鼻を通るツンとした刺激、そして新緑を思わせる爽やかな香り……。
時にはその風味に涙を浮かべる人もいます。
そう、わさびです。
お寿司や刺し身のアクセントとして欠かせないこの刺激的な香辛野草ですが、実はその刺激に含まれる成分には興味深い作用があるという研究結果が報告されました。
今回はそんなわさびに関する研究のお話です。
参考記事)
・Wasabi Boosts Cognitive Ability in Older People, Study Shows(2023/11/03)
参考研究)
・Oxidative stress predicts cognitive decline with aging in healthy adults: an observational study(2018/01/16)
・Anti-Oxidant and Anti-Hypercholesterolemic Activities of Wasabia japonica(2008/04/28)
わさびの成分(6-MSITC)と認知機能
人間環境大学の野内類教授ら研究チームは10月、わさびが60歳以上の一部の認知機能を改善するという研究結果を発表しました。
研究では、二重盲検ランダム化対照法を使用し、60歳以上の成人72人を対象として12週間の調査を実施しました。
調査では、72 人の高齢者が6-MSITC(わさびに含まれる認知機能と関係があると思われる成分)グループまたはプラセボグループにランダムに割り当てられました。
参加者には、サプリメント(6-MSITCまたはプラセボ)を12週間摂取するよう依頼しました。
介入前後、実行機能、エピソード記憶、処理速度、作業記憶、注意力など幅広い認知パフォーマンスのチェックをしました。
その結果、6-MSITC グループは、プラセボグループと比較して、作業記憶およびエピソード記憶のパフォーマンスの大幅な改善を示しました。
ただし、推論、注意力、処理速度など認知能力の領域では大きな改善は見られませんでした。
これらのことから、わさびと6-MSITCが、記憶機能に特に重要な脳の海馬部分に影響を与えている可能性があると考えています。
この研究は、6-MSITC が高齢者の作業記憶とエピソード記憶を強化する可能性があるという科学的証拠を示す初めての研究です。
この研究では、抗酸化作用や抗炎症作用のバイオマーカーは測定されていないため、わさびが持つ効果と、なぜそのような効果があるのかについては仮説を立てることしかできません。
メカニズムは完全に解明されてはいないものの、6-MSITCを含むわさびと記憶機能の向上との間に明らかな関連性があることが示されています。
研究チームは現在、生物学的および分子レベルで何が起こっているのかをさらに詳しく調べる方針です。
研究の詳細はNutrients誌にて確認できます。
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