以前まとめたオートファジーに関連して、最新の研究から明らかになった内容をまとめていきます。
今回はオートファジーと髪の毛の成長の関係です。
参考にしたのは、Cell Reportsに掲載されていた「Stimulation of Hair Growth by Small Molecules that Activate Autophagy」と言う研究です。
“オートファジーを刺激する分子によって発毛も刺激される”というタイトル通り、オートファジーと発毛の関係を調べています。。
具体的には老マウスにオートファジーの誘導を促す薬剤を投薬し、その変化を調べるといったものでした。
では研究の結論から見ていきます。
結論=オートファジーによって抜け毛が減るかもしれない
オートファジー誘導代謝物である“α-KB(アルファ-ケト酪酸)”や“α-KG(アルファ-ケトグルタル酸)”を投与された老マウスは、脱毛しにくくなっているという結果が見られました。
マウスでの実験であるため、ヒトにおける反応は差異があるものと考えられますが、ある程度効果も見られると思います。
もう一つ、他の文献を見ていて興味深かったものがもう一つ…。
実験方法
毛包細胞休止期のマウスの背中を剃り、ミノキシジル(Control)とα-KGをそれぞれ別のマウスに散布。
一日おきに散布し直しながら様子を見ていきました。
その結果、39日目にはα-KGを散布したマウスの背中にはしっかりとした毛が生えていることが分かります。
ヘマトキシリンやエオシン、Ki-67などで皮膚の切片などを染色したところ、Controlしたマウスと比べても、細胞の増殖や新しい毛包の形成なども見られることが分かりました。
↓(Control図の上段、α-KG図の下段)
またやオリゴマイシン、メトフォルミンなどオートファジーを誘導する薬剤でも同様の効果が得られています。(それぞれ23~37日間で効果あり)
詳しく知りたい方は「Stimulation of Hair Growth by Small Molecules that Activate Autophagy」にて…!
オートファジーと肌再生
また、関連研究を見ていて興味深かった内容も併せて紹介します。
参考にしたのは2012年にベルン大学薬理学研究所教授のSouzan Salemi氏らによる「Autophagy is required for self-renewal and differentiation of adult human stem cells」という研究です。
“オートファジーは成体幹細胞の分化と再生に必要”というタイトルの通り、オートファジーと幹細胞の関係を調べた研究です。
結論としては、オートファジーは肌における表皮や真皮幹細胞の再生や文化に必要なことも示唆されました。
このことについてはまた機会があったら取り上げたいと思います。
最後に
脱毛の悩みは根深いものです。
動物実験の結果、毛が抜けにくくなる仕組みを解明できたなら有り難い話しですね。
現時点でオートファジーを発現させるとすると、メトフォルミンなどを薬の形で摂取したり、空腹を感じる時間を作る(断食をする)などをする必要があるとされています。
前回記事でもプチ断食(16時間断食)について紹介しましたが、科学的に十分な検証が進んでいない分野でもあるので、不調をきたす可能性に注意が必要です。
ちなみに「メトホルミンで病気の治療をしている人は長生き」とよく言われますが、オートファジー誘導作用が関係しているとも考えられています。
これらオートファジー誘導作用を上手く活用できたら、新たなアンチエイジングサプリが生まれるのでは…?(もうあるのかな?)
参考)
Stimulation of Hair Growth by Small Molecules that Activate Autophagy 2019年
Autophagy maintains the metabolism and function of young and old stem cells 2017年
Study shows type 2 diabetics can live longer than people without the disease 2014年
Autophagy is required for self-renewal and differentiation of adult human stem cells 2012年
Autophagy in the pathogenesis of disease 2008年
その他付随文献
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