前回記事
この記事では以前概要をまとめた、【要約】行動経済学ってそういうことだったのか!【紹介】の内容を深堀りながら復習していきます。
著書で紹介されている“プロスペクト理論”や“ナッジ”などの専門用語を中心に定期的に1~2テーマずつまとめようと思います。
今回のテーマは“アンカリングとフレーミング”です。
アンカリング
前回記事では脳の機能がある特定のパターンになるとエラーを起こすことを紹介しました。
そのエラーをバイアスと言い、非合理的な解釈を生んでしまうこともまとめました。
今回はこのバイアスの一つである“アンカリング”について触れていきます。
アンカリングは“最初に与えられた情報に引きずられて、別の数字の認識がずれてしまうこと”です。
ここでひとつクイズです。
クイズ
【条件】
好きな数字を思い浮かべてから次の説明を読んでください。
【説明】
思い浮かべた数字が偶数だった場合は問題①を、数字が奇数だった場合は問題②の答えを考えてみてください。
【問題①】
・私(ブログ筆者)が1年で観る映画の数は20本より多いでしょうか?
・国連に加盟しているアフリカの国はいくつあるでしょう?
【問題②】
・私(ブログ筆者)が去年観た映画の数は150本より多いでしょうか?
・国連に加盟しているアフリカの国はいくつあるでしょう?
【答え】
アフリカが国連(AU:アフリカ連合)に加盟している国の数は55か国です。
とりあえず映画の本数と国連の数が正解かどうかは置いておいて、実際に皆さんが答えだと考えた数はどのくらいだったでしょうか?
最初に答えた謎の映画の数当てクイズと遠くない数字を答えた場合には“アンカリング”の影響を受けていると言えます。
この場合は、脳のシステム1(直観的に答えを出す機能)がシステム2(思考して答えを出す機能)よりも優位に働いてしまった結果です。
目に見えるものに引っ張られて結論を急いでしまうのですね。
全く関係のない数字に引っ張られてしまうのがこの機能の恐ろしいところです。
このアンカリングは船が錨(いかり)を下した際、錨の場所によって移動が限られてしまうことから名付けられています。
フレーミング
フレーミングは“与えられた問題に対してできるだけ情報を簡素化させ、広い枠組みではなく、狭い枠組みで答えを出してしまうこと”を言います。
ここでまたひとつクイズです。
クイズ
【条件】
次の2つの質問に対し、好きな組み合わせを選んでください。
【質問①】
A:確実に240万円もらえる
B:25%の確率で1,000万円もらえるが、75%の確率で何ももらえない
【質問②】
C:確実に750万円払う
D:75%の確率で1,000万円を払うが、25%の確率で何も支払わない
さて、どのような組み合わせを選択したでしょうか?(自分はA、Cの組み合わせでした。)
著書によると、一番選ばれやすいのはAとDだそうです。
実際はどれが得をするか、損をしないかを質問ごとに期待値を計算してみましょう。
【質問①の期待値】
・Aの期待値=240万円もらえる
240万×1.0=240万
・Bの期待値=250万円もらえる
1,000万×0.25=250万円
【質問①の期待値】
・Cの期待値=750万円支払う
750万×1.0=750
・Dの期待値=750万円支払う(Cと同じ期待値)
1,000万×0.75=750万
つまりクイズを期待値でまとめると。
・AとDの組み合わせは、240万円もらえるが750万円支払う。
・BとCの組み合わせは、250万円もらえるが750万円支払う。
ということになります。
これならどちらを選択したくなりますか?
広い枠組みでみると、BとCの組み合わせの方が損をしないことが分かりますね。
AとDを選んだ理由も損失を回避しようと考えた結果だと思います。
理詰めで考えるとBとCを選ぶべきだったのです。
これは本来であればシステム2を使い4パターン全てを考えていれば損得比べができるはずの問題です。
しかしシステム1が発動したことで、情報を簡素化して狭い枠組みで考えてしまう”フレーミング”の影響を受けていることが原因とされています。
損を避けようとして結果的に損な方を選んでしまう……。
このクイズはほんの一例ですが、生活の中には脳の非合理性によって損をしてしまうことが多くありそうです。
まとめ
・与えられた情報によって認識がずれる=アンカリング
・与えられた情報を簡素化させて処理する=フレーミング
・システム1が邪魔をして合理的な判断ができない場合がある
以上、アンカリングとフレーミングについてのまとめでした!
ネットショッピングや店先などで“○○%OFF”と表示されているのを見ると、元の価格を調べずに「あ、安いかも!」と感じて購入してしまうのも、アンカリングの影響と言えます。
現在では減ってきましたがかつては、元値が2,000円程度にも関わらず、100,000円の品が98%OFFなどと表記して二重価格で売られていたものもあったりと悪質なものも存在しました。
安易に結論を急がず、まずは一歩立ち止まって考えることが損をしない第一歩ですね。
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