日本において、コーヒーに砂糖やミルクを加えるのは人気の飲まれ方です。
抹茶やホイップクリームなどを混ぜてスイーツのように飲むこともよくあります。
最近ではコーヒーの新しい飲み方として塩を入れることが、ライフハックの一つとして広がっています。
今回はそんなコーヒー+塩についてのお話。
参考記事と研究からまとめていきます。
参考記事)
・People Are Adding Salt to Their Morning Coffee For a Rather Bizarre Reason(2023.5.3)
参考研究)
・The Influence of Sodium Salts on Binary Mixtures of Bitter-tasting Compounds(2004.6.1)
コーヒー+塩=うま味
コーヒー大国ベトナムでは、古くからコーヒーに塩を入れて飲む習慣があります。
日本ではあまり馴染みのない習慣ではありますが、科学的な視点から見てみると、コーヒーのうま味を引き出すのには効果的であることが分かっています。
塩化ナトリウムが苦味を抑えることは、人類の歴史を通じて知られています。
例えばナスを塩漬けにすることで苦味やえぐみを抑えることができたり、芽キャベツの苦味を減らすための一般的な手法でもあります。
1995年に発表された研究では、塩が苦味を隠すのに効果的であることが示されました。
研究で、甘い化合物と苦い化合物を混合させた溶液に塩を加えて味を確認すると、混合物の味が甘くなり苦味が少なくなることが分かりました。
逆に、苦味成分は塩の風味を抑制することはなかったことも示されました。
これは、塩が人間の舌に存在する上皮ナトリウムチャネル(またはENaC)に作用するものと考えられています。
ENaCは、低レベルの塩化ナトリウムを味わうことができる一方で、高濃度の塩化ナトリウムを感知した場合には、酸味と苦味の受容体にも影響し、不快な味を構成するとされています。
これは一度に塩分を過剰に摂取することがないように、人体に備えられた防衛機能と考えられています。
コーヒーの苦味は、焙煎した際に形成されるクロロゲン酸ラクトンやフェニルインダンと呼ばれる化合物が由来です。
こういった成分が多く含まれ飲みにくいと感じた場合は、ひとつまみの塩を入れることで苦味が緩和され、コーヒーの味や香りを楽しむことができると同時に、コーヒーに含まれる抗酸化作用も享受することができます。
いつものコーヒーの味に飽きてきた場合や何か変化を加えた場合には、是非ともやってみる価値がありそうです。
ちなみにこのコーヒーの苦味成分の緩和は、第二次世界大戦中の海軍兵士の間では既に知られていたそうです。
海水の濾過装置の性能が最低限であった頃、浄水された水の中に塩分が混じることが普通でした。
この水を使って淹れたコーヒーは、普通のコーヒーと比べてまろやかな味を感じたと報告されています。
また、スウェーデンの北部では、塩漬けにした肉やチーズをコーヒーに入れて飲む地域もあるなど、世界各国ではコーヒーを楽しむために、いろんな工夫がされていたことが分かります。
今後日本でも、コーヒーと塩の比率やバリエーションが増えていくことで、色んな味のコーヒーが楽しめるようになるかもしれませんね。
まとめ
・コーヒーに塩を入れることで苦みが打ち消され、うま味や風味が際立つ
・舌に存在する塩(ナトリウム)の受容体に作用することが原因
・多すぎる塩は苦味や酸味を誘発するが、少量の塩は苦味を抑える
コーヒーに塩を加えることは今までやったことがない組み合わせですが、味を楽しむツールの一つとして良さそうです。
甘いコーヒーが苦手な人や、焙煎をしすぎたコーヒーになってしまったような状況でも塩コーヒーは役立ちそうです。
今手元に岩塩しかないのですが、少しずつコーヒーに入れて飲み比べようと思います。
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