科学

早めの朝食が二型糖尿病のリスクを低減する

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近年、二型糖尿病の患者数は世界的に増加の一途をたどっており、2050年までに世界で13億人が糖尿病を発症する可能性があると予測されています。(Diabetes Cases Expected to More Than Double by 2050, Experts Urge Lifestyle Changesより

 

そんな中、ソルボンヌ・パリ・ノール大学の研究から、「朝食を早めに摂ることで、二型糖尿病のリスクを低減できる可能性がある」という結果が示されました。

 

夜9時より前に夕食を済ませることも、糖尿病予防につながる可能性があることも示唆され、食事の内容だけでなく、食事の時間にも注意を払うことが重要であることが判明しました。

 

今回のテーマとしてまとめていきます。

 

参考研究)

Associations of meal timing, number of eating occasions and night-time fasting duration with incidence of type 2 diabetes in the NutriNet-Santé cohort(2023/10/05)

 

 

朝食のタイミングと二型糖尿病リスクの関係

 

本研究は、フランスの大規模な疫学調査データを参考に、103,312人の成人の食事パターンを7年間にわたり追跡、食事の時間や頻度と二型糖尿病の発症率の関係が調査されました。

 

その結果、以下のような重要な傾向が見られました。

 

Associations of meal timing, number of eating occasions and night-time fasting duration with incidence of type 2 diabetes in the NutriNet-Santé cohortより

  

1. 朝食を8時前に摂ると、糖尿病のリスクが低下

研究では、朝食を8時前に摂る人は、9時以降に摂る人よりも二型糖尿病を発症する確率が低いことが確認されました。

  

これは、食事のタイミングが体内時計(サーカディアンリズム)に影響を与えるためと考えられています。

  

  

2. 夜遅い食事は糖尿病リスクを高める

また、夜9時以降に夕食を摂る人は、早めに夕食を済ませる人よりも糖尿病の発症率が高いことも明らかになりました。

  

特に夜10時以降の食事はリスクをさらに高める可能性があるため、早めの夕食を心がけることが重要としています。

  

  

3. 食事回数が多い人は糖尿病リスクが低い

さらに、研究では1日6〜7回食事を摂る人は、1日2〜3回しか食べない人よりも糖尿病のリスクが低いという結果が出ました。

  

これは、適度な間隔で食事を摂ることで、血糖値の急激な変動を防ぐ効果があるためと考えられています。

  

  

夜間の断食時間と糖尿病リスクの関係

近年、インターミッテント・ファスティング(断続的断食)が健康に良いとされ、朝食を抜く食習慣を取り入れる人も増えています。(Intermittent Fastingより

  

しかし、今回の研究では、夜間の断食時間が13時間以上の場合、朝8時前に朝食を摂らないと糖尿病のリスクが上昇する可能性があることが示されました。

 

つまり、朝食を遅らせることが必ずしも健康に良いとは限らず、逆にリスクを高める可能性があるということです。

 

このため、朝は適切なタイミングで食事を摂ることが重要であると考えられます。

 

 

なぜ食事のタイミングが重要なのか?

研究によると、食事のタイミングと体の生理機能は密接に関係していることが分かっています。

 

この背景には、「サーカディアンリズム(概日リズム)」が関与していると考えられます。(Meal Timing Regulates the Human Circadian Systemより

  

1. 体内時計と食事のリズム

サーカディアンリズムとは、体のあらゆる生理機能を24時間周期で調整する仕組みです。

 

このリズムは主に光によって調整されますが、食事のタイミングも影響を与えることが分かっています。

 

 

2. 朝食と血糖値のコントロール

朝は、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きが重要になる時間帯です。

 

Duke Healthの糖尿病専門家Mia Zhu氏は、「朝起きると体は血糖値を上げるホルモン(コルチゾール、グルカゴンなど)を分泌します。このとき朝食を摂ることで、インスリンが適切に分泌され、血糖値を安定させることができる」と説明しています。

 

逆に、朝食を抜く習慣が定着しているとホルモン分泌量が乱れ、血糖値が高くなりやすく、その結果として糖尿病のリスクが上昇する可能性があるのです。

 

このことから、国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所は糖尿病患者に対して、朝食を食べることを推奨しています。

 

 

3. 朝食を摂ることでメタボリックシンドロームのリスクも低下

また、ある研究では、朝食を毎日摂る人は、高血圧や高血糖などの「メタボリックシンドローム」のリスクが低いことも示されています。(Breakfast Frequency and Development of Metabolic Riskより

 

 

二型糖尿病予防のために

食事のタイミングを意識することは、二型糖尿病予防の一つの手段ですが、それだけでは十分ではありません。(Adult Activity: An Overviewより

   

専門家は、以下の生活習慣を取り入れることで、より効果的に糖尿病のリスクを減らせると述べています。

  

1. 適度な運動を習慣化する

• 週に150分の中強度の運動(早歩き、サイクリング、テニス、スイミング、ジョギングなど)が推奨

• 週2回の筋力トレーニングを取り入れることも重要

  

2. バランスの取れた食事を心がける

• 野菜(特に非でんぷん質のもの)、果物、良質なタンパク質、全粒穀物を積極的に摂取する

• 砂糖入り飲料や加工食品、トランス脂肪酸を含む食品は控える

   

3. 朝食を習慣化する

• 専門家曰く、朝食を食べるのが難しい場合は、少量でも良い

• ナッツ類やチーズ、ヨーグルトなど、手軽に食べられるものを取り入れると良い

    

食事のタイミングを見直し、健康的なライフスタイルを取り入れることで、二型糖尿病のリスクを軽減できる可能性があります。

    

   

まとめ

・朝8時前に朝食を摂ると、二型糖尿病のリスクが低下する

・夜9時以降の食事は糖尿病リスクを高めるため、早めの夕食が推奨される

・適度な運動とバランスの取れた食事を心がけ、健康的な生活習慣を維持することが重要

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