皆さんは“フードスワンプ”という言葉を聞いたことがありますか?
食べ物の沼と訳されるこの状態が深刻な健康被害をもたらすとして、研究者たちは警鐘を鳴らしています。
食事を購入することが限られた地域で起こりうるこの現象。
今回はそんな食と健康についてのお話です。
参考記事)
・‘Food Swamps’: Scientists Explain The Health Risks of Living Inside Them
(2023/06/07)
参考研究)
・Association of Food Deserts and Food Swamps With Obesity-Related Cancer Mortality in the US(2023/05/04)
フードスワンプと健康被害
フードスワンプに似た言葉に“フードデザート”があります。
食べ物の砂漠と直訳できるフードデザートですが。
これは、徒歩圏内にアクセスできる食料品店が少ない、またはないとされる地域のことをさします。
食料品店がないことを表すのではなく、新鮮な果物や野菜を取り扱っているような、スーパーマーケットや健康的な食事を摂取できるレストランなどがないことも含まれます。
その代わりに、簡単にテイクアウトできるファストフードなどが建ち並び、健康的な食事が限られてしまうことを“フードスワンプ ”などと呼ばれています。
アメリカで行われた最新の研究では、全米に広がる食の不公平さは、乳がん、大腸がん、膵臓がんなど肥満に関係するがんのリスクの上昇につながることが示されました。
米国の裕福な白人居住区と貧しい黒人居住区を比べると、裕福な居住区ではスーパーマーケットが3~4件ほど多いことが明らかになっています。
また、公共交通機関が不足している場合、後者が手頃な価格の生鮮食品を選ぶことも制限されます。
一方、オーストラリアでは、自動車に依存するシドニー西部の多くの郊外に飲食店が全くなく、あってもその84%がファストフードでした。
このような地域では、肥満、糖尿病、心血管疾患などの慢性疾患の割合が非常に高いことが分かっています。
ジョージア州オーガスタ大学が率いる研究チームは、生鮮食料品店の有無が米国市民の健康にどのような影響を与えるのかをより明確に把握するために調査を行いました。
過去10年間の国民健康データを、ほぼ同じ時期の米国農務省食料環境のデータと照らし合わせたところ、およそ13種類ものがんが肥満と関連しており、米国におけるがん全体のおよそ40%を占めることが分かりました。
調査の対象となった3,038の地域(米国の96.7%)のうち、肥満に関連するがんの死亡率が高い地域は、高齢者、黒人住民、低所得者層の割合が高く、がん以外にも糖尿病や肥満のリスクも高いことが分かりました。
全体として、健康的な食べ物の選択肢が豊富な地域に進む人に比べてそうでない地域の住民は、肥満に起因するがんでの死亡率が77%高いことが示されました。
またこういったフードスランプに陥った地域の民族的背景や貧困率、例なども考慮した上でも、このリスク増加は高く、がんに起因した死亡率は30%も高いことが判明しました。
研究者らは、「郵便番号や近隣の環境は、DNAと同じように健康状態に影響を及ぼす可能性があることが認識されつつあります」とコメントし、住む場所や選択の余地が人々の健康を形成することを伝えています。
肥満や癌の原因は複雑であり、食事だけが、そのリスクを高めるわけではありません。
しかし、車を持たない人が多い地域での交通機関の整備など、健康的な食品へのアクセスしやすくすることは、健康格差をなくすための効果的な手段であると考えられます。
まとめ
・不健康な食品にばかりにしかアクセスできない地域がある
・こういった地域では肥満に関連した病気のリスクが高い
・健康な食品にアクセスできるように整備することは健康格差を少なくする手段となる
日本においても限界集落などでは、スーパーマーケットなどがなく、車による出張コンビニなどによって生活が成り立っている地域もあります。
アクセスできる商品が限られるということは、その分だけ健康的な食料も限られるということでもあります。
全ての地域が公平に健康食品を買い求めるようになるのはかなり難しいことですが、こういったインフラを整えることで地域外から人の流入を見込めるきっかけになったりもします。
田舎でスローライフを楽しみたいと考えている人でも、スーパーマーケットなどのアクセスが悪いことによって行動しにくかったりすることも考えられます。
地域起こしの一環として、こういう視点を持っておくのもありかもしれませんね。
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