ティツィアーノ・ヴェチェリオ
ティツィアーノはイタリアを代表する画家です。
絵画においてはミケランジェロやレオナルド(ダヴィンチ)をも凌駕すると言われ、“画家の王”との異名も持っています。
記録によれば100年以上生きたとされ、長い人生の中で彼は400点以上もの作品を生み出したとされています。(工房での作品を含めると500点以上。)
彼は少年時代の頃から画家を目指していました。
若かりし彼は、ヴェネツィア派の最高峰と言われるベッリーニの工房で絵の修行をし、そのときの兄弟子だったジョルジョーネと出会い助手になります。
(※ベネツィア派=15世紀後半〜16世紀にかけてベネツィア共和国周辺で栄えた流派)
助手と言っても、若い頃から卓越した技術を持っていたティツィアーノは、ジョルジョーネとほぼ同じ力量を持っていたと言われています。
しかしジョルジョーネはペストにより若くしてこの世を去ることになります。
ジョルジョーネ亡き後、未完だった彼の作品(眠れるヴィーナスや田園の奏楽など)を完成させた人物がティツィアーノです。
その後の1561年、師であるベッリーニが死去。
この頃にはベッリーニとジョルジョーネの技法を学んだティツィアーノが、ヴェネツィア派のトップとなっていました。
そんな彼の代表作のひとつが“聖母被昇天”です。
聖母被昇天
この絵は昇天していくイエス・キリストの母マリアを描いた大作です。
マリアの地上での生涯の終わり(死)に、肉体が魂とともに天に登り、神の栄光を受ける様子を表しています。
大きさはなんと7メートルもあります。
この絵は大きく分けて3つの部分で構成されています。
まずは最下部にはマリアを見送るイエスの弟子たち。(12使徒)
真ん中には昇天するマリアと天使たち。
そして最上部にはマリアを導く神の姿が描かれています。
視線を下から上へと誘導する描き方がされていることが分かります。
他の画家も聖母被昇天を題材に絵を描いています。
今回のティツィアーノの絵では昇天を見送る12使徒が描かれており、彼らは興奮した様子で描かれています。
当時のベネツィア派の画家の多くが12使徒を平穏な様子で描いていました。
それに対しティツィアーノの画風は、聖人に対するイメージを大きく変えるものだったのかもしれません。
また、昇天するマリアの周りに描かれている天使たちが三日月型で描かれています。
これ描き方と天使たちの目線によって、絵全体だけでなくその部分だけを切り取ったとしても、マリアが上に昇っていく躍動感を与えるものになっています。
この7メートルにも及ぶ巨大な絵は、ティツィアーノの名声を確固たるものにしたきっかけであると言われています。
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