今回紹介するのはブリューゲルが描いた風景画“雪中の狩人”です。
それまでの認識では、風景画は宗教画や神話画の背景でしかありませんでした。
16世紀に入り、ようやく風景画というジャンルが確立されます。
そんな中でブリューゲルが描いたのは、自然と人間の共存でした。
ピーテル・ブリューゲル(父)
ブリューゲルについては、その生涯を記した資料がほとんど見つかっていません。
1551年、ベルギーのアントウェルペンの画家団体に登録していることが分かっています。
イタリアへ赴いた際にはローマをはじめ南イタリアへ足を延ばし、その地の絵を残しています。
晩年になっても風景画や風俗画を描き続けたブリューゲル。
当時のヨーロッパの様子を現代に伝える資料としての側面もあり、美術的で文化的な名画として今でも語られています。
また彼の息子たちのピーテル・ブリューゲル(長男)、ヤン・ブリューゲル(次男)らも画家として活躍し、その息子たちも静物画、風俗画を描く画家になるなど、100年続いた絵描きの家系でもありました。
そんなブリューゲル(父)の作品の一つが今回紹介する“雪中の狩人”です。
雪中の狩人
この作品は彼が1年の季節を描た6つの“月歴画”のうちの一つで、12月と1月の村の様子を描いています。
猟銃を持った狩人が猟犬を従えていざ狩りに行く様と、冬の中農民たちを描いています。
冬の風物詩である焚火による豚の毛焼き。
北風が火を舞い上げている様子が寒さを物語っています。
遠くに見える田園には村人たちが遊んでいる様子が描かれています。
カーリングやスケート、玉遊び(ゴルフ?)など、黒い影だけで描かれていますが、どれも生き生きとしていますね。
遠くの木の枝一本に至るまで細部の書き込みも見事な上、近景と遠景に分けられた大胆な構図の絵でもあります。
ブリューゲルはそれまで無学の象徴として描かれることの多かった農民を、そのままの姿で描くことが多かったことから“農民の画家”とも呼ばれていたそうです。
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