地獄と煉獄、そして天国を旅した男の物語~神曲~

文学
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イタリアの詩人で哲学者でもあるダンテ・アリギエリは、後世に残る代表作”神曲”を書きました。

  

この記事ではダンテが手掛けた名作である“神曲”について紹介します。

ダンテ・アリギエリ
ダンテ・アリギエリ(1265~1321年)

  

フィレンツェに生まれたダンテはしばらくの間市の政界で活躍していました。

  

1302年になると、政治的な対立によりフィレンツェ政府より死刑を宣告されてしまいます。

  

亡命生活を余儀なくされたダンテは、この亡命中に叙述詩“神曲”を完成させました。

  

神曲は、“地獄篇、煉獄篇、天国篇”の三部構成となっています。

 

  

地獄篇(Inferno:インフェルノ)

人生の指針を失い途方に暮れる主人公のダンテ。

  

ダンテはある森に迷い込み、古代ローマの詩人ウェルギリウスに出会います。

(神曲はこのウェルギリウスにダンテが導かれる形で話が進んでいきます。)

  

ウェルギリウスに案内されるがままに、地獄の門をくぐり魔王サタンのいる奥底まで降りていきます。

  

その間彼が目にするのは、永遠に続くであろう罰を受ける罪人たちでした。

ウジェーヌ・ドラクロワ作「地獄のダンテとウェルギリウス」
ウジェーヌ・ドラクロワ作「地獄のダンテとウェルギリウス」

 

神曲の中の地獄において、最も重いとされる罪は”裏切り”です。

  

かつての大天使ルシフェロは、神を裏切り反逆したことで地上に落とされてしまいます。(堕天)

  

その時の衝撃は地上にとどまらず、地下深く冥界の底まで届く程でした。

  

このときにできた穴が地獄の大穴とされています。

  

堕天使ルシフェロ(魔王サタン)は、地獄の奥底でコキュートスによって氷漬けにされることになります。

  

そして、大穴ができた衝撃で地球の反対側に盛り上がった山が煉獄山です。

神曲 押絵

  

ダンテとウェルギリウスはすり鉢状になった地獄の底にたどり着き、岩穴を抜け地球の裏側にたどり着きます。

  

そこは煉獄山の麓でした。

  

煉獄篇(Purgatorio:プルガトリオ)

煉獄は永遠の罪を償う地獄とは異なり、罪を浄化できる余地のあるものが集う場所です。

  

第一の台地から始まり、煉獄山を登るごとに七つの大罪を清めながら山頂に向かいます。

  

山頂に達した亡者には、地上の楽園(天国に最も近い場所)への道が開かれます。

神曲 煉獄山
作者不明「煉獄山」

  

ダンテは天使から七つのP(Peccato/罪)の文字を額に刻まれ、煉獄山を登っていきます。

 

刻まれた文字は順に…

・高慢・嫉妬・怒り・怠惰・貪欲・大食・色欲

 

いわゆる七つの大罪を意味し、登る毎に罪が浄化されPの文字が消えていきます。

  

道中様々な人物から家族や友人への言葉を聞き、それを伝えると約束しながら進み、遂に頂上へたどり着きます。

  

頂上より先(天国)は導き手のウェルギリウスは進むことができません

  

ウェルギリウスは古代ローマの詩人、つまりキリストが生まれる前の人物であったため、キリスト教ではない(異教徒)とみなされていたからです。

  

ここからの導き手は、煉獄山の頂上(=地上の楽園)で出会った、“ベアトリーチェ”に変わります。

  

  

天獄篇(Paradiso:パラディーゾ)

天国篇は、天動説に基づく宇宙観からなる世界です。

  

水星、金星、火星…と階層になっていて、各階層を登りながら天国へ向かいます。

  

天国への階層は、月光天水星天金星天太陽天、火星天木星天土星天恒星天原動天至高天と分かれていて、それぞれにはキリストの為に戦った戦士や人々を導いた者の魂があり、生前に功徳を積んだ者と相まみえることになります。

サンドロ・ボッティチェリ作「天へと向かうダンテとベアトリーチェ」
サンドロ・ボッティチェリ作「天へと向かうダンテとベアトリーチェ」
ジョヴァンニ・セルカンビ作「火星天の登場人物」
ジョヴァンニ・セルカンビ作「火星天の登場人物」

  

ダンテは、天国への階層で出会うローマ皇帝ユスティニアヌス、神の存在証明で名を馳せた哲学者トマス・アクィナス古代イスラエル王ソロモン達との諮問に答えながら最上層である至高天を目指していきます。

  

それぞれの諮問をクリアしたダンテは、最後の階層である至高天にたどり着きます。

  

至高天は見神の領域です。

  

聖母マリアがダンテの存在に気付いた途端、彼は目を開けられぬ程の光に包まれ、その刹那に神を見ます。

  

最後は、地獄から天国までの道のりは神と調和の為であることを悟り、物語は幕を閉じます。

ギュスターヴ・ドレ作「天国篇」
ギュスターヴ・ドレ作「天国篇」

  

天国篇を楽しむに当たっては、登場するオールスター達や宗教的な解釈などを知っている必要があります。

  

著者のダンテ自身も、読む方の身になるとこの本は難しいと言う程です。

  

しかし現代のSF作品に引けを取らない世界観で書かれた神曲は、当時の世界観や宗教観を知るだけでなく、楽しみながら学ぶ“ストーリー作品”としても映える内容であると感じます。

 

  

豆知識

神曲はイタリア語においても大きな影響を与えました。

  

13世紀頃まではイタリアではラテン語が主流でありイタリア語は俗語として扱われていました。

  

しかしこの神曲を書くに当たって、ダンテは敢えて俗語であるイタリア語を使って書きました。

  

1861年にイタリアが統一国家になったとき、ダンテの作品で使われているトスカナ方言がイタリアの書き言葉としての主流になり今でも使われています。

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