前回記事
この記事では著書「身の回りのありとあらゆるものを化学式で書いてみた」から、興味深かった内容や身の回りの物質の性質を紹介していきます。
今回取り上げるテーマは“シクロデキストリン”です。
前回記事ではデンプンとグルコースの関係を化学式を使ってまとめていきました。
デンプンはグルコースがつながったC6H10O5という分子が円状に連続したものであることが分かりました。
ジェットコースターのレールのようなこの形がデンプン(アミロース)の基本であり、ちょっと枝分かれをした成分(アミロペクチン)なども多く存在していることもまとめました。
さて今回は、このコースターの形が輪っかになる分子シクロデキストリン(サイクロデキストリン)についてのお話です。
シクロデキストリン
デンプンの構成要素であるC6H10O5に“シクロデキストリン生成酵素”を作用させて作られるのが“シクロデキストリン”です。
トウモロコシ由来のデンプンから工業的に作り出すことができます。
シクロデキストリンはグルコースが6〜8個つながった輪っか状の分子が特徴的です。
それぞれグルコースの個数に応じて呼び名が決まります。
6個=αシクロデキストリンC36H60O30
7個=βシクロデキストリンC42H70O35
8個=γシクロデキストリンC48H80O40
中でも私たちに身近なのはβシクロデキストリンで、匂いや味などに関係が深い高分子です。
βシクロデキストリンの特徴
この分子の最大の特徴は“分子を取り込む性質がある”ことです。
また取り込んだ分子を徐々に放出する性質もあり、家庭用の消臭芳香剤などに使われています。
正確にはβシクロデキストリンを化学反応によって変化させた“メチル化βシクロデキストリン”が多く使われますが、輪の構造は変わりません。
デンプンが作り出した輪の中で香りの放出と取り込みが行われ、芳香と消臭の効果が得られるのですね。
味も取り込むシクロデキストリン
香りを取り込むシクロデキストリンでしたが、実は味も取り込むことができます。
例えば、お茶の渋みや苦みに関わる“カテキン”は体脂肪を減らす効果が認められています。
しかしその効果を得るには大量のカテキンを摂る必要があります。
しかしカテキンの濃度が高いと苦みや渋みが強く、飲みにくくなってしまいます。
そこでシクロデキストリンにカテキンを含ませておくことで、苦みや渋みを抑えて飲みやすくすることができます。
その他ワサビの辛さやレモンの酸味などをマイルドにすることもでき、それ以外にも化粧品や衣類など様々な用途で使用されています。
まとめ
いかがでしたでしょうかデンプンの化学。
普段あまり意識することのないデンプンですが、私たちの生活の色々場所で役に立っているのですね。
またαシクロデキストリンは小腸で溶けた後、余分な脂質や有害物質などを取り込んで排出する効果があります。
1gにのαシクロデキストリンはその9倍の脂肪を取り込むことができるとされているため、脂肪をかなり抑えられる成分として注目されています。
ちなみに難消化水溶性食物繊維としてネットなどで購入することも可能です。
次回記事
関連記事
コメント