二型糖尿病の患者の半数以上が、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12などの必須栄養素が不足している可能性があると、新しい研究で明らかになりました。
インドIIHMR大学の調査によると、食事、代謝、特定の糖尿病治療薬の影響が、体が栄養素を吸収・利用する方法に影響を与えることが示されました。
専門家は、果物や野菜を多く摂取し、加工食品を減らすなどの生活習慣の改善が必要であると推奨しています。
今回のテーマとしてまとめます。
参考研究)
・Burden of micronutrient deficiency among patients with type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis(2025/01/29)
糖尿病患者に潜むビタミン不足

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、アメリカ人の約10人に1人が糖尿病を患っており、その約90%が二型糖尿病に分類されます。(CDC Type 2 Diabetesより)
これまでの研究でも、特にアメリカ大陸に住む糖尿病患者は栄養不足のリスクが高いことが指摘されてきました。
内分泌学、糖尿病、代謝を専門とするGül Bahtiyar医師は、「ビタミンD、マグネシウム、カルシウムなどの微量栄養素は、体の正常な機能に不可欠」と述べています。
また、遺伝的要因が栄養不足に影響することもありますが、食生活が最も重要な要因だといいます。
Bahtiyar医師は、現代のライフスタイルでは、手軽さや速さが優先されるため、栄養価の高い食品が不足しやすいと指摘します。
特に加工食品は、製造過程で必要な栄養素が失われているため、これらに頼ると栄養不足につながる可能性があることを指摘しています。
さらに、超加工食品の過剰摂取は二型糖尿病の発症リスクを高め、発症後も病状を悪化させる要因となります。
ビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12の不足

今回の研究では、世界中の132の研究から52,000人以上の糖尿病患者のデータを分析しました。
その結果、糖尿病患者の約60%がビタミンD不足であり、42%がマグネシウム不足、29%がビタミンB12不足であることが判明しました。
また、糖尿病の合併症を持つ患者の45%が複数の微量栄養素不足を抱えており、アメリカ大陸ではその割合が54%に上昇することが明らかになりました。
女性は男性よりも栄養不足のリスクが高く、49%が微量栄養素不足であると報告されています。
これに対しCleveland Clinicの管理栄養士Beth Czerwony氏は、女性はビタミンD不足になりやすいことは以前から知られていたことを述べています。
また、研究に参加した多くの人が入院患者であったことも、栄養不足の原因の一つである可能性が指摘されています。
栄養不足の背景にある要因
今回の研究を主導したDaya Krishan Mangal医師は、二型糖尿病患者の栄養不足の背景には、食事、代謝の変化、糖尿病治療薬の影響があると述べています。
糖尿病患者は血糖管理のために特定の食品を制限することがあり、それが結果的に栄養不足につながる可能性があるといいます。
例えば、二型糖尿病治療薬の「メトホルミン」はビタミンB12の吸収を妨げることが知られています。
今回の研究でも、メトホルミンを服用している二型糖尿病患者の29%がビタミンB12不足であることが示されました。
Bahtiyar医師は、ビタミンB12は代謝を助け、食べたものを効率よくエネルギーに変換する役割を持つため、不足するとさらなる栄養不足を引き起こす可能性があると警告しています。
また、心疾患、神経障害、腎疾患などの慢性疾患を抱えると、体の栄養素の吸収や利用能力が低下するため、糖尿病と合併症の関係は深いと考えられます。
加えて、高脂肪・高塩分・高糖質で栄養価の低い食事を続けると、糖尿病管理がさらに困難になるという悪循環が生まれます。
さらに、血糖値が高いと、体は余分な糖を尿とともに排出しようとするため、その過程でマグネシウムなどの栄養素も失われることが分かっています。
栄養不足の検査は必要か?

微量栄養素は、細胞レベルでの体の機能に不可欠であり、特に糖の代謝にも深く関わっています。
例えば、カルシウムとビタミンDはインスリンの分泌や抵抗性に影響を与え、マグネシウムは血糖を細胞内に運び、利用を調整する役割を持ちます。
2024年に発表された研究では、亜鉛不足が血糖代謝に関わるB細胞の機能を妨げることが示されました。
Mangal医師によると、ビタミンDやマグネシウムの検査を定期的に受けることで、栄養不足を早期に発見し、対策を講じることができるといいます。
Bahtiyar医師は、「色とりどりの果物や野菜を幅広く食べ、加工食品を減らすことが重要」と述べ、「糖尿病の栄養不足は、生活習慣の改善と健康的な食事から始まる。食事こそが最良の薬である」と強調しています。
まとめ
・二型糖尿病患者の多くがビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12不足であることが判明
・糖尿病治療薬や食事制限が栄養不足の原因となる可能性がある
・栄養不足を防ぐには、多様な食品を摂取し、健康的な食習慣を意識することが重要
コメント