心理学

【心理学の歴史⑨】学習は必ずしも経験にあらず 〜バンデューラの観察学習実験〜

心理学

【前回記事】

 

この記事は、著書“心理学をつくった実験30”を参考に、”パヴロフの犬”や”ミルグラム服従実験”など心理学の基礎となった実験について紹介します。

   

「あの心理学はこういった実験がもとになっているんだ!」という面白さや、実験を通して新たな知見を見つけてもらえるようまとめていこうと思います。

   

今回のテーマは、“バンデューラの観察学習実験”です。

  

     

      

バンデューラの社会的学習理論

【本書より引用(要約)】

アルバート・バンデューラ(1925~2021年)bandura@stanford.edu より

 

スタンフォード大学の心理学教授を務めたアルバート・バンデューラ氏は、当時主流だった行動主義に新たな視点を加えた人物です。

 

「自分ならできる」という“自己効力感”や「他者の経験を観察、模倣することで学習する」という“社会的学習理論”を提唱した人物でもあります。

 

それまでの行動主義では、学習する個体(人や動物)は、自分で体験して試行錯誤することで学習するという考え方がありました。

 

しかしバンデューラ氏が行った実験では、“学習は、必ずしも自分で体験する必要がない”ということが示されました。

 

今回はそんな彼が行った“社会的学習理論”についての実験を紹介します。

 

 

バンデューラの観察学習実験

この実験は、4歳児の男女44名を対象に行われました。

 

子どもたちは3つのグループに分けられ、5分ほどの短いフィルムを見せられました。

  

フィルムの前半は、3つのグループ全てが同じ映像を流しました。

 

フィルムの内容は、ボボドールと呼ばれる大人ほどの背丈がある人形に対し、一人の成人がそれを罵倒し、殴り、木槌などで頭部を叩くなどの攻撃的なものでした。

 

ボボ人形実験 Wikipediaより画像引用

 

この攻撃シーンの後の映像は、3つのグループにそれぞれ別の内容を流します。

 

【①成人を称賛する映像=報酬条件】

前半の映像の後で別の成人が入室し、ボボドールに攻撃を加えていた人物に対し、「あなたがチャンピオンです、素晴らしい攻撃力だ」と称賛し、ジュースやお菓子などの報酬のようなものだ与える

 

【②成人を注意する映像=罰条件】

前半の映像の後で別の成人が入室し、ボボドールに攻撃を加えていた人物に対し、「弱いものいじめをしてはいけない、次やったらただでは済まさないぞ」と注意をする

 

【③称賛も注意もない映像=比較対象条件】

称賛も注意もない映像が流れる

 

これら3パターンの映像が流れた後、子どもたちは別の実験室に連れてゆかれました。

 

その実験室には、映像と同じようなボボドールや様々な玩具が用意されており、子どもたちは「自由に遊んでよい」と告げられます。

 

実験者は別の部屋で子どもたちの様子を観察し、攻撃的な行動が出現するかどうかを記録しました。

 

以下の図は、その結果をグラフにしたものです。

 

 

男女差は見られましたが、攻撃行動が多い順に、報酬条件→比較対象条件→罰条件となっています。

 

私たちの感覚からすれば、そんなこと当たり前のことだろうと感じます。

 

しかし行動主義が優位だったこの時代、報酬や罰を実際に受けていないのに映像を見ただけで学習するということは、心理学に新たな視点を与えるものだったのです。

 

 

“認知”の発見

この実験から、パヴロフの犬で見られたメトロノームの音によって唾液を出す(刺激→反応)という一連のプロセスに“認知”が入り込む余地があることが分かりました。

 

つまり、刺激→認知→反応(行動)という過程が踏まれ、この“認知”が重要な役割を担っていることが分かりました。

 

現在でも、暴力的なシーンを含む映像作品やゲームが子どもに影響があるのではないかと物議を呼ぶことがよくあります。

 

その根底には、バンドゥーラは発見した“認知”という概念が大きく関係しているのです。

 

 

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