中国、甘粛リハビリテーションセンター病院の研究者による最新の研究によると、子どもが午後9時30分より前に就寝する習慣を持つと、腸内環境がより健康的になる可能性があることが示されました。
この調査では、睡眠パターンが腸内の微生物にどのように影響を与えるかに焦点を当てており、早寝を習慣とする子どもは、有益な腸内細菌が多く存在する一方で、有害な細菌が減少していることが分かりました。
腸と睡眠の相互関係が注目される中、この研究は子どもの健康と発達における睡眠の重要性を再認識させる結果となっています。
しかし、腸内微生物の具体的な役割については、さらなる研究が必要とされています。
以下に研究の内容をまとめていきます。
参考記事)
・Your Child’s Gut Health Benefits From an Early Bedtime, Study Suggests(2024/10/11)
参考研究)
・Characteristics of gut flora in children who go to bed early versus late(2024/10/06)
・Associations between gut microbiota and sleep: a two-sample, bidirectional Mendelian randomization study(2023/08/14)
子どもの腸内環境と早めの就寝
甘粛リハビリテーションセンター病院による小規模の研究では、午後9時30分よりも早く就寝する習慣を持つ子どもは、遅く就寝する子どもに比べて腸内環境が健康的であることが示されました。
科学者たちは、なぜそうなるのか、またその健康的に見える腸内環境が実際に健康に良い影響を与えるのかは確証していませんが、この発見は睡眠パターンと腸内環境が密接に関連していることを裏付ける証拠の一つとなっています。
例えば、最近の研究では、腸内の微生物の構成が睡眠の調節に関わっている可能性があることが示されています。
これまで、腸内細菌が睡眠に関係するという「腸→睡眠」の関係が示唆されている研究は多くありましたが、今回の研究によって「睡眠→腸」という関係があることが示されました。
つまり、睡眠パターンの変化が腸内の微生物の数や種類にも影響を与えるかもしれないということです。
睡眠が特に重要な時期である子どもたちにおいて、この関連性を探るため、医学研究者チュンメイ・マオ氏らは、88人の健康な子どもの腸内フローラと血液サンプルを調査しました。
研究は、中国北西部の都市部に住む2歳から14歳までが対象となり、2週間の期間中、半数の子どもたちは午後9時30分前に就寝し、もう半数はそれ以降に就寝しました。
睡眠の記録は、親が記録した日誌に基づいています。
親の主観的な記録によると、就寝が遅い子どもたちも、一晩あたりの睡眠時間はほぼ同じであるようでした。
これは、就寝が遅い子どもたちの方が入眠までの時間が短かったことが考えれますが、正確な理由は明らかではありません。
しかし、両グループの便サンプルを比較したところ、腸内微生物の構成、多様性、そして相対的な数に違いが見られました。
特に、午後9時30分前に就寝していた子どもたちは、様々な有益な腸内微生物の存在量が多く、逆に有害な微生物の存在量が少ない傾向にありました。
ただし、微生物を「良い」または「悪い」と簡単に分類することはできません。
例えば、バクテロイデスは、早めに就寝した子どもの腸内に多く見られる有益な細菌ですが、同時にファーミキューテスという微生物も増加しており、これは一定の割合を超えると肥満の要因となる微生物でもあります。
バクテロイデス属(genus Bacteroides)
腸内の様々な微生物がどのように相互作用しているのかは明らかではないため、科学者たちは、どの微生物群が実際に健康的かを過去の研究や経験則から推測するしかありません。
この研究の著者たちは、これらの子どもたちの腸内細菌に関連する代謝メカニズムについて、より包括的な理解は得られていないことを認めています。
しかし、今回の結果は、腸と脳が免疫や神経経路を介してつながっている可能性を支持しており、片方の変化がもう片方に影響を与える可能性を示唆しています。
まとめ
・早寝の子どもは有益な腸内微生物が多く、有害な微生物が少ない傾向が見られた
・午後9時30分前の早めの就寝は、子どもの腸内環境を健康的に保つ可能性がある
・腸内微生物が睡眠に影響を与える一方、睡眠パターンが腸内微生物の構成にも影響を与えることが示唆された
・腸と脳は免疫や神経経路を介してつながっていることが示唆され、この関係が子どもの成長後の行動や能力にも関係する可能性がある
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