子どもの模範となり、押し付けはしない~ヤスパース①~

哲学
哲学教育
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キルケゴールの実存主義に大きな影響を受けた人物がいます。

 

ドイツの哲学者カール・ヤスパースです。

 

政治評論家としての一面も持ち合わせた彼は、第二次世界大戦時のユダヤ人迫害など社会的な情勢も踏まえた上で実存主義を確固たるものにしていきます。

 

今回はそんなヤスパースが考えた“実存”に入る前に、彼の人生と彼が受けた家庭での教育について触れていきます。

 

カール・ヤスパース(1883~1969年)

 

青年期

1883年、カール・ヤスパースは西ドイツのオルデンブルクにて生まれました。

 

銀行家である父の下で育った彼は、体は病弱で気の弱い性格ながらも、他の誰にも無い芯の通った考えの持ち主でした。

 

そんな彼の性格を象徴するような出来事をひとつ紹介します。

 

彼がギムナジウム(ヨーロッパの教育機関)に通っていた頃の話です。

 

体調不良が理由で医師から体を冷やさないように指導されていた彼は、学校の体操の時間も先生の命令に従わず服を着たままでした。

 

軍隊的に指導をしていた体操の教師は、命令を聞かないヤスパースに対して怒りを示しました。

 

それでも言うことを聞かないヤスパースに、遂に体操の教師は彼をギムナジウム校長に訴えました。

 

校長は校長で、

「彼のように教師の命令に従わなかった例はかつて無かった。」

と怒り、ヤスパースの父が勤める銀行にまで押し入って苦情を述べたと言います。

 

これを聞いた父はこう言いました。

「軍隊には無条件の服従が必要であるが、学校では服従に条件があるはずだ。

その条件は教師は生徒から尊敬を受けている場合である

教える立場としての尊敬を得ていない教師が、いくら生徒の間違いを指摘したところで言うことは聞かないだろう。」

  

と述べました。

 

ベルリン「ギムナジウム」

 

 

父の指導方針

病弱で気弱という学校における大きなハンデを背負ったヤスパースが、なぜこのような芯の強い意志を持つことができたのか。

 

それは彼の父の教育方針に秘密があります。

 

【①子どもの模範となる】

第一の教育方針は、“自らが模範になって行動すること”でした。

 

子に勉強させたいときは自ら勉強する姿を見せ、子に本を読ませたいときは自ら本を読む姿を見せる

 

考える子になって欲しいときは、敢えて答えを出さずに答えまでの道筋を二人で考える

 

正しい生き方をして欲しいときは自らも正しいと思える行動をする

 

現代の教育書では、子を伸ばす親が持っている習慣の一つとされている内容です。

 

ヤスパースの父は見て考えさせて学ばせる教育を意識していたようです。

 

【②押し付けはしない】

第二の教育方針は、“理解させてから行動させること”でした。

 

父親の権威でもって子に物事を強制させるようなことはしなかったそうです。

 

それでもヤスパースは必要なことを自ら行動するようになります。

 

なぜ今勉強が必要なのか、なぜ学校に行かなければいけないのか、なぜ運動をしたほうが良いのか…。

 

父は、“なぜそのようなことをするのか”を充分に理解させることに最も重きを置いたのです。

 

ある大臣夫人と子どもの教育についての話になったときのこと…。

 

夫人は、

「やはり子どもには絶対服従させなければならないわよね。」

 

という意見に対し父は、

「服従は子どもが理解し納得したものでなければならない。」

 

と答えたといいます。

 


以上の考えからヤスパース父の教育方針が如何に洗練されたものだったのかが分かります。

 

その他、誠実さや忠実さ、忍耐や諦めなど様々な教育を施したことがヤスパース自身から語られていますが、特に重要なものは上の2つに集約されています。

 

このことを知ると、青年期のヤスパースが体操のときに命令に従わず服を脱がなかった理由や、校長が抗議した際の父の毅然とした対応も納得できます。

 

現代でも、子どもには「勉強しなさい」「勉強しないと将来困るよ」などと言いながら、自分はスマホをいじったりテレビを見たり…。

 

全て家庭がそうではありませんが、子どもの勉強に困っている家庭がもつ特徴のひとつでもあります。

 

逆に親が読書好きなら子も自然に本を読み、国語(全教科に通ずる)が得意になるパターンも多いです。

 

いずれも自分で行動したことには理由を後付けしたとしても納得させたいという心理が働きます。

 

自分で行動した悪いことにも納得できるだけの理由を付けますし良いことにも理由を付けます。

 

しかし強制された場合の多くは、終わらせることが目的になってしまい何の理由も付いてきません。

 

ましてや納得なんてもっての他です。

 

自分から行動させるきっかけが一番大切なのです。

 

興味の無いものは興味をもったタイミングで良い。

 

いつか知りたくなったとき、自分で学ぶことこそ真の勉強になる…。

 

ヤスパースの父もこれらを考え抜いた上での教育方針だったのだと感じました。

 

ヤスパース

 

記事は一旦ここで区切りとします。

 

ほとんど父の話になってしまいましたね。

 

次回の記事ではヤスパースの生涯に触れ、彼の実存主義の土台を作っていきます。

 

最後に…

今回は子育て教育系の内容に寄ってしまいましたね。

 

子ども対して“こう接した方がいい!”と分かっていても行動できるかは別です。

 

ヤスパースの父は一貫して立派な父だったように感じます。

 

彼の全てを知るわけではいませんでが、参考になると思ったので記事にさせてもらいました。

 

ちなみに彼の教育方針は近代教育思想の祖と言われる著書“エミール”に似ている部分が多々あります。

 

エミールは社会契約論で習うジャン・ジャック・ルソーが著した本です。

 

教育者でなくとも子に携わるならば必ず読んでおきたい、超超超絶オススメの本です。

 

自分を厳しく律し、規則正しく同じ時間に散歩をしていたいたことで有名なイマヌエル・カント

 

彼が唯一散歩に行く時間を忘れてしまったのは、このエミールを読んでいたときだけだったそうです。

 

それだけ読む者を惹きつけ、多き学びを吸収できる本です。

 

購入しないまでも書店で目にすることがあったら、是非手にとって試しに読んでみて欲しいです。

 

また、登場人物などはちょっと違いますが、内容を読みやすく要約した漫画もあります。

読みやすくとても学びになるのでこれもおすすめです。。

 

 

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