(前回記事↑)
前回の資本論では、資本主義社会に縛られる労働者についてまとめていきました。
単純労働者はいつまでも単純労働者のままであり続け、資本家から搾取され続けるとマルクスは述べていました。
現代においても、技術の必要ない仕事に依存していると新しい分野に入れない、という人が大勢います。
「資本論は昔のことだから…。」と言って見過ごせる話題ではないと感じました。
今回は、そんな資本主義社会の根幹である“資本主義がどうやって始まったのか”、そして、“資本主義の未来はどうなるのか”についてがテーマです。
この記事にて資本論はクライマックス(24章)になります。
まずは資本とは何だったのかについての簡単なおさらいから入ります。
資本=増える貨幣
資本論がにおける“資本”とは、“増える貨幣”のことを言います。
貨幣(G)
↓
商品(W)
↓
貨幣(G)+α
これを繰り返すことで、αとなる剰余価値をどんどん蓄積していく。
これが資本の基本的な仕組みです。
(詳しくは資本論④にて↓)
では一番最初の資本となるまとまったお金は、一体どこから生まれたのでしょうか?
マルクスはこの最初のお金が貯まるまでを“本源的蓄積”と言って説明しています。
本源的蓄積
マルクスは資本となる最初のまとまったお金は、“暴力”によって作られたと述べています。
彼は、本源的蓄積が最初に起こったであろうイギリスを例にするのが分かりやすいと言っています。
14世紀後半、資本主義の台頭によって封建社会の農奴制から解放された農民たちが多くいました。
自由になった彼らは、自分の土地で農作物を作り家族を養っていきました。
15世紀に入りヨーロッパで毛織物産業が活発になると、羊毛の需要が高まっていきます。
そこで国や大地主たちは、今まで農耕地だった土地を羊を養育するための牧場に変えていきます。
これによって農耕地から追い出される農民が続出。
スコットランドでは6年の間に約1万5,000人の農民が、意志とは関係なく土地や家を追い出されました。
これによって生産手段を失った農民が都市に投げ出されます。
彼らは労働賃金者となるか、国や資本家に奪われた土地で雇われ農耕者になっていったとマルクスは説明しています。
これらの農民からの収奪が、“本源的蓄積”の基礎になっているのです。
血の立法
土地を奪われ都市から追われたプロレタリアートが続出しましたが、当時の資本主義社会は彼らを受け入れるほど発展していませんでした。
働く場を得られなかった労働者たちは、物乞いや盗みをして生活するしかありません。
15世紀後半〜16世紀にかけて、そんな浮浪者や盗人を取り締まり、強制的に働かせる“血の立法”が成立します。
1530年にできた法律では、働ける浮浪者への罰則が決められました。
一度目はムチ打ちと拘禁にて労働を誓わされ、
二度目は再びムチ打ちと耳を切り落とされ、
三度目は死刑になります。
1572年になると、法律がさらに進化。
一度目はムチ打ちと烙印、
二度目は2年以上雇うものがいなければ死刑、
三度目は問答無用で死刑になります。
これらの法律は18世紀初頭まで有効でした。
また労働組合の結成やストライキを禁止する法律も存在し、それを罰する裁判では資本家が判事となるケースがほとんどだったそうです。
マルクスはこれらを例に、国が資本家を守っていたことを説明しています。
整備された資本主義社会において資本家が富を得るということは、国の成長につながるため、自然とそうなっていったことも見てとれます。
資本主義の未来
では資本主義社会の行く末は一体どうなるのでしょうか?
マルクスは、資本主義が発展していくことによって強い資本家が弱い資本家を吸収し、国を越えて資本を増やしていくと言っています。
拡大再生産(複利的に資本を拡大していく生産活動)は、資本も増やしますが労働者も増やしていきます。
労働者が増えるということは、労働者の力も増えるということです。
マルクスの予言では、この労働者たちはやがて革命を起こすだろうと言っています。
労働者が資本家から膨れ上がった資本を奪うのです。
奪われた資本は革命家たちによって社会化され、一部に資本が偏らないよう均等に分配されていきます。
資本を均等に分ける…。
もうお分かりですね。
資本主義の行く末は、労働者による革命。
そしてその最終地点が“共産主義”である……。
とマルクスはこの章を締めくくっています。
まとめ
・最初の資本は暴力によって成された
・農民は国や地主に土地を奪われ、都市へと働きに出るようになる→プロレタリアート
・資本家が資本を増やす→国が富む→国が資本家を守る
・資本主義の行く末は労働者たちによる革命
・やがて資本は均等に分けられ共産主義となる
以上、最初の資本と資本主義の未来についての話でした。
収奪が最初の資本の原点になっていたことを述べていますね。
資本の拡大はやがて労働者による革命をもたらし、共産主義へとたどり着く……。
正に資本主義の始まりと終わりをまとめた章です。
資本論におけるマルクスの主張は、この24章が結論となります。
しかしもう一つ、資本主義が根付きにくかった国の例を出し、自らの理論に裏打ちをしています。
その国とは植民地時代のアメリカです。
幾人ものヨーロッパの人間が、機械や労働者を率いてアメリカ大陸へ渡ったにもかかわらず、資本主義は中々興りませんでした。
一体どのようなからくりがあったのか……。
次回、資本論第一巻最終章(第25章)近代植民理論にてまとめます。
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