5年前にCOVID-19の最初の報道があったことを考えると、中国で新たに報告されている未知の呼吸器ウイルスは懸念を引き起こすかもしれません。
中国当局は2023年にヒトメタニューモウイルス(hMPV)について警告を発しましたが、報道によると今年の冬に再び感染例が増加している可能性があります。
hMPVはほとんどの場合、風邪やインフルエンザに似た症状を引き起こしますが、稀に重篤な感染症につながることがあります。
次のパンデミックを引き起こす可能性は低いと考えられていますが、その症状や背景について知ることは、今後の国際的な疫学ニュースに素早く対応できるという利点があるため、今回のテーマとしてまとめます。。
hMPVとは
hMPVは、2001年にオランダの科学者Bernadette G. van den Hoogen氏によって発見されたウィルスの一種です。
既知の呼吸器ウイルスが検出されなかった子どもたちを対象とした検査で特定されましたが、このウイルスはそれ以前から存在していたと考えられています。
1950年代のサンプルを検査したところ、このウイルスに対する抗体が見つかり、少なくとも数十年にわたり感染が一般的であったことを示しています。
以後の研究で、hMPVは世界中のほとんどの地域で確認されています。
オーストラリアのCOVID-19パンデミック以前のデータでは、hMPVは成人と子どもの呼吸器感染症で検出される3番目に一般的なウイルスでした。
hMPVはインフルエンザと同様に、若年層と高齢者にとってより深刻な病気となります。
研究によれば、ほとんどの子どもは幼少期に感染を経験し、5歳までに抗体を持つことが多いです。これにより、年齢が上がるにつれて感染時の重症度が軽減されます。
症状とリスク
幼少期におけるhMPV感染の主な症状は、次の通りです。
• 鼻水
• 喉の痛み
• 発熱
• 中耳炎
これらの症状は通常、子どもでは数日から1週間で、成人では1〜2週間で回復します。
しかし、慢性的な病気や症状など基礎疾患を持つ人にとってはより重篤な病気を引き起こすことがあります。
主に以下の症状が併発することが報告されています。
• 肺炎(息切れ、発熱、喘鳴を伴う)
• 喘息や肺気腫などの持病の悪化
• 骨髄移植や肺移植を受けた免疫力が低下した人々への深刻な影響
それでも、病気が比較的軽症であること、過去の感染による免疫の広がり、そしてhMPVによる大規模なパンデミックが過去になかったことから、現在のところ大きな警戒は不要とされています。
ワクチンと治療法
hMPVは、飛沫感染や接触感染を介して広がると考えられています。
そのため、個人の衛生管理や体調不良時の接触回避など、インフルエンザと同じような感染予防に有効です。
現在、hMPVに特化したワクチンや明確な治療法はありませんが、最近ではmRNA技術を用いたワクチン開発が進行中です。
Moderna社がhMPVワクチンの試験を開始しており、RSウイルス向けの新たな免疫製品が参考になる可能性があります。
重篤な患者には特定の抗ウイルス薬が一部効果を示す場合がありますが、明確な治療効果が確認されているわけではありません。
なぜ現在呼吸器ウイルスの報告が多いのか?
COVID-19パンデミック以降、多くの呼吸器感染症の流行パターンが変化しました。
例えば、オーストラリアではインフルエンザの流行が通常より早く始まり、中国では次のような感染例が増加しています。
• マイコプラズマ(肺炎の原因となる細菌)
• インフルエンザ
• hMPV
これらの変化には、パンデミック中の公衆衛生措置によるウイルス伝播の変化や気候変動、ワクチン接種率などいくつかの要因が関与している可能性があります。
一部の病気では通常の周期的な変動も関係しているかもしれません。
例えば、百日咳の流行は3~4年ごとに起こることが知られています。
特にオーストラリアでは、hMPVに関する安定した監視体制が確立されていないため、通常の流行時期を正確に把握するのは難しい状況です。
しかし、世界的な感染報告に基づき、地域の公衆衛生政策を策定するためのデータ監視が重要としています。
まとめ
・hMPVは軽症から重症までの呼吸器症状を引き起こしますが、パンデミックの原因となる可能性は低い
・ワクチン開発が進行中であり、適切な衛生管理で感染リスクを減らせる
・COVID-19パンデミック以降、多くの呼吸器ウイルスの流行パターンが変化しており、継続的な監視が重要
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