食べすぎは良くないという認識は、世界各国で共通のものとなっている昨今。
カロリーの多い食事を与えられたマウスは、うつ病、不安神経症、アルツハイマー病の兆候を示すことも明らかになっています。
さらに、カロリーが多い(高脂肪の)食事は、食べることに関する脳の調節機能をも壊す危険性があることが最新の研究で明らかになりました。
今回は、2023年2月1日にScience Alartに掲載された記事、“High-Fat Diets May Break The Brain’s Ability to Regulate Calories(高脂肪の食事は、脳のカロリー調節機能を破壊する可能性がある)”をまとめていきます。
参考論文)Brainstem astrocytes control homeostatic regulation of caloric intake2023年1月25日
高脂肪食とアストロサイト
この研究では、ラットに対して、脂肪とカロリーの高い食事を長期間与え、脳や腸にどのような反応が見られたのかを確認しました。
その結果、脳と腸の間のシグナル伝達が混乱し、カロリー消費を、本来のように調節できなくなるといった反応が見られました。
この調節機能の鍵は、星状細胞と呼ばれる脳内の星型の細胞にあります。
アストロサイトとも呼ばれるこの細胞は、ヒトの大脳皮質に存在する細胞で、ほとんど増殖することがありません。
神経細胞への栄養補給や、神経細胞の活動を調節する機能があります。
胃や腸に対しては、大量の脂肪とカロリーが消費されると、食べ物の摂取にブレーキをかける働きがあります。
アストロサイトとカロリー調節機能
論文を手がけたKirsteen N. Browning教授はこのように述べています。
「時間の経過とともにアストロサイトは高脂肪食品に対して鈍感になるようだ
高脂肪、高カロリーの食事を10日〜14日食べたラットは、アストロサイトが反応しなくなり、カロリー摂取を調節する脳機能が失われたようである
これは胃へのシグナル伝達を阻害し、胃が空になるのを遅らせているのだろう」
本来このシグナルのおかげで、胃の膨張や収縮が起こり、消化が行われます。
シグナルが鈍くなることは、適切な消化が行われないということになります。
適切な消化が行われないということは、腸での吸収も不安定なものになり、その結果、余分な脂肪の蓄積や食事のタイミングが制御できないなどの不調が起こります。
ラットでの実験
研究で使用されたラット達は、1、3、5または14日間、高脂肪、高カロリーな食事と標準的な対照食を与えられました。
その過程で、食事の摂取量や体重の記録、アストロサイトを含む特定の神経回路を監視しました。
アストロサイトの神経伝達異常は、高脂肪食を摂取した3日〜5日から起こり始めました。
これは、高脂肪食を1〜2週間与え続けたラットに起こったことと関連していることを発見しました。
アストロサイトが腸内で起こることをどのように制御しているのかは正確には分かっていませんが、何かしらの関係性があることは明らかです。
これに対しBrowning教授はこう述べています。
「アストロサイトの活動とシグナル伝達機能の喪失は、過食の原因なのか、それとも過食に反応して起こることなのかはまだ分かっていない
カロリー摂取量を調整する機能が失われた脳を再活性化することが可能かどうかを知りたいと考えている」
また、この研究ではラットの食生活のみを分析しましたが、同じ事が人間でも当てはまる理由は十分にあると述べられています。
この過食に対する脳の反応から、複雑な中枢メカニズムについて発見することで、将来、肥満を減らす方法を開発し、ヒトやその他の生物が健康で生きる術を増やすきっかけとなるかもしれません。
まとめ
・高脂肪、高カロリー食は脳と腸のシグナル伝達に悪い影響を及ぼす
・シグナル伝達の不調は、食事の調整機能や消化活動の不調に繋がる
・これが原因で、肥満、うつ病、不安神経症、アルツハイマー病のリスクが上がる
見た目が悪い、食費がかさむ、健康に悪いなどなど、食事中のカロリーを制限する理由はたくさんありますが、今回の高脂肪食による脳への影響を考えるとさらに控えたくなりますね。
とは言っても、高脂肪食には美味しいものがたくさんあります。
それらを全部絶つということは、食の幸せを捨てると言うことに近いことでもあります。
良くない食事を習慣ことがダメなのであって、節度を持って食べることは、心の平穏を保つためには悪くないことだと思っています。
危険も知りつつ、上手く付き合っていける、食生活ができるよう心がけていくと良いかもしれませんね。
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