大地震~キルケゴール①~

哲学
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今回からフォーカスしていくのは実存主義の第一人者セーレン・キルケゴールです。

  

ヘーゲルが考えた“多様な考え方を擦り合せることで、いずれは真理にたどり着ける”という哲学観に影響され、独自の考え方を見出した人物です。

  

この記事では彼の哲学観をより分かりやすくするため、彼の生い立ちに触れていきます。

 

小さな老人

セーレン・キルケゴール(1813~1855年)

キルケゴールはデンマークのコペンハーゲンの裕福な毛織物商人のもとで生まれました。

  

3人の兄と3人の姉末っ子として育ち、中でもとびきり優秀だったため、父から英才教育を施されていました。

  

倫理学を徹底して学ばされ、人間がとして何が正しいのかを厳しく学びます。

  

多感な学生時代でも質素な服を身につけ、決して目立つことはありませんでした。

  

しかし勉強において高い実力を発揮していたキルケゴールは、いつしか“小さな老人”と呼ばれるようになっていたそうです。

 

キルケゴールとヘーゲル

彼が17歳になった1830年。

  

牧師になることを夢見てコペンハーゲン大学の神学部に進みます。

  

そこでヘーゲル哲学と出会います。

  

ヘーゲルの“人間の営みはいずれ真理(絶対精神)にたどり着ける”という考えは、当時の流行の最先端の考え方であり、世間に根強い共感を得ていました。

  

若きキルケゴールもその考えに傾向していくようになります。

  

そして同じ頃、父からある告白をされることになります。

  

それはキルケゴールが生まれる前、自らが犯した罪についてでした。

  

大地震

キルケゴール
キルケゴール

私の中で大地震が起きた。

 

キルケゴールの父は、とある教会の借家に住む貧しい農家の生まれでした。

  

若き父はいつも自分の貧しさについて神に訴えていましたが、いつまでも救われない境遇から神を恨むようにもなっていきました。

  

そんな貧しい生活が続く中、連れ添った妻が死んでしまいます。

  

彼は求めるように、死んだ妻の下女(雑用や身の回りの世話をするために雇った女)に手を出し、強引に身ごもらせてしまいます。

  

神の前で愛を誓わず身ごもらせてしまった父は、いずれ罰が下ると畏れていました。

 

その後、コペンハーゲンにて織物商としてビジネスを成功させます。

  

しかしこれは、いよいよ神からの罰(金銭を愛する罪)が下ったと受け止め、これから生まれてくる子供も短命に終わるだろうと絶望したのです。

  

事実、この告白をキルケゴールにする頃には、彼の兄2人と姉3人、そして母までもがこの世を去っていました。

 

父の過去を知ったキルケゴールは大きな衝撃を受け、この告白のとき心情を“大地震”と表現しました。

  

絶望の時期

キルケゴール
キルケゴール

人間は罪を犯す生き物である。

 

彼は父の告白によって自分自身も罪の意識を背負っていきます。

  

それまで規律正かった彼の生活は荒れに荒れます

  

酒に溺れお金を見境なく使い、売春までも手を出したといいます。

  

そんな日々が続いたある日、彼はこう考えるようになります。

  

「人間は本来罪を犯す生き物である。

しかしその罪によって自分を責め続けることこそ本当の罪である。

罪を抱え、自分自身に向き合うことが自分のするべきことである。」

 

その後は再び規律正しい生活に戻り、勉学に励むようになっていきます。

  

キルケゴールの最期

キルケゴールが27歳になった頃、10歳年下のレギーネと婚約します。

  

ところがその1年後、突如として婚約を破棄。

  

その理由は未だに分かっておらず、神への罪の意識やら身体的な理由やらが推測されるにとどまっています。

 

その後彼はベルリン大学へ行き、ヘーゲルと交流のあったシェリングの学説を学びます。

  

また見識を広めるためにモーツァルトのオペラ鑑賞などにも積極的に芸術にも触れたそうです。

  

1842年、コペンハーゲンに戻った彼は父からの遺産を投げ売り、取り憑かれたように執筆活動に励みます。

  

12年の間に15冊以上もの著作を残しました。

  

今でも読み継がれている“死に至る病”“あれかこれか”もこの時期に書いたものとされています。

  

そして1855年秋、彼は路上で倒れ、数日後に42歳の若さにしてこの世を去ります。

 

彼の遺書には、自分の遺産と遺稿をレギーネに贈るよう書かれていました。

  


以上がキルケゴールの一生のあらすじです。

 

抑圧された幼少期から父の告白によって絶望した青年期。

 

立ち直り大人になってからも孤独に身を寄せた彼は一体どんな哲学観を生んでいったのか…。

  

次回以降、彼の哲学に触れていきます。

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