美術カテゴリーでは引き続き、フランシスコ・デ・ゴヤの黒い絵シリーズの紹介をします。
今回紹介するのは、ゴヤの屋敷二階入り口を入ってすぐ右に飾られていた絵についてです。
砂に埋もれる犬
この絵はゴヤが1819年にマドリード郊外の別荘の壁画として描かれたものです。
他の絵同様、絵にタイトルは存在しないため、“犬”や“ゴヤの犬”、“砂に溺れつつある犬”などと呼ばれています。
画面の下部にぽつんと描かれる犬の頭部…。
大半を占める空虚な空間が、沈みつつある犬を余計に意識させます。
犬の表情を見ると不安そうに虚空を見上げています。
身体の大半が埋もれていることや大袈裟に描かれた黄土色の砂地から、痛いほどの無力さを感じさせられます。
この絵を描いた彼の心境はどのようなものだったのでしょうか。
没落するスペイン内政を表したのか、老いに蝕まれる自分を重ねたのか…。
犬という野を自由に駆けまわる存在とは対極に描かれたこの絵に、真綿で首を絞められるような恐怖感を感じます。
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