(↑前回記事)
前回の記事では資本家による搾取について具体的にまとめていきました。
資本家が求めるのは剰余価値を生み出す剰余労働時間であり、その時間を増やすためには労働者を徹底的に働かせる……。
労働者もこれに反発し、長い闘争の末に労働法が制定されるまでになりました。
しかし労働者と資本家の対立は終わらず、長き戦いが始まるだろうと思われていました。
しかしその争いはあるきっかけによって急激に減っていきます。
大工業の発展です。
機械工業が発達したことによって、人間の労働時間が大幅に短縮されたのです。
今回はそんな技術の発展を軸に資本論をまとめていきます。
機械の進歩と労働
インドのとある紡績工場では、2人の労働者が1日28ポンドの綿を生産することができました。
しかしあるときから最先端の機械の導入によって、1日で250ポンドの綿をたったひとりで生産することができるようになります。
進歩した機械は人間の労働力をはるかに超える生産力をもっています。
便利ではありますが、それまでの道具と比べるとはるかに高額で大きな価値を持っています。
とはいえそれらの機械は短時間に大量生産ができ耐用年数も長いです。
長い目でみると、商品ひとつ当たりに移される価値はほとんどゼロに近くなります。(維持費を度外視したとすると、100万円の機械で2つの商品を生産したなら価値の転化は50万円ずつ。2万個の商品を生産したなら価値の転化は50円ずつ。)
そして生産過程全体をみると経費もほぼゼロになるため、剰余価値が増えるようになります。
労働者の労働時間が削減されたとしても、圧倒的な生産量の増加と人件費の削減によって、資本家は益々利益を得られるようになっていったのです。
機械の進歩は労働者を楽にはさせない
では機械の進歩によって剰余価値を増やすことができるようになった分、労働者への負担は減ったのでしょうか?
マルクスの答えはNoです。
機械が進歩したことで力も技術も必要がなくなりました。
その結果、女性や児童がより多く搾取されるようになります。
男性以外にも労働できる人が増えたことは資本家にとっては好都合です。
労働法によって労働時間が短縮された分は、他に増えた労働力と進歩した機械で補えば良い。
結局、機械をより長く動かすために昼夜を問わずに交代での労働がはじまることになるのです。
本来子育ての主役である女性が労働力として使われるようになったことで、乳幼児の死亡率が上がったこともマルクスは指摘しています。
労働の内容を奪う機械
マルクスは機械によって紙が封筒に変わる様子を見て大変驚いたと述べています。
スイッチひとつで人間よりも遥かに優れた働きをする機械……、彼は人間が主役であったはずの労働は終わったと考えました。
機械に従うことで、労働は楽にはなるかもしれません。
しかし、取り扱いに神経をすり減らし、体は特定の動きに限定され自由が奪われます。
機械は労働の苦労を取り去るのではなく、労働の内容を奪ってしまうのです。
これに対し労働者たちは、機械を敵として見るようになります。
イギリスでは機械の大量破壊であるラッダイト運動が15年以上も続きます。
しかし機械はあくまで搾取の手段でしかありません。
機械が消え去ったとしても、資本家による搾取は終わらないのです。
マルクスは、機械に罪があるのではなく搾取がまかり通る社会構造に問題があると言っています。
職を失うことはない
働く人口が増えたことで、失業者も増えます。
しかしマルクスは“クビになったとしても職を失うことはない”とも言っています。
機械によって生産量が増えるということは、原材料の供給元がもっと必要になるということです。
もし生産工場でクビになったなら、今度は原材料を作る場所(原材料輸出国など)に行けば良い。
内容と場所(環境)さえ選ばなければ、働く場所は尽きないとの見解を示しています。
しかし、原材料を掘ったり作ったりする場所も、機械の導入によって人がクビになっていきます。
社会構造を変えない限り、労働者は悪条件での再就職先探しを繰り返すだろうとマルクスまとめています。
まとめ
・最新の機械の導入によって作業効率が極端にUP
・作業が単純化されたことによって、子どもや女性も労働に参加するようになる
・労働できる母数が増えたことで、昼夜を問わず機械に働かされる
・しかし機械が悪いのではなく社会構造に問題がある
以上、資本論による“機械と労働者の関係”についての話でした。
資本家の搾取がリアルにイメージできるようになってきましたね。
子どもが労働に駆り出されることによって、未来の希望である“教育”すらも行き届かない世界が見て取れます。
資本家の子どもは教育よって益々富み、労働者の子どもは労働で一生を終える…。
マルクスが社会構造に対して物申したくなる気持ちになるのが分かる内容でした。
さて次回からの資本論のテーマは“剰余価値”です。
今まで何度も言葉として登場してきた剰余価値について、説明し切っていない部分について触れていこうと思います。
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