マルサス
今回紹介するのは古典派経済学者の一人、トマス・ロバート・マルサスです。
現代にも語られる“人口論”を発表した人物です。
産業革命期、非難を浴びながらも国の無秩序な繁栄に異を唱えた一人の男をフォーカスしていきます。
産業革命
時は18世紀産業革命時代。
先進国による農業による労働は時代遅れとなり、工業の生産性と賃金が上がっていく。
蒸気機関の発明と機械制御工場の発展により、工業が発展した国こそ正義という時代でした。
安定した収入が得られる世帯も増え、国力の増加に伴って人口は増加の一途をたどっていく中、ある人物がこの繁栄にもの申しました。
マルサスの罠
どれだけ工業が発展しようと、食料が無くなれば死ぬしかない。
トマス・ロバート・マルサスは、この農業から工業への異常なまでのシフトチェンジに疑問を抱いていました。
マルサスは工業生産性を高めることは悪い事ではないが、国内で必要な食料がなかったら元も子もないと主張しました。
「人口増加が進むと、近い将来食糧不足になる」
と言い、世間にこれを発表しました。
人口が増えていても、食料も増えているからOKOK!
当時の人々はこの主張に関心を持つ人はほとんどいませんでした。
それよりも人口の増加や農業生産性の向上に伴い、結果的に食料が増えてることからこれを楽観視する意見が多くありました。
人口は掛け算、食料は足し算で増えていく。
1798年、マルサスは自身の著書“人口論”において、人口の増加と食料の増加の違いを発表しました。
「人口は等比級数的に増加するが、食料は等差級数的に増加する。」
簡単に言うと、
・人口=掛け算で増える
・食料=足し算で増える
ということです。
人口の増加に食料の増加が追い付かず、いずれは食糧不足が訪れることを主張しました。
この人口過剰による貧困化は後に“マルサスの罠”と呼ばれるようになります。
マルサスの人口論
人口の抑制は必然である。
マルサスはその後、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、ロシアにて人口と食糧の相関についての研究を続け、1799年には人口論の第2版を発表します。
その中で彼はこのような観察結果を出しました。
自然界の動物の増加は、病気や早死によって抑制される。
対して人間は、
①貧困(食料不足、過密住宅、低賃金、重労働)
↓
②悪徳(戦争、犯罪、中絶、売春)
↓
③病気(ペスト、コレラなどの伝染病)
↓
④飢饉
の順で抑制されていく。
食料不足で餓死することはこれらの段階的な抑制が働かなった場合であり、それはそうなった人間の自己責任である。
と考えました。
またこれらの人々は社会的に救済できず、救済すべきではないと主張したことによって、人道的でないとして激しく非難されることもありました。
人口論のその後
まずは必要な食料を十分に確保できる状態が必要である。
マルサスは、貧者への援助はさらなる貧困を生むと、エリザベス救貧法(徴収した税金の一部を貧困で苦しんでいる人に分け与えるシステム)を批判しました。
「目先のお金を与えても食料不足になれば食べ物の価値が上がり、結局食料を買うことができなくなる。」
「まずは必要な食料を生産し、十分に確保することが最優先である。」
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これらの考えは、過剰な援助は節約と勤労の意欲を削ぎ、状況は改善されなくなることを表しています。
現代での生活保護や発展途上国への援助などに深く関連しており、近年再注目されつつある考え方になってきています。
関連、参考
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