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アルコールが睡眠に与える影響とは?

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お酒を飲むことは多くの人にとって、リラックスやストレス解消の手段として親しまれています。

 

中には睡眠の助けとして寝酒をする人もいるでしょう。

 

しかし、科学的にはアルコールが睡眠に与える影響は複雑で、ストレス緩和などの短期的な利点がある一方で、長期的には悪影響が懸念されています。

 

今回はそんなアルコールが睡眠に与える影響についての研究についてです。

 

参考記事)

Scientists Reveal What Alcohol Is Doing to Your Sleep(2025/01/26)

 

参考研究)

Alcohol and public health(2005/02/05)

Effects of Alcohol on Polysomnographically Recorded Sleep in Healthy Subjects(2006/08/14)

 

 

アルコールが睡眠に与える即時的な影響

 

アルコールを摂取すると、最初は鎮静効果があるため、眠りにつきやすくなることがあります。

 

特に、就寝の3時間以内にコップ3~6杯程度を摂取すると、入眠時間を短縮する効果が見られます

 

これはアルコールが脳内の神経伝達物質に影響を与え、一時的に眠気を引き起こすことが原因です。

 

お酒の席で酩酊して眠ってしまうことがあるのもこのためです。

 

しかし、この効果は一時的なものであり、夜間の睡眠全体において悪影響を及ぼす ことがわかっています。

  

特にアルコールを摂取した後、睡眠中では次のような問題が生じやすくなります。

 

• REM(急速眼球運動)睡眠の遅延および減少

• 睡眠が浅くなり、目覚める回数が増加

• 翌日の疲労感の増加

 

REM睡眠は、記憶の定着や感情の調整に重要な役割を果たします

 

しかし、アルコールによってREM睡眠が阻害されることで、これらの機能が低下する可能性があります。

 

  

アルコールがもたらす長期的な影響

 

多くの研究は、アルコールが一晩の睡眠に与える影響を調査したものですが、複数日間にわたる飲酒がどのように影響するかについては研究が少ないのが現状です。

 

一部の研究では、複数日にわたり飲酒を続けた後、飲酒をやめた初日でも睡眠の乱れが継続することが示されています。

  

このことから、繰り返される飲酒は体内のリズムや睡眠に持続的な影響を及ぼす可能性がある ことが示唆されます。

 

また、頻繁に多量のアルコールを摂取する人の場合、睡眠パターンが元に戻るまでには時間がかかることがあります。

 

 

アルコールが睡眠に影響を与えるメカニズム

 

1. GABAの増加と短期的な鎮静効果

アルコールは、脳内でGABA(ガンマアミノ酪酸)と呼ばれる神経伝達物質の作用を増強します。

 

GABAはリラックスや鎮静効果をもたらすため、アルコール摂取後に「眠気」を感じる要因の一つです。

 

しかし、この効果は短期間で消え、その後はリバウンド効果として睡眠の浅さや目覚めが増加 します。

 

 

2. アデノシンの増加と効果

アルコールは眠気を促進するアデノシンという物質のレベルを一時的に高めますが、この効果も持続しません。

 

アルコールが代謝されるとアデノシンの効果が急激に低下し、夜間に睡眠が浅くなります。(Role of Adenosine and the Orexinergic Perifornical Hypothalamus in Sleep-Promoting Effects of Ethanolより

 

 

3. サーカディアンリズムへの影響

サーカディアンリズム(体内時計)は、私たちの睡眠と覚醒のサイクルを調整しますが、アルコールはこれにも影響を与えます。

 

たとえば、メラトニンの生成が阻害される ため、夜間に深い眠りにつきにくくなります。

 

また、体温調節にも影響を及ぼし、睡眠の質を低下させる要因になります。(Circadian Preference and Sleep-Wake Regularity: Associations With Self-Report Sleep Parameters in Daytime-Working Adultsより

 

 

4. 筋肉の弛緩による気道の閉塞

アルコールは筋肉をリラックスさせるため、気道が狭まり、いびきが悪化します。これは睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性があり、同室者の睡眠にも悪影響を及ぼします。(Impact of Alcohol Consumption on Snoring and Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-analysisより

 

5. 利尿作用による夜間の目覚め

アルコールには利尿作用があるため、夜間にトイレに行く頻度が増え、睡眠が中断されやすくなります。(The diuretic action of alcohol in manより

 

 

良質な睡眠を得るために

レビューでは、アルコールに頼らず、自然な眠りを得るためには以下が重要としています。

 

1. 規則正しい睡眠スケジュールを保つ

毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計が調整されます。

 

2. 快適な睡眠環境を整える

部屋を涼しく、暗く、静かに保つことが、睡眠の質を向上させます。

 

3. リラックスする就寝前のルーチンを確立する

読書、入浴、深呼吸など、リラックス効果のある活動を行いましょう。

 

4. 午後のカフェイン摂取を制限する

カフェインは覚醒作用が長時間続くため、午後以降の摂取を控えることが重要です。

 

5. 日中の活動量を増やす

運動は体内時計を整えるのに効果的です。特に朝の光を浴びながら運動すると、さらに効果が高まります。

 

 

結論:アルコールを減らし、健康な睡眠を目指そう 

良いニュースとして、アルコールが睡眠に与える多くの悪影響は一時的なものであり、摂取量を減らすことで改善が見込めます

 

特に、飲酒の頻度が少ない場合、睡眠とサーカディアンリズムは比較的早く元に戻ります。

 

 

まとめ

・アルコールは短期的には眠りやすくするが、REM睡眠の妨害や睡眠の質低下を招く

・睡眠環境や生活習慣を改善することで、アルコールなしでも良質な睡眠を得られる

・アルコールを減らすことは、健康全体にとっても有益である

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