「酒は百薬の長」、「酒は飲んでも呑まれるな」、「酒は憂いの玉箒」といった言葉が古くからあるように、お酒は人類と共に歴史を築いてきた飲み物です。
しかし近年の研究では、少量のアルコールでさえがんや脳卒中などを含めた死亡リスクの増加があるとし、ほんの少しでも飲まないに越したことはないという結果が示されています。
・リンク切れ用の論文タイトル↓
とは言っても明日から飲酒の一切を止めるということは難しいです。
ニュー・サウス・ウェールズ大学は、そんな飲酒量を減らすためにはどのようなアプローチが良いのかを研究しました。
その結果、飲酒から遠ざかるためのある手段が見えてきました。
今回の記事は、飲酒を減らすための方法についての研究紹介です。
参考記事)
・There’s One Easy Strategy to Reduce Alcohol Intake, Scientists Say(2023/12/14)
参考研究)
リスクを知り、飲んだものを数える
ニュー・サウス・ウェールズ大学の研究者らは、人々の飲酒量を減らすための効果的な方法を発見しました。
それは、“飲酒に伴うがんリスクの増加を強調し、飲んだものの数を全て数えること”です。
「理由付け」と「具体的な方法」を組み合わせることで、集団の健康増進に役立つ可能性があることが判明しました。
この研究は3 つのアンケートの回答によって構成されています。
参加者7,995人が最初のアンケートに回答し、そのうち4,588人が 3 週間後に 2 回目の調査を完了し、さらにそのうち2,687人がその3 週間後の最終調査までを完了しました。
参加者はいくつかのグループに分かれ、飲酒に関するさまざまな広告やメッセージ、防衛手段を提示させられました。
・ 対照条件
・「飲酒を減らすべき理由」が示されたテレビ広告
・「減らす方法」を示したメッセージ(Protective Behavioral Strategies:防御行動戦略)
飲み物の数を数え続ける、飲む量を決めてそれを守る……など
・各PBSメッセージと個別に組み合わされたテレビ広告
その結果、
「テレビ広告」および「テレビ広告 + 飲み物の数を記録するPBS」条件に割り当てられた参加者は、アルコール摂取量を減らそうとする試みが大幅に増加したと報告されました。
また、「テレビ広告 + 飲み物の数を記録するPBS」条件に割り当てられた参加者のみが、アルコール摂取量の大幅な減少を示しました(1週間あたり-0.87 杯)。
ジョージ・グローバル・ヘルス研究所の経済学者で心理学者のシモーネ・ペティグリュー氏は、この調査結果が発表された際、「アルコールとがんに関する情報と、飲み物を数えるという特定の実際的な行動を組み合わせると、飲酒者が飲酒量を減らす結果となることが分かった」と述べています。
世界保健機関は、世界中のでみられる早死のリスクの最大7%がアルコール摂取に起因しているとしています。
飲酒者に健康リスクをより認識させることは、こういった飲酒による健康被害問題に取り組むひとつの方法です。
保健当局は、酒を入手しにくくし、価格を高くする方法も考えているようですが、「最終的にはアルコールに関する行動が長期的に変化するかどうかは個人の選択によって決まる」とし、個人がコントロールすることが大切としています。
この研究は、参加者が“オーストラリアの飲酒大衆を人口統計学的に広く代表する”ように選ばれています。
民族性、食生活の違いなど国によって同じデータが当てはまるかは、今後の研究によって明らかにしていく必要がある点は注意が必要です。
しかし、飲酒の量を減らしたい場合は、試す価値のある選択肢の1つかもしれません。
この研究の詳細は、Addictive Behaviorsにて確認できます。
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