼻炎の症状が大幅に改善されるということが分かりました。
また、激しすぎる運動よりも中強度の運動の方が免疫機能を強化する上で効果的だったことも分かりました。
方法
研究で行った運動プロトコルは、まず最初の2週間の間は、疲労困憊するほどの運動を行い、心拍数、酸素消費量、二酸化炭素生成量を測定しました。
これを徹底的な運動プロトコルと呼びます。
2週間後、困憊時の65〜70%の心拍数に対応する強度で30分間ランニングをしました。
これを中強度の運動プロトコルと呼びます。
両方のプロトコルに並行しながら、運動後の鼻炎症状スコアアンケートを使用して、鼻の症状を評価しました。
スコアアンケートは、鼻詰まり、かゆみ、くしゃみ、および鼻漏についてそれぞれチェックしました。
スコアは、0=なし、1=軽度、2=中等度、3=重度の四段階で評価されました。
また鼻腔内の分泌物を採取し、サイトカインの分析も同時に行われました。
サイトカインは体内の異物を認識すると活性化する、免疫細胞から分泌される物質です。
免疫細胞は、病原体やガン細胞など、異物があることを認識するとIL(インターロイキン)-1やIL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインを誘導することによって生体の炎症を促し、異物を排除しようとします。
また、炎症の反応が過剰にならないように、IL-10や、TGF-βなどの抗炎症性サイトカインが働き、反応のバランスをとる作用もあります。
ウイルスの侵入や、薬剤投与などによってこのバランスが崩れ 、炎症性サイトカインの分泌が過剰になると、体内で次々と炎症反応が起こり細胞を傷つけてしまうことがあります。
これを“サイトカインストーム”と呼んだりします。
徹底的な運動プロトコルを行った後のサイトカインの値を測定した結果は以下の通り。
・C(健康な被験者)
・AR(アレルギー性鼻炎患者)
C:AR
IL-2=21.13:35.25
IL-4=-2.31:-2.46
IL-13=0.15:1.49
TNF-α=-16.21:-15.42
中強度の運動プロトコルを行った後のサイトカインの値を測定した結果は以下の通り。
C:AR
IL-2=35.25:58.36
IL-4=-40.67:-11.74
IL-13=-1.76:-1.29
TNF-α=-28.7:-27.23
徹底的な運動と中強度の運動を比較した場合、炎症性サイトカイン(IL-4,13及びTNF-α)の差の割合が比較的低く、抗炎症性サイトカインの差の割合が比較的高いことが分かりました。
研究での考察では、アレルギー性鼻炎患者の鼻分泌物(サイトカイン)が、健康な対照群よりも高かったことを示しています。
激しい消耗運動と中強度の運動の両方が鼻炎の症状を軽減しましたが、中強度の運動のみが鼻分泌物のサイトカイン反応に有益な効果をもたらし、C群とAR群の両方でIL-2、IL-4の比率を増加させました。
アレルギー性鼻炎におけるさまざまな症状の発生メカニズムは複雑で、アレルギー反応生成物の直接的な影響によって引き起こされる可能性もありますが、神経メカニズムによっても引き起こされる可能性があります。
しかし、今回の研究によって、運動によって鼻の症状が悪化するのではなく、改善の方向に向かうという結果が見つかりました。
運動が鼻炎の症状を改善するメカニズムは完全に解明されていません。
交感神経活動によって鼻の血管収縮や静脈洞の体積が減少したことが原因であるとも考えられており、今後、運動とサイトカイン応答の関係などの解明にも期待が持たれています。
まとめ
・運動のあとは花粉の症状の一つであるアレルギー性鼻炎が改善される
・激しい運動よりも、中程度の強度の運動の方が症状を抑える効果が高い
・運動は免疫機能を強化する上でかなり効果的
運動を習慣化する効果は、前々から論文や研究の要約にてお伝えしてきましたが、今回のように即効性が期待できることを身をもって知ることができました。
今回の研究ではランニングを中心とした運動でしたが、経験上、バービーやスクワットでも同様の効果を得ることがでます。
外だと花粉が舞う中で運動することになるので、効果を実感するには個人差があるかもしれません。
せっかくなので、腕立てやスクワット、腹筋などを生活に取り入れてみると、花粉の症状が少しは楽になるかもしれませんね。
以上、流行りの症状に関する研究についてまとめさせていただきました。
コメント