単純再生産と拡大再生産~資本論⑫~

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(↑前回記事)

前回の資本論では、時間給や日給などの現在に通ずる賃金形態をもとに、搾取の構造を読み解いていきました。

  

中でも出来高払いは資本家にとって最も都合の良い賃金形態であり、労働者が労働者を搾取する構造さえ生み出すとマルクスは言いました。

 

現代でも問題になっている“中抜き”も、出来高払いによって生み出されることが分かる話でしたね。

  

今回の記事では、労働者によって生み出された剰余資金がどのように資本に蓄積されていくのかについてまとめていきます。

  

まずは“単純再生産”の考え方から見ていきます。

  

  

単純再生産

  

資本主義では生産過程が一回で終わることはありません。

  

資本家が1,000万を借りて1,000個のおもちゃを生産し、1,200万円の売り上げがあったとします。

  

  

G(1,000万)

W(おもちゃ1,000個)

G+剰余価値(1,000万円+200万円)

  

という資本論④で触れた資本が増殖する過程を踏んでいますね。

  

もし彼が資本家であるならば、また新たに商品生産を行います。

  

このとき剰余価値で増えた200万円分を使い切ってしまった場合を“単純再生産”と言います。

  

次の商品生産も前回と同じ1,000万円になり、全く同じ回転が繰り返されていく……。

  

これをマルクスは単純再生産という言葉で説明しています。

  

これでは資本の増殖が起こらないことは明白ですね。

  

  

単純再生産と労働者

  

一見うま味のない単純再生産ですが、投資家目線で見ると大きなメリットがあると彼は言っています。

  

それは労働者の固定化です。

  

労働者は労働力という唯一の商品を売って生きています。

  

布が服に、木が薪に……。

 

労働力は価値を商品に転化する力がありますが、本来であればスキルを身につけ自分でいきることもできます。

  

しかし単純再生産の中に巻き込まれた労働者は、明日効率的に働いてもらうため、資本家に生かされている状態になります。

  

労働者がこれから身につけるであろうスキルを養う力や、自分で何かを生み出す能力を奪われていきます。

  

そして労働者を搾取する体制が整っていき、資本家いつでも労働力を買うことができるようになるとマルクスは指摘しています。

  

  

拡大再生産

今まで伝えてきた通り、マルクス資本論における資本とは増える貨幣であると言ってきました。

  

マルクスはその資本の増殖が本格化した理由について“拡大再生産”という言葉を使って説明しています。

  

拡大再生産とは、簡単に言えば複利で資本を増やす生産活動のことを言います。

  

先程の単純再生産の例を全く同じ仮定で話をします。

  

資本家が1,000万を借りて1,000個のおもちゃを生産し、1,200万円の売り上げがあったとします。

  

この差分の200万円が生産活動で得られた剰余価値ですね。

  

おさらいではありますが、このときの200万円を別の何かに使い、残りの1,000万円をまた再び生産活動に回すことを単純再生産と言いました。

  

これに対して、増えた200万円の一部でも次の生産活動に回すとしたら…。

  

例えば、増えた200万円の内100万円を銀行なり投資家に返し、残りの100万円を再生産に組み込むとします。

  

増加率が変わらないとすると、1,100万円の資本は1,320万円に増えます。

  

次は増えた220万円の一部を資本に入れて再生産する。

 

このように資本の回転によって得られた剰余価値を、新たな資本に組み込むことを“資本の蓄積”と言います。

  

そして資本の蓄積によって資本が拡大していくことを“拡大再生産”といいます。

  

  

拡大再生産と労働者

  

マルクスが資本論をまとめる以前の経済学者たちは、この拡大再生産によって増えた剰余価値が労働者に還元されると考えていました。

  

剰余価値が増えるたびに、それに比例して労働者の給料が上がると言っていたのです。

  

しかし、マルクスの調べによると労働者の給料が増えていくことはありませんでした。

  

古い経済学者には、追加して投入される剰余価値が不変資本に使われるという考え方がなかったからです。

  

・不変資本=設備や機械、原材料などのそれ自体の価値が変わらない資本

・可変資本=労働力など働く者の質によって、資本家が払った価格以上の価値を生み出す資本

  

剰余価値の行く先は労働者ではなく、設備や機械などに回され、追加の資本がそのまま労働者の給料になることはないとマルクス指摘しています。

  

こうして労働者は自分の生産活動の場を奪われることが当たり前になっていく原因になる……。

  

彼は、労働力という商品しか売ることができない“労働者”という存在が歴史に登場したことによって起こったとであると述べています。

 

  

まとめ

・単純再生産=1回目、2回目、3回目……、とずっと同じ額の資本で行う生産活動

・拡大再生産=1回目に増えた剰余価値を2回目の生産に組み込み、全体として資本が膨れ上がっていく生産活動

・単純再生産は資本家と労働者の立場を固定させ、拡大再生産は立場によって生まれる格差を広げていく

・これは労働者という存在が登場したことによるものでもある

  

以上、資本論における再生産についての話でした。

  

拡大再生産の話では、後にアインシュタインが人類最大の発明とまで言った“複利”の考え方が入っていますね。

  

稼いでお金を得るではなく、お金を増やす立場の人であれば、知らず知らずの内に考えていることだと思います。

  

マルクスは資本論を書くために研究している内に、複利が持つ力が社会を支配していることに気づいていたのかもしれませんね。

 

さて次回は、資本が大きくなったら労働者階級にどのような影響を及ぼすのかについての話です。

 

拡大再生産の結果、今度は資本家が資本家に対して影響を及ぼすようになっていく……。

  

一体どのような関係が見られるのでしょうか?

  

それはまた次回にて!

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