哲学経済

貨幣に備わる二つの機能~資本論③~

哲学

(↑前回記事)

  

カール・マルクス
カール・マルクス(1818~1883年)

  

前回の記事では商品と貨幣についての関係をまとめていきました。

  

貨幣は商品を計ることができる便利なものです。

  

しかしそれによって商品の裏にあるはずの労働の価値が見えなくなってしまいます。

  

その結果、商品は「結局いくらなの?」と貨幣が示す値段にばかり目がいくようになってしまうとマルクスは言いました。

 

今回の記事では、その貨幣についての話です。

  

なぜ貨幣は金や銀などの金属になっていったのかを軸にまとめていきます。

  

  

価値を金属で表す三つの理由

金銀プラチナの画像

 

金属が価値を表すのに適している理由は主に3つあると言います

  

・量が表しやすい

・分割や合体がしやすい

・大きさにかかわらず質が同じ

  

マルクスは“商品の交換を繰り返せば、必然的に貨幣が生まれる”と主張しています。

  

商品の交換はそれぞれの商品の持ち主同士が出会うことではじまります。

  

米の持ち主が服の持ち主と出会い交換する…。

  

しかし必ずしも交換できるとは限りません。

  

服の持ち主が「米より鉄が欲しい」と言い交渉が成立しないかもしれません。

  

米と服が交換できない画像

  

その場合、米を麦に、麦を牛乳に、牛乳を鉄にと交換を繰り返す必要性も出てきます。

  

交換できずに質が落ちてしまい使用価値(どんなことに役立つか)が薄れ、商品にならなくなってしまうことも考えられます。

 

そこで“何にでも交換できる商品”が必要になります。

  

それが貨幣です。

  

本来貨幣になる商品は何でも良いですが、交換を繰り返すうちに金や銀に行き着くとマルクスは言っています。

  

貨幣はあらゆる商品の等価形態(他の商品の価値を表す姿)です。

  

商品の価値が社会的な労働の平均だとすると、価値を重さで表すことができるものが必要です。

  

そう考えると、量や重さが表しやすく、分割と合体が簡単で、大きさによって質が変わらない金属という物質は貨幣になりやすいのです。

  

  

貨幣に備わる二つの機能

金と天秤

 

貨幣には“価値を計る機能”“価格を表す機能”の二つがあるとマルクスは言います。

  

彼は貨幣を金(ゴールド)として話をしています。

  

資本主義社会では、貨幣があるからあらゆる商品と交換できるかのように感じられます。

  

しかし実際は逆で、“あらゆる商品が価値という同じ要素を持っている”から貨幣と交換できるのです。

  

その価値とは今まで散々言ってきたように、人間が頭や体を使って労働した時間で決まります。

  

一目見ただけでは分からない抽象的な“価値”という存在。

  

ここで金を使うことで価値を計ることができるようになります。

  

【価値を計る貨幣】

例えば、労働の価値を金の重さで計るとします。

  

ある商品Aの価値は金20gの重さで表され、ある商品B金10gの重さで表されています。

  

そうすると商品Aは商品B二つ分の価値を持つことが分かります。

  

この関係がひと目で分かるように、価値を計る指標として貨幣が機能しています。

  

【価格を表す貨幣】

それに対し価格というのは、貨幣を金や銀の重さで表したものです。

  

本来重さを表す単位である“ポンド”が、価格として表されるようになったのが良い例です。

  

コーラ500mlで1ポンドと言ったように、価値を計るための金属の量が価格になります。

  

また、1ポンド=153円=1.34ドルという交換割合も表すことができます。

  

 

二つの貨幣は違うもの

上の項から“価値を計り、価格にできるもの=貨幣”と考えることができます。

 

しかしマルクスはこの“価値を計る貨幣”“価格を表す貨幣”同じ存在ではないと断言しています。

  

理由は、さまざまな要因によって価格が変動したり、価値のないものにも価格がつくことがあるからです。

  

【要因による価格の変動】

ある年のお米10kgが5,000円の価格だったとします。

  

翌年はお米の味が良く注文が殺到したため、値上げして10kgで6,000円の価格設定にしても売れ行きが下がることはありませんでした。

  

しかしその次の年のお米の味が微妙だったため、6,000円では全く売れません。

 

仕方なく4,000円まで値下げし、ようやく在庫を処理することができました…。

  

といったように、本来お米10kgで5,000円分だった労働の価値が時々によって高くなったり低くなったりしてしまうことがあります。

  

労働量は毎年同じなのに、米の味といった要因のため、価値と価格が切り離されていることが分かります。

  

  

【価値のないものにつく価格】

親切心による行為に対して、お礼や賞賛としてお金を渡される場合や、名誉毀損などで賠償金を払わされたりする場合がこれです。

  

このような場合は、価値(労働の量)がなかったとしても、形式的に価格を持つことができます。

  

現代で言うところの、安心を買うという名目の“保険”もそのひとつだと考えることができます。

  

  

まとめ

・金属が貨幣になりやすいのは、量や重さが表しやすく、分割と合体が簡単で、大きさによって質が変わらないから

・貨幣には価値を計る機能と価格を表す機能がある

・価値を計る機能と価格を表す機能は別物

・価格は時々で変動をし、価値のないものにも価格がつくこともある

  

ここまで貨幣と金属の特徴をまとめました。

  

あらゆる商品の価値を金属を使って合理化したのですね。

  

その結果、商品は価値ではなく価格で見られるようになっていきます。

  

一見便利そうですが、価格によって知らない間に損をすることもあります。

  

本来1,000円分の価値しかないバッグに、10,000円の価格が付けられていると、本当に10,000円分の労働の価値があると勘違いする場合がそれです。

  

ブランド物のバッグや衣服

 

かつては、経営者であったり製造過程に関わっていない限り労働の中身を知ることはできませんでした。

 

しかし現在では、消費者はネットを使って自ら情報を探ることができるようなり、企業は情報を発信することができるようになりました。

 

これを利用して、良い情報を発信している企業を見定め、価格ではなく価値を見ることができるようになれば、消費者はもっと得できるのではないでしょうか。

  

…というところで今回の話は終わりです!

  

ちなみに無駄遣いを否定しているワケではありません。

  

無駄遣いも誰かの所得になり経済を回すきっかけになりますからね。

  

それに無駄遣いができるってのも人生に必要な余裕だと思います。

  

その余裕を持つには、お金を貯める必要があります。

 

次回はこのお金を貯めることに関連した、“貨幣の変化と落とし穴”についてまとめていきます。

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