クリプトンはヘリウムやアルゴン同様18族の希ガスです。
最外殻電子が8個(オクテット)であり非常に安定した状態を保つため、イオン化したり他の原子に反応したりすることがありません。
主な用途としては、白熱電球のフィラメントを長持ちさせるための不活性ガスとして封入されたり、カメラのフラッシュやストロボでも使われることが多いです。
また、ヘリウムを吸い込むと声が高くなりますが、クリプトンを吸い込むと声が低くなります。
これはクリプトンガスが密度が高く重い気体であるため、音の伝わる速度が遅くなるためです。
クリプトンの歴史
19世紀末期、レイリー卿とウィリアム・ラムゼーは空気中に存在する未知の元素アルゴンを発見しました。
(詳しくは“働かないもの”だからこその使い道~アルゴン~の記事にて…。)
これによって空気の密度や重さを測った際、僅かに計算が合わない理由が解き明かされることになります。
その後ラムゼーは、彼と同じイギリスの科学者トラバースと共に未発見の希ガスを発見すべく研究を進めます。
研究にとりかかってからしばらく経った1893年5月30日。
液化した空気から窒素と酸素を取り除き、アルゴンガスを抽出した二人。
しかし何度やっても抽出したアルゴンガスの重さと、理論上の重さが微妙に合いません。
その中に未知の元素が含まれていると睨んだ二人は、アルゴンガスをさらに分析することで、大気中に0.000114%しか存在しない新元素を発見したのです。
彼らはこの新元素をギリシャ語のkryptos(目に見えない、隠された)にちなんでクリプトンと名付けました。
また同年の7月12日にはクリプトンをさらに精製し、キセノンも発見することになります。
長さの単位になったクリプトン
実はクリプトンは長さの単位になったこともあります。
メートルは過去に4回の定義変更がありました。
一番最初の定義は“赤道から北極までの子午線の1000万分の1”でした。
しかし各国の測定計量数値に差が出てしまったため廃止に。
二番目の定義は、“国際メートル原器の2表線問の長さ”というものでした。
しかし金属製のメートル原器は気温による膨張やメモリの微妙なズレから正確性に欠けるとして廃止に。
三番目の定義は、“クリプトン86原子が真空中で放つ橙色の波長の長さ”を基準にしました。
これはある程度信頼性がおけるものとして、1960年から20年以上採用され続けました。
しかしレーザー技術の進歩に伴い“光”が採用されることになり、長さの基準から外れることになります。
そして1988年に4回目の定義変更が行われます。
その定義は“1メートルは、光が真空中を1秒の2億9979万2458分の1の時間に進む距離”と決められました。
これはクリプトンの波長の誤差である100万分の1よりも少ない誤差として、現在でも使われています。
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