以前、「義歯や歯科インプラントではなく“歯の再生”の研究」にて、歯の再生に関する研究を紹介しました。
研究のまとめ記事では、マウスに子宮感作関連遺伝子(USAG-1)に対する中和抗体を投与することによって、歯の形成が回復することを発見したことが記されていました。
今回は。実験段階だったのこの新薬が、ヒトに対しても使用可能になるかもしれないという旨の研究の紹介です。
参考記事)
・A Drug For Regrowing Teeth Could Be Available Within The Next Decade(2023/01)
・World’s 1st ‘tooth regrowth’ medicine moves toward clinical trials in Japan(2023/06/12)
参考研究)
・Advances in tooth agenesis and tooth regeneration(2023/08/11)
歯の再生に向けての臨床試験開始
2024年7月歯の再生医療に関わる分野で、薬による歯の生え変わりの臨床試験が開始される予定であることが発表されました。
この臨床試験が成功すれば、2030年までに治療薬が利用可能になることが予測されています。
臨床試験を担当するのは、北野病院医学研究チームです。
臨床試験は入試や大人の歯が生えない症状を持つ無歯症の患者を対象としています。
疾患を持つ幼児が主な対象となりますが、結果によっては歯周病によって歯が抜けてしまった人など一般的な歯の問題を抱えている人に使用できるようになるとしています。
過去の研究では、USAG-1と呼ばれる特定の遺伝子とマウスの歯の成長制限との関連を発見し、USAG-1の発現を阻害することで歯が生え変わるシステムを発見しました。
それらの研究では、マウスとフレットにおいては重篤な副作用を引き起こさず、安全にUSAG-1の活性の一部をブロックする抗体が発見され、歯の成長が誘導される結果を得ることができました。
次はこれがヒトに応用できるかどうかです。
現時点では、乳歯、永久歯に変わる第三の歯を生み出す可能性はあるとされています。
現在でもインプラントなど歯の代用品でも健康的に物が噛めることは可能です。
この歯の生え変わりの研究の利点は、骨形態形成タンパク質(BMP)シグナル伝達という過程を通じて、歯の成長が自然な方法で引き起こされることにあります。
身体への侵襲性がなく、幹細胞の複雑な操作を必要とせず、私達の体が自然に歯の生え変わりを果たすことができます。
北野病院歯科口腔外科の主任部長である高橋克(タカハシ マサル)氏は朝日新聞の取材に対し、「新しい歯を生やすというアイデアは、歯科医師なら誰もが夢見ることです。私は大学院生の頃からこの研究に取り組んできました。実現の可能性は高いでしょう」と述べています。
また、関係する内容の特集がされたこともあるので、参考までに動画リンクを紹介しておきます。(外部再生は許可されていなかったので、リンクにて失礼します。)
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