甘いものの食べ過ぎ、油物の取りすぎ、食べ過ぎ、偏食……。
食事が健康に直結するというのは、これまでの数多くの研究で明らかになってきている事実です。
しかし、それがどのようなメカニズムで作用するのかは未解明な部分が多く、日々研究が進められている途中です。
今回紹介する研究も、そんな未解明な食と健康の相関性についてがテーマです。
どうやら、高脂質食と精神の安定には少なからず関係があるようです。
参考記事)
・Eating a High-Fat Diet May Increase Your Anxiety, Study Warns(2024/06/26)
参考研究)
・High-fat diet, microbiome-gut-brain axis signaling, and anxiety-like behavior in male rats(2024/05/06)
高脂質食による精神的不安
コロラド大学が行った研究によると、特定の種類の高脂肪食(主に動物製品からの飽和脂肪)は、実験用ラットの腸内微生物叢を混乱させ、行動を変えてしまうことが分かりました。
また、高脂肪食を続けたラットは、神経伝達物質の活動に関与する遺伝子に強く作用し、セロトニンの分泌過剰による不安障害を引き起こすことが示されました。
コロラド大学ボルダー校の統合生理学教授であるクリストファー・ローリー氏は、「大量の飽和脂肪を食べる人は、精神的健康への影響も考慮する必要があることを示唆している」と述べています。
社会で生活している以上、多くの人はストレスや不安を経験します。
中には、日常生活に影響を及ぼすほどの強烈な不安に苦しむ人もいます。
世界保健機関によると、世界中で推定3億人が不安障害を抱えており、すべての精神障害の中で最い精神疾患です。
これまで、不安障害は多くは、その人が置かれた環境や遺伝などの要因によって形成された感情とされ、食事の影響は十分に理解されていませんでした。
しかし、最近の研究では、高脂肪食とラットの不安障害の間に関連性が示されたこともあり、ヒトにも同じようなことが起こるのではないかと考えらはじめています。
ローリー氏ら研究チームは、ラットで最も不安の様子を示した“飽和脂肪”にフォーカスし、不安障害との関係を探りました。
研究では、成長期の雄ラットを2つのグループに分け、9週間異なる食事を与えました。
一方のグループには、約11%の脂肪を含む標準的な食事を与えました。
もう一方のグループは、主に動物製品からの飽和脂肪を特徴とする約45%の脂肪を含む食事を与えました。
これは、ヒトにおける加工肉や揚げ物など“超加工食品”に似た比率です。
研究全体を通し、食事後の糞便サンプルからラットの微生物叢の様子も観察しました。
9週間が経過した後、それぞれのグループで行動テストを実施しました。
その結果、高脂肪食のラットは体重が増えただけでなく、通常食のラットよりも腸内細菌の多様性が有意に少なかったことが報告されました。
また、高脂質食のラットは、微生物の多様性が低いことに加えて、フィルミキュート門の細菌が増加し、バクテロイデテスの細菌が減少していることが分かりました。
研究者はまた、高脂肪食グループの中でtph2、htr1a、slc6a4という3つの遺伝子の発現が上昇していることに気づきました。
これらの遺伝子は、神経伝達物質であるセロトニンの産生とシグナル伝達に関与しています。
幸せホルモンとして有名なセロトニンですが、身体においては創傷治癒や消化などのプロセスにおいて重要な役割を果たしています。
一方、うつ病などの精神面おけるセロトニンの役割は未解明な点が多いです。
セロトニンが過剰に分泌されると、不安のような行動を引き起こす可能性があることも分かっています。
ローリー氏は、「高脂肪食だけで脳内のこれらの遺伝子の発現を変える可能性があると考えられるのは異様なことだ」と述べています。
また、魚油やオリーブオイルなどの特定の脂肪は、抗炎症作用や脳増強効果もあるため、動物性の脂肪のうちどれがどれが健康的でどれが害なのかを全てまとめることは困難です。
しかし断言できるのは、工業的に作られた油や揚げ物、その他ハムやソーセージなどの超加工食品などは、変質した脂質成分や酸化物質、化学物質によって確実に体を害するということです。
うまい話には裏があるように、うまい食べ物にもまた裏があることは頭のどこかにとどめておく必要があるみたいですね。
この研究はBiological Researchにて詳細を確認することができます。
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