フランスの細菌学者パスツールは、ワインに含まれる酒石酸と科学的に作られる酒石酸が光化学異性体であることを発見しました。
さらに発酵と腐敗が微生物によるものであることを明らかにした人物でもあります。
今回はそんなパスツールが与えた影響についての記事になります。
それまでの生命発生の考え
生命は生命を持ったものからしか発生しないのか…?
命の起源は古代ギリシャ時代から長きにわたって議論されてきましたが、17世紀頃になると自然発生説(無生物から生命が誕生するという説)は支持されなくなっていました。
レーウェンフックが顕微鏡によって液体の中や鉱石の表面などの微生物を発見すると、無機物から生命が発生したと考えられるようになり、再び自然発生説が脚光を浴びました。
自然発生説の否定
どうしてお酒が美味く作れないのだろう?
あるときパスツールは、お酒の発酵についての研究に取り組んでいました。
お酒を作る際、作り方は同じなのに味に違いが出ることを不思議に思ったからです。
顕微鏡を使ってブドウ酒の醸造過程を観察していると、液体の中にいる微生物の形に違いがあることに気づきました。
(丸い微生物がいるお酒は美味いが、細長い微生物がいるお酒は酸っぱいな…。)
微生物の中にでも丸く見える種は現在でいうところの酵母です。
彼はそのことをきっかけに発酵が微生物の働きであることを明らかにしました。(当時、酵母の存在は知られていたが、発酵とは関係がないと思われていた)
また、酢酸発酵や腐敗を引き起こすのも微生物の仕業であることを突き止めることができました。
では微生物は一体どこから発生するんだ…?
その中でも最大の謎は、その微生物はどこから現れるのかということでした。
この疑問にパスツールは、後にパスツール瓶と呼ばれることになる器具を使って実験をすることにしました。
この器具は空気の出入り口が細長い首を曲げた形をしていて、微生物が付着している空気中のゴミが液体に触れないようになっています。
このパスツール瓶を使った実験では、中に肉汁を入れて放置しどうなるかを調べました。
一度熱して殺菌したパスツール瓶内の肉汁は、いくら放置しても肉汁が腐ることはありませんでした。
対して、同じように殺菌した普通のフラスコでは次第に肉汁が腐っていきます…。
この実験結果から、微生物は自然に発生するのではなく空気中のチリなどと一緒に混入することが分かり、自然発生説は否定されていくのでした。
細菌研究のその後
パスツールは、自然発生説を否定しただけでなく微生物の様々な機能を明らかにしていきました。
長期保存に役立つ低温殺菌法(パスチャライゼーション)をはじめ、微生物や細菌学に大きく貢献しました。
また病気の原因が細菌の仕業であることや、弱毒化した病原菌を接種し病気への耐性をつける“ワクチン”についても実践し、後世に多大な影響を与えたのは言うまでもありません。
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